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騙される方が悪い。 命を削って得たものを軽々しく他人に渡すのが悪い。 あなたの命はその程度の価値なの? 「三百万、か……」 契約書を前に、男はうなった。そして、こずるそうな小さな目で私を見上げ、 「本当に儲かるのかね?」 「もちろんでございます。当社専属のトレーダーがお客様からお預かりした資金を元に確実に増える株を購入し、転売します。元金は保証いたしますし、お客様に損益は一切ありません」 「その代わり、儲かったらその半分を報酬として受け取る、と」 「はい。残念ながら我が社は設立して間もなく、決して資金は潤沢とは言えない状況でございます。ですが人材は揃っているのです。問題は資金のみ。 ですので、我が社を信頼していただけるのならば! お客様には一切の責任を負わせる事なく、ただ利益だけをお約束する、というシステムでございます」 ふーむ、と男はしばし考えていたが、やがて小さく頷いた。 「なら、君を信用して預けよう」 「あ、ありがとうございます!」 叫ぶように言い、立ち上がって深々と頭を下げる。そして頭をあげると、次は契約書だ。 「では、こちらにサインをお願いします」 「ああ」 書類にペンを走らせる男を見ながら、思う。 こいつも馬鹿だな、と。世の中、そうそうそこらへんにうまい話が転がっているわけがない。お金はそう簡単に手に入らないし、まして空から降ってくるわけもない。 働いてお金を得られるのは、そのぶんだけ命を消費したからに他ならない。命の対価と考えれば、それが安くないのは当然の事だろうと思う。 なのに、そんな簡単な事を理解していない人は山のようにいる。儲け話と聞いてふらふら金を渡し、価値のあるものと信じて偽物をつかまされ、存在さえしない会社に投資する。そんなもの、現実にあるはずもない。 この男も、そのひとり。自分が騙されている事にさえ気づいていない。そして、気がついた時にはもう手遅れ。 「これでいいかね」 数箇所にサインを走らせた男は、書類を突き返してきた。それをざっと見渡し、 「はい、結構です。では後日、振込みをお願いします」 「ああ、頼むよ」 立ち上がり、背中を向けた男を見た時には、もう名前も思い出せないでいた。 家に帰ってテレビを点けるとニュースをやっていた。誰かが電車に飛び込んだせいで遅れが出たらしい。 「……へえ」 自殺者の名前は出ない。顔も出ないし、たぶん知らない人だろうと思う。 私が興味を惹かれたのは、飛び込んだ誰かが持っていた遺書。その内容は、詐欺に引っかかって生きる希望を失ったという話が書いてあったという。 「詐欺で自殺ね」 頭の悪いヤツだと思う。だからこそ詐欺に引っかかるのかもしれないけど。 騙されたなら、騙し返してやればいいんだ。 私はそうやって生きてきた。騙された倍は騙して。騙したヤツを騙し返して。 結果として自殺をした人も何人かいたと思う。正確には覚えていない。何度も騙して、また騙そうと思ったら死んでいた、なんて事もあった。 起こした詐欺事件は、もう数なんて数えられない。けど、私は一度だって逮捕された事はない。そんなヘマはしない。 代わりに、騙す相手は慎重に選ぶ。確実に安全に、それでいてきちんと利益を得られる顧客。その選択が大事だ。 「ま、バカがいてくれなきゃ困るんだけど」 でないと私の商売はあがったりだ。 チリン―― チャンネルを変えると、今度はドキュメンタリーをやっていた。昨今の不況であえぐ工場の話だ。 工場を見ると、実家を思い出す。今はもう手放してしまったけど、うちも小さな町工場をやっていた。両親が死ぬまでの、遠い昔の話だ。 「――面白くない」 テレビを消し、思いなおしてシャワーを浴びる事にした。今日も仕事をしたし、少し疲れているのかもしれない。不必要に苛立っている気がする。 そうしてテレビ画面を見つめて、ふと気がつく。 画面の端。黒くなった画面に、白い顔が浮かんでいた。 「ひっ……!?」 振り返る。そこには、いつのまにか女の子が立っていた。 「だ、誰!?」 女の子はどこか安心させるような笑みを浮かべ、 「こんばんは」 「こ、こんばんは?」 思わず営業スマイルを浮かべながらも、心の中は警戒心で溢れかえる。 どこから現われた? この子は何? どうして私の前にいる? 何一つ理解できない、普通の人間とさえ思えないほどの――異常。 「戸惑い、不安、疑念。騙し騙されの世界で生きている割にはごく普通の反応ね。いえ、だからこそ、なのかしら?」 「……何なの、あなた」 ここに来て、私の表情からは笑みというものが完全に消え去っていた。 この子は普通じゃない。普通の子供はこんな風に笑わない。普通の子供はどこからともなく現われない。普通の子供はこんな話し方をしない。 これは、老練した人間の口調。雰囲気。この子は、騙せない。 「見る目はあるわね。話もしやすそう」 くすくす、と笑い、女の子は私を見上げた。深紅の瞳は、まるで私の嘘を見抜こうとしているかのようで。 「私は死導者。死を導く者。貴女の考え通り、普通の人間ではないわ」 死導者? それは、何? いや、前に、どこかで聞いた事があるような気がする。あれはどこだったか。 そう、一度きりの詐欺仲間だ。あいつが言っていた。因果な商売をしていると死を導いて貰えないかもな、なんて。 じゃあ、まさか、本当にそんな存在がいたって言うの? 「あら。私の存在を知っている人はそれほど多くはないと思っていたけれど、珍しいわね。貴女」 「――!?」 この子、心の声を、聞いている!? そうとしか思えない。そうでなければ、私の考えている事を理解できるなんて、そんなのありえない! 「では、私が超常の存在と理解した上で話を聞いてもらえるかしら」 「何の、用よ」 「ふふ、そんなに警戒しないで。ただの取引よ。貴女の大好きな」 女の子は指を立て、 「貴女に私たちを見る力をあげるわ。これがあれば、貴女が失った者とも言葉を交わせるかもしれない」 「……!」 どこまで、知っているんだろう。 脳裏に思い起こされるのは父の姿。そして、母の姿。 工場で首を吊った、その力ない姿。そして、娘を置いてその後を追った、ふざけた母親。 私は、たったひとりで生きていくしかなかった。 「憎いのでしょう? 貴女の父を死に追いやり、家族を破壊した詐欺師が」 「だから、なんだって?」 「貴女の両親に聞けば情報が得られるわ。それに、死者と通じる能力は貴女の人心掌握術と組み合わせればかなりの武器になる。そんな力が欲しくはないかしら?」 正直に言えば、欲しい。 それだけの力があれば、応用の幅は限りないだろうとも思う。 普通の人には見えないものを見る力。それは詐欺において何よりの武器になる。 けど。 「うまい話にはリスクを伴う。私たちの共通言語みたいなものでね」 「素直に受け取るなんて思っていなかったわよ。それにもちろん、ただであげるわけでもない」 「じゃあ、何。死導者って何が欲しいわけ。私の魂でもよこせって言うの?」 「まさか。貴女が死んでしまったら、せっかく得られるものが得られなくなってしまうでしょう」 「……?」 「これは悪魔の契約よ」 にやりと笑う少女。その姿は、本物の悪魔のように見えた。 「貴女が力を得る代わりに、私は貴女が見聞きするその全てを知る事ができるようになる。言うなれば、貴女の中に私を飼うという事よ」 「それが、あなたの利益なわけ?」 「ええ。こんな楽しい事は他にそうそうないもの」 妖艶な笑み。底が知れない、そう思った。 「他人の人生を送ってみたいと思った事はないかしら? 一度きりの人生では足りないと思った事は? 同じよ、それと。私たちは肉体を持たない。だから、人間のように生活を送る事もできない。それではいかにも面白くない。 どうせなら、私も人の生を見てみたいわ。けれど、肉体はそう簡単に得られない。となれば、誰かの体を借りる他にないでしょう?」 筋は、通っている気がする。 おばけは器を求めるって話もあるけど、でも、何かおかしい気もする。 「貴女が拒絶するなら他の人間を探すけれど?」 そう。体の一部を共有して、それで――。 「体を貸してあなたに乗っ取られるなんて事はないでしょうね」 「まさか。そんな事はしないわ」 「証拠」 「私を信じる以外に方法はないわね。 大丈夫よ。貴女がそうと望めば、契約はいつでも切ってあげる」 あっさりと、堂々と言い放つ。嘘は言っていない。そんな気がした。 私は少し考え、 「いいわ。乗ってあげる」 この死導者の目的は知れない。この業界、危ない橋はできる限り渡らないのが鉄則でもある。 けど、リスクを負ってこその利益。そうでなければ、面白くない! 「ふふふ……、では、貴女に死を見つめる眼差しを」 チリン―― 女の子がくるりとまわると、その姿はかすみのように消え去った。 代わりに、 「……え?」 私を取り囲む、半透明の姿が見えた。 「な、に?」 男、女、年齢もバラバラ。若い人から老人まで。ざっと十人以上はいる。共通する事は、その眼。 世界そのものを憎んでいるような、深い深い憎悪の眼差し。 「許さない」 ひとりが口を開くと、次々と口を開いていく。 「許さない」 「許さない」 「許さない」 いくつもの口が同じ言葉を吐き続ける。 「許さない」 「な、何なのよあんたら!?」 語気も強く言い返すと、全員が口を閉じた。そして、代表するようにひとつの影が前に出る。 「覚えていないのか」 「な、何を?」 「僕らの事」 言って、男は自分を指す。 「僕は君に五百万を騙し取られた。全財産だった」 そして、男は自分の隣に立つ女性を指す。 「彼女は君に三百万を騙し取られた。結婚資金だった」 男はさらに奥の壮年の男性を指す。 「あの人は君に六百万を騙し取られた。家を購入する頭金だった」 「ま、さか……」 「そう。僕らは皆、君の起こした詐欺事件の被害者だ。そして、それが原因で人生に絶望し、自ら命を絶った」 「こん、なに?」 こんなに、死んでいたの? 「君は知らないだろう。騙した相手の顔をすぐ後に忘れるような君は。 僕らはずっと君を見ていた。君に殺された後、なんとか君を呪い殺したいとも思った。けれど、僕らにはその力がない」 すっと男は私の首に手をかける。わずかにひんやりとしたような気がしたけど、圧迫感は何もなかった。 「僕らは君に触れる事ができない。それでも君を殺したいほど憎んでいる。だから、こうして君と会話できるのは非常に嬉しい。アンジェラに感謝だ」 ――やられた! うまい話には裏がある。この話の裏は、私とこいつらを話させるためのもの! 「もう、逃がさないよ」 くっ……。 いや、物は考えようだ。こんな連中、気にしなければいい。 それに、まだ力は得たばかり。いつでも捨てられるのだから、今すぐに捨てなければいけないわけでもない。こんなチャンスはそうそうないのだから。 すっと息を吸い、吐き出す。落ち着いたところで、連中を見返した。 「あのね。あんたらが自殺したのはあんたらの勝手。騙されたのはあんたらがバカだったからよ。騙されたなら、騙し返せばよかったのよ!」 何も言い返してはこない。ただ、私を不満と恨みの眼差しで見つめるのに。 ふん。そんな調子だから死ぬ事になるのよ。 「わかったら、さっさと成仏しなさい。どうせ死んでんだから」 そう。死んでしまったのだから。 結局、誰も言葉を発する事はなかった。 朝、目が覚めるとおばけたちが消えていた。 代わりに現われたのは、変な格好をした女の子。 「……誰、あなた」 声をかけると、部屋の隅で壁にもたれかかっていた女の子は居ずまいを正した。 「あー、ようやく起きたの。待ちくたびれたわよ」 コキコキと首を鳴らすような動作をしながら、女の子は言う。 「あたしは志野ケイ。ま、昨日そこらにいた連中の仲間みたいなものよ。同族って言った方がいいかもね」 「そう。で、何か私に言いたいわけ」 「あんた、本当にたいした人間だわね」 呆れたように言い、志野は私を見つめた。 「あれだけの霊に囲まれても平然と寝たり、まともな神経じゃないわよ。よっぽど意志が強いのね」 「当たり前でしょ。あんな人生に負けた連中、何人いようが同じよ」 どうせ触れる事はできないんだし。 「人生に負けたねぇ。ま、あんたからすればそうかもしれないわね」 「誰から見ても、よ。騙されたあげく自殺なんて最低最悪の手段よ。私が言うのもあれだけど」 「へえ? じゃあ、どうすればよかったって言うのよ」 「だから、騙し返せばいいのよ。私を」 私はそうした。父を追い詰めた社会に反抗し、詐欺師になった。 「難しい事じゃない。他人を喰わなきゃ生きられないなら喰えばよかったの。死ぬなんて最低よ。自分で終わらせといて、それで他人に文句? 冗談じゃないわ」 「そんでもって、あんたみたいのを量産するわけ」 「強く生きればいいでしょ。別に私は自分の存在を悪いと思った事はないわよ。どんどんできたっていいじゃない。それで強く生きられるならそこらの何も考えていない連中よりよほどマシじゃないの」 ベッドから降り、並ぶと、志野と視線が重なった。 「じゃあ、全く後悔していないんだ。あれだけの人が死んだ現状でも」 「もちろんよ。私は自分の行いには後悔しない。そんなものは十年以上も前に置き去りにしてきたの」 こうやって生きると決めた時に。 後悔とか悔恨とか、そんなものは捨ててきた。これは私の決めた生き様。だから、後悔する方がおかしい。 「ふうん。あんたにゃ、無理だわ」 「何が」 志野は肩をすくめ、 「本当はね。あんたに知って欲しかったのよ。これだけの人があんたのせいで死んでいる、あんたはそれだけ多くの命をないがしろにしてるって事を。でも、あんたは違うわ。格が違う」 志野は足先を部屋の外に向けながら、 「あんたは、それだけ多くの人が死んでいる事も苦しんでいる事もきっちり理解してる。理解して、その上で騙して生きている。それならそれがあんたの生って事よ。あたしたちには何も言えない。理解さえしてもらえない」 「もしかして、他人の命は大切なんだから自殺になんか追い込むなって言いたかったわけ?」 「ま、その通りよ。でもあんた、絶対にやめないでしょ」 「当然」 決めた事は絶対に貫き通す。 それくらいの強い意志がなければ、犯罪を犯し続けて生きるなんていう事はできないと思う。 部屋を出て行こうというところで、ぴたりと志野は足を止め、首だけ後ろを向いた。 「今夜、アンジェラがその眼を消しに来るわ。やりたい事があるならそれまでにやっときなさい」 言うだけ言って、志野は出て行ってしまった。 「やりたい事、ね」 ぽつりと、呟く。 チリン―― 夜になると、あの鈴の音がした。今から思えば、これがあの女の子の到来を知らせるきっかけなんだと感じる。 「こんばんは」 昨日と同じように女の子は私の前に立ち、同じように艶然と微笑んだ。 私はソファに座ったままで女の子を見上げる。 「あなたも随分と騙してくれたじゃない」 「どういう事かしら?」 「だってあなた、私の視線なんかまったく見てもいないでしょ。単に私とあのおばけ連中を会わせたかっただけで。もしかして、両親の話まで嘘?」 「可能性論を言っただけよ。十年も前に死んでいれば普通は成仏しているものだけれど、貴女の両親は苦痛の後に生を断念した。執着していれば、悪霊と化して生きていた可能性もあったもの」 「で、見つけられたの」 「ええ、もちろん」 変なところで律儀な子だ。 「会いたい?」 「ううん。別に。さっさと成仏しろって伝えといて」 テレビではまた不況のニュースを伝えていた。この裏で、笑みを零している連中も、今まさに死のうとしている連中もいる。 「ねえ、死導者」 「アンジェラよ」 「じゃアンジェラ。あなたは自殺した連中もたくさん見てきたんでしょ?」 「……ええ」 「なら、そいつらは後悔していた?」 返事はすぐに来なかった。長い沈黙、その後、ためらいがちに口を開く。 「そういう人も、いたわね」 「ふうん」 私はテーブルの上のコップを手に取った。黄金色の液体が揺れる様を眺めながら、 「私ね。あれほど死んでるとは思わなかった。みんな、脆いのね」 「貴女が強いのよ」 「そうかもしれないわね」 コップを傾ける。ビールは苦いだけだった。 「貴女は私たちと出会って、何かが変わった?」 「さあ」 けど、今日一日、町を出歩いて。 あちこちで死人を見て。 それで、気づいた事はある。 「私は生き方を変えるつもりはないわ。けど、そうね、勉強はさせてもらった」 人は弱い。だから私たちのような人間が生きられる。 私たちは生きていなかった。生かされていた。 「――出会わない方が、よかったかも知れないわね」 「そうね。それなら私は死なずに済んだもの」 もう遅い。 知ってしまったから。必死で生きていたつもりで、結局はそれさえできてなかったという事。 だから、もう、生きられない。かといって死ぬ事も許されない。 ただ、殺される時を待たなければいけない。 「用は済んだ?」 「どうあっても変えないのね?」 「当然でしょ。私の強さは他人にどう言われても変えない事だもの」 「そう」 チリン―― 少しだけ頭が揺れた。それが酔いのせいではない事くらい、わかる。 「さようなら。欺かれた詐欺師」 「さよなら、バカな死導者」 チリン―― 視界からアンジェラの姿が消える。 私はまたコップを傾けた。苦さが増している気がした。 「いつに、なるかしらね」 いつか、私は背中を刺されるだろう。 多くの人間を殺し続けた結果として。 願わくば――それが、遠い未来でありますように。 チリン―― 「あれが稀代の悪女ってもんなのかしらね」 ゆらゆらと歩む足取りはどこか疲れているようで。 それは彼女たちの心を表しているのやもしれない。 「どう生きるのかは、人間が選ぶ事。騙し騙されは推奨しないけれど、大なり小なり人間はそうやって生きているわ」 「けど、あの人はそのせいで人を死なせすぎる」 「……ええ」 彼女は生きようとする者の味方で。 人から生きる希望を奪う彼女を、見過ごす事もできなかった。 「けれど、彼女自身が持つ生きる事に対する熱は素晴らしいものだとも思うわ。あれほど強く強く生きようと考える人はそういない。生への強い執着。彼女はこのまま死んでしまえば変魂になるかもしれないわね」 「自殺した連中もそのくらい強ければ死ななかったでしょうにねー……」 チリン―― すっと、少女は空を見上げた。半月より満ちた月は、青白く輝いている。 「よほどでない限り、生きようとする者は生きられるわ。この国はそういう国。だから、私も好きよ。この国は。殺さず、傷つけず、生きる事を許されるこの国は」 「それでもああいう連中もいるけど?」 「その穴を埋めるために私たちが存在しているとしたら?」 少女の顔に、ようやく笑みが浮かぶ。 桜色の少女もようやく安堵したようにそっと一息。 目的地もないまま、ふたりの歩みは続いていく。 チリン―― |