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徐々に巨大化していくロアン。 その姿はデルフィニアを越え、見上げるほど巨大なものとなっている。 「レイク、どういうことなの!? なんでシジョーさんがあんなことを……」 「彼女の家系は魔術研究者だったと聞いています。最初に異世界を発見したのも彼女の家です。代々、歴史に名を残している名門中の名門……。ゆえにプレッシャーもあったようです」 「だからってこんな!」 「理由なんて考えても意味がありません。彼女はすでに狂っている。そして、六車君を止められない限り、双方の世界が終わることも事実なのです。二人でなんとかできるといいのですが……」 「まあ、そんな無茶を言わないでさ」 ふらり、と二人の横に立ったのはーーテーラだった。 無事とは言いがたい。箒を杖に立っているだけで、それだけですらかなり辛そうだ。 反対側にはヴェチルも立っていた。とはいえ、膝に手をついた姿はすでにグロッキーだ。 「四人でやる。それっきゃないでしょ」 「テロリストね。なるほど、しっくり来たわ。ああいう連中ってのは全部が嘘だから、逆につかみにくいのよね」 「でも、それが理解できたところで対抗策があるわけじゃないでしょ? 現状は最悪なところまで持ってかれてるんだから」 「……方法か」 ヴェチルはテーラを横目に、 「魔女。あいつの魔力外装、剥ぎ取る方法はない?」 「……難しいと思う。内側からにじみ出る魔力で外装を作り、維持しているんだもの」 「外装と体内の接点は? いくつもある?」 「ああ、それなら……。ひとつ、かな。心臓あたりから魔力が伸びている」 「じゃあ、そこをピンポイントで切断できれば、溢れた魔力とロアンを切り離せる。そうすれば、レイク、あんたは魔力供給の源を外せるのよね?」 「まあ、可能ですけど。なんでそう思うのですか?」 「それが不可能なら、そもそもあんたは戦わずに逃げるでしょ。何の対抗手段もないなら、本国に帰って対抗策を練るべきだし」 「勘違いしてもらっては困りますが、本国に戻ったところで対抗策はありません。国家戦力を用いたところでこちらの世界にまとめて転送することが物理的にできない以上、国家としての戦力は意味がないに等しいですから」 「ま、手段があるならいいわ。どうするの?」 「私が彼に密着する必要があります。あなたがた三人で、そこまで持っていけますか?」 「やるしかない、かな。蛍石、頼むわよ」 「……えっ!?」 目を丸くした蛍石の肩に、ヴェチルは手を乗せる。 「魔力外装をひっぺがすためには、基点となっているラインを切り離す必要がある。そこまでの攻撃力があるのはあんただけよ、蛍石」 「でも、あんなところまでたどり着くなんて……」 「持っていくのはこっちでやる。テーラ、いいわね?」 「ええ。ただしワンチャンスと思って。反撃されたら全員即死よ」 「一か八か。賭けとしても分が悪いけど、やるしかないでしょ」 「ま、危ないのは近接するそっちだしねぇ。」 テーラは箒にまたがり、後ろにレイクを乗せる。 ヴェチルは蛍石をお姫様だっこ。 「ほ、本当にやるの?」 「それしかロアンを救う方法はないって言ったら?」 「ずるいでしょ、そんなの……!」 「行くよ!! せーのっ!!」 テーラは上空に、ヴェチルは地上から。 ロアンの姿は大きく膨れ上がり、すでに元の人物像はわからなくなっていた。さながら巨大な人狼だ。 テーラはポケットからナイフを取り出すと、それを上空から打ち出す。重力操作によって飛び出したナイフは弾丸以上の速度で人狼に向かうが、人狼は当然、その程度の攻撃をものともしない。 そう、それは攻撃ではない。攻撃すべきポイントをヴェチルに伝える、ただの曳光弾! 「そこか!!」 ヴェチルの全力加速。攻撃をするためではない、ただ蛍石を届けるために。 それには人狼も反応する。飛び出してきた二人の少女を迎撃せんと腕を振り上げ、 「さっせるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 テーラ渾身の重力網。もちろんその程度で攻撃を止めることなどできないが、コンマ数秒、動きを阻害する程度はできる。 「ナイスっ!!!」 タイミングがずれることで、ヴェチルは人狼の腕をすり抜ける。胸まで近づいたところで抱えていた蛍石をぶん投げた。 その直後、ヴェチルは腕に弾かれ叩き落とされる。 今しかない。その瞬間、蛍石は全ての魔力を腕にかき集めた。 「やって、やろうじゃないのさぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 全力全開の炎斧。それは船艦さえまっぷたつにしかねない勢いで、人狼の胸に叩きつけられる。 強引な攻撃で、魔力外装にかすかな隙間ができる。その刹那にレイクが飛び込む。 「ごめんなさいね」 外装の中央、さながら張りつけとなっているロアン。その胸に飛び込む形で抱き止めたレイクは、強引にキスをした。 「!?」 「!!」 「あっ」 三人の魔法少女が見ている中、ロアンから魔力が弾かれる。レイクがキスを通して力を奪ったのだ。 同時、レイクの前にも青いリボンが浮いていた。それはレイクにまとわりつき、新たな魔法少女を生み出す。 「今です!!」 レイクはロアンの胸に手を当てた。水が渦巻き、胸から小さな赤い宝石が取り出される。 それで全力を使いきったのだろう、意識を失ったロアンと共にレイクは落下していく。テーラがギリギリのところで拾わなければ、二人とも地面に激突してミンチになっていたことだろう。 こうして、六車ロアンという最も厄介な獣は退治されるに至った。 目を覚ますと、四人の女の子が僕を見ていた。 「気がつきましたか」 「……レイク、さん?」 「はい、そうです」 レイクさんは、なんだか見覚えのない格好をしていた。青いフリフリのドレスに、白い手袋とロングブーツ。なんだか魔法少女のようだ。 「まったく。自分ひとりだけ平和そうに寝ちゃって」 そう悪態をつくヴェチルは、すでに変身が解けていた。座っているものの、体を起こす力もないようだ。 「ま、よくやったでしょ」 箒を抱えたテーラもまた、木に体を預けている。その姿に元気がない。 と、誰かが抱きついてきた。よくよく見れば、蛍石の頭だった。 「蛍石? 苦しいんだけど」 「……ばか」 蛍石はそれ以上の言葉を発さず、ただ泣いていた。 僕は彼女の頭をなでながら、レイクを見やる。 「どうなったんだ? というか、僕はこれからどうなるの?」 「そうですね。そのことについてはもう少し希望のある話が出たものの、とりあえずここでする話でもないでしょう。何より全員、とりあえず入院です」 そう言うレイクは、疲れた笑顔を見せていた。 |