暖かい日差しが降り注ぐ午後。
 寒さが消え、花粉が飛び始め。春休みという中途半端な時期も手伝って、どこか気持ちの抜けた空気が漂う中。僕は犬と一緒に歩いていた。
 と、後方から誰かが走ってくる。知人の足音だからか、犬も足を止め、振り返った。
「蛍石」
「ロアン。どこ行くの」
「犬とデートだけど」
「散歩をデートって言うのやめなさい」
「いいじゃんか、僕の勝手だろ」
「……ケモナーも大概にしなさいよ」
 好きなんだからいいだろ。
 僕と蛍石は日常に戻ってしまった。もうすぐ三年生に進級する。来年には受験も控えているから、今年は忙しいかもしれない。
「それより、ごはん行きましょうよ」
「デート中なんだけど」
「人間とデートしなさいよ」
「蛍石が相手じゃな……」
「どういう意味よ!」
「子供じゃ満足できないってことなんじゃない?」
 いつの間にか、テーラが僕の隣をふわりと飛んでいた。テーラは宝石だけ本国に返還し、自分は日本に残っている。いわく、魔法の影響について調査と対処が必要なのだと。
「やっぱりお姉さんの魅力がないと」
「早く帰ったら?」
「容赦ないわね!?」
「お前には最初からそうだよ……。ってことはそのへんにヴェチルもいるんでしょ?」
「あら、よくわかったわね」
 すっ、と物陰から出てくるヴェチル。彼女はあの事件からすぐに学校をやめ、今は組織に戻っているはずなんだが……。なぜかこの町には残っている。どういう手管を使ったのかは、僕にも教えてくれない。
「レイクは?」
「例のシステムについて調整中ですって」
「ふうん。じゃあレイクの様子でも見に行くかな」
「えー! なんでレイクにだけ甘いの!?」
「そうよ、不公平だわ」
「やっぱりロアン、異世界人の方が……」
「んなわけないでしょ。人類は恋愛対象外」
 レイクは、彼女の持つ召喚の技術を応用し、双方の世界でバランスを保つ手段を作れないか研究を開始した。
 普通に考えれば不可能らしいけど、こちらの世界にしかない知識ーーテーラの知識やヴェチルの組織なども手伝って、なんとなく方向性は見えてきているのだとか。
 僕がこちらの世界にいられるのも、そういう理由だ。彼女の努力があってこそなんだから、お礼くらいはすべきだろう。
「もしお礼に体とか要求されたらどうするのよ」
「僕らは中学生だよ……」
「あら、レイクの実年齢はたぶんもっと上よ? 鯖読んでるのよね」
「なんでそんなのわかるんだよ……」
「女の勘」
 勘違いって言葉もあるんだぞ。いやまあ、彼女が実際に中学生とは思わないけど……。
「とにかく、魔法少女はもうおしまいなんだからさ、僕に構うのやめてくれない?」
 すると三人は顔を見合わせ、声を揃えて答えた。

「ぜーったいやだ!!」