満たされている事は必ずしも幸せじゃない。
 完全、完璧。そこに成長はなく、存在するのは絶望。
 オレたちの幸福は、不幸の上に成り立つ。


 世界で最も不幸なのは誰だ、と聞かれたら、答えは人によって違うだろう。
 食事もなく餓死する子供、小さな頃に戦争に巻き込まれて死ぬ子供。
 それらは確かに不幸だろうが、オレの答えは違う。
 オレの答えは、この扉の向こうだ。
 コンコン、と扉をノックすると、中から短い返答が聞こえた。それを確認し、オレは部屋の中に入る。
 広い部屋だ。洋風のお屋敷のごとき部屋は、同時に空虚でもある。ベッドもある。衣装ダンスも机もある。けれど、余計なものと言えるものはなく、機能性だけに溢れた寂しさがあった。
 そんな部屋の窓際に座り、外を眺めているのがここの主。
 黒い艶やかな髪。長いまつげや大きな濡れたような瞳。顔の造詣からしても部品からしても、美少女という評価を下して申し分ない容姿。この上で頭も悪くないというんだから、他人から見れば羨ましいと言われる事だろう。
 オレはそう思えんが。
「お嬢様。お茶をお持ちしました」
「ありがとう、羽田さん」
 鈴を転がすような声で答え、オレに視線を向ける『お嬢様』。
 使用人を本気で雇える家に生まれ、何一つ不自由なく生きてきた彼女。それが、彼女の現在に大きな影響を与えている。
 オレはいつも通り手早く準備し、紅茶と菓子をテーブルに並べる。お嬢様は柔らかな動きでそれを手に取る。
 す、っとカップを傾け、一口。
「今日も美味しいですね」
「いえ」
 それはそうだろう。最高級の紅茶だ。
「窓から何をご覧に?」
「特に何も。強いて言えば、空を」
 空を、か。学生が授業中に時間を潰す方法の定番だな。
 お嬢様は不自由がない。だからこそ、何かする事もない。
 本来なら学校にでも行けばいいんだろうが、この子のクソ親父である雇い主様は、どうにもこの子を外に出したくないらしい。
 結果。お嬢様は、部屋から外を眺めたり、お茶を飲んだり、本を読んだりといった退屈極まりない生活を送る事になる。
 ……本当は、外に出してやるべきなのだろう。父親は常に家にいないし、たまにいたとしても娘と会う事はあまりない。使用人の間で言い含めておけば、特に問題もなく外に出して帰らせるなんて事も可能に違いない。
 そうだ、ここでちょっと聞いてみればいい。実際に出てみませんか、と。それで退屈しかない生活をしているお嬢様は乗ってくる。
 こう、ぽんと肩を叩き、ほんの軽い調子で――。
「はい?」
「は、はい!」
 びくん、と手が跳ねた。心臓はもっと飛び跳ねた。
「羽田さん? どうかしましたか?」
「い、いえ。なんでもありません」
 なんでもあるだろうがバカ。
 そう、と呟き、お嬢様は窓の外に視線を戻す。
 その後頭部を眺める事しか、今のオレにはできなかった。

「あ〜、本当に駄目なヤツだよな、オレって」
 思わずため息が漏れた。
 いったい何度、お嬢様を外に連れ出そうと思った事だろう。けれど、ただの一度もそれは成功せず、要するにただ眺めているだけ。これじゃあただのロリコンの変態だ。
 これまた無駄に広い庭を掃除しながら、上を見上げる。居並ぶ窓、そのひとつには、お嬢様の姿が見えた。
「お嬢様、か」
 少し前を考えれば、オレがそんな言葉を使う事さえ信じられなかっただろう。
 高卒で東京に出たオレは、まあ最高に就職に失敗した。ノースキルの上、目つきの悪いオレは、あらゆる仕事に向いていなかった。
 フリーターで二年近くを過ごす間、オレはあまり良好な状態とは言えなかった。半ば強引に飛び出した手前、実家からの仕送りは期待できない。バイトで食いつなぐ、ギリギリの生活。
 たまに同じく東京に住んでいる祖父からの仕送りがなかったら、たぶんオレは新聞かニュースを何らかの方法で飾った事だろう。
 そんなオレを雇ったのが、お嬢様の父親。祖父の友人のそのまた知り合いくらいの遠い関係だが、何故かオレを気に入ったらしく、使用人として雇ってくれた。オレが唯一、あの人間に感謝している事だ。
 そしてオレはお嬢様と出会い、雇い主が嫌いになった。
「……ッ!」
 あの親父の顔を思い出し、つい怒りが走る。
 そんな、荒れたような感情を、小さな音が冷やす。
 チリン――
 どこか遠くで鳴っているような、それでいてはっきりとした音色。音源を求めて視線をさまよわせたオレは、ごく近くに女の子たちが立っていた事に気がついた。
 夜空色のワンピースを着た小さな女の子と、桜色の着物を着た高校生くらいの女の子。服装も組み合わせも雰囲気も、何もかもが合わない。
「お客様……、で、ございますか?」
「敬語なんて使わなくていいわ。客ではないもの」
 手で制し、ふと、小さい方が考えるように手をあごに当てる。
「そうね。あるいは、こんな言い方もできるかも。すなわち、『招かれざる客』」
「――何者だ、あんたら」
 知識でもなければ経験でもない。ただの感覚。
 この子たちは、見た目に反して、とにかく『居てはいけない』。
 理由も理屈もなく、ただそう感じる。生きている人間とは相容れない存在。生の反対側でのんびりと過ごすような存在。
 なんだ、それってつまり、死?
「正解」
 言葉だけは楽しそうに、それでいて表情はちっとも楽しくないと言わんばかりに。
「貴方は羽田良樹、ね?」
「そうだけど」
「私はアンジェラ。彼女はケイ。揃って死導者、いえ、簡潔明瞭に言うなら、死神よ」
 小さな女の子の自己紹介に、何故か隣の女の子はちょっと顔をしかめた。
「死神って?」
「言葉通りでも概念的なものでもいいのだけれど。他者に死を告げ、死者とたわむれ、生を終えた後に現われるような存在という事」
 ああ、なるほど。
 要するに、化物ね。
「……マジかよ」
 オレの生涯は決して長いわけじゃないが、短くはない。その中でリアルに化物と会ったのはこれが初めてだ。
 嘘はついていないだろう。少なくてもごく普通の小学生や高校生は何の気配もなく後ろに立たないし、こんな異様な雰囲気は持ってないし、こんなに大人びた口調で話す事もあるまい。
 それでも焦ったりする気が起きないのは、この子たちから害意を感じないせいか、はたまた展開に脳みそが置いてけぼりなだけか。たぶん後者だ。
「それで。死神様が何のご用だ」
「貴方に死を告げに。同時に、心残りを聞きに」
 死を告げに。まあ死神としちゃあ妥当な用件だ。
「貴方は遠からず、そうね、残り一ヶ月といったところかしら。その程度の月日を経過した後、死に至る。方法まではわからないけれど」
 と言って、残念そうに首を振る。
「私の見立てでは、貴方は自分の死を受け入れる覚悟をできると思った。だから告げて、同時に、何の心残りもなく逝けるような手助けをしたいと思ったの」
「見込み違いの可能性は?」
「多分に」
「結構。良い答えだよ」
 そして、その見立ては間違いじゃない。
 自分の事で真剣に悩み涙できるようなら、こんな流された生活はしちゃいない。
 まあ、そんな事は言いつつも、間際になったら小市民的に焦ったり悩んだり悔やんだり死にたくないって叫んだりするかもしれないが。それは一ヵ月後に先送り。
 今は目の前のチャンスに全力で投資しよう。就職に失敗して、学んだ事はそれくらいだ。それと東京の地理。
「それで、貴方の心残りは?」
 アンジェラは小首を傾げる。当然、あるとすれば、それは唯一だ。
「お嬢様に……、あの不幸な子に幸せを感じて欲しい」
 オレの人生の中で、あれほどまでに救われて欲しいと思った人は、他にいなかったから。
「不幸? あの子が?」
 ケイは上を見上げる。窓辺にはまだお嬢様の姿があった。
「だって、こんな豪華なお屋敷で不自由もなくて、おまけに美人なんでしょ? それで文句なんか言ったら殺されるわよ、普通」
「そうかな」
「そうに決まってるじゃない。違うの?」
 ケイの顔には疑問も迷いもない。本当に、お嬢様は幸せであると信じているのかもしれない。
 だとしたら、死神なんて仕事をしている割に、経験が足りないな。
「アンジェラはそこのところ、わかってるんじゃないのか」
「そうなの? アンジェラ」
 ケイの視線が隣の小さな女の子に向く。アンジェラは地面に落としていた視線を持ち上げ、
「そうね。彼女は不幸よ。いえ、正確に言うならば、幸せになる事ができない」
「幸せになれない? どーゆー事?」
「ねえ、ケイ。たとえば人が美味しいものを食べた時に幸せを感じるとして。それは何故?」
「は? 何故って、そりゃまずいの食べるより美味しいものを食べた方が幸せに決まってるじゃない」
 何を当たり前の事を、という風にケイは聞く。一方のアンジェラは冷静に、
「ならケイ。まずいと言われる食事を食べた事がなかったら?」
「……え?」
「そういう事だな」
 うん、とオレはひとつ頷く。
「お嬢様は生まれた時から美味しいものしか与えられず、不自由な経験をせずに生きてきた。幸せってのは相対的なものでな、不幸な経験があって初めて幸せって感じられるんだよ。お嬢様はその基礎となる不幸がない。だから、幸せを感じる事さえできない」
「何をしても幸福とは思えない。日々に満足し、不満もない。彼女の生は幸せが存在しない。故に、『不幸』なのよ」
 こんなの、世間では不幸と認められる事はないだろう。
 けれど、間近に見ていればわかる。幸も不幸もない生活というのが、どれほど味気ないものか。
 ましてお嬢様は、それにさえ気づいていない。張り合いもない日々をただなんとなく過ごす、そしてその事に疑問さえ抱かない生活。
 彼女は生きていない。死んでいないというだけで、生きるという事を知らない。
「オレも努力はしたけどね。親御さんの脳みそは本当に硬いのなんの。あの人らにとってあの子は娘じゃない、ケースの中の宝石なんだ。だから取り出す事さえしない」
 オレはあの雇い主が大嫌いだ。だが、お嬢様の事が気になって、何度も出しかけた辞表を握り潰してきた。
 本当は、オレにそんな資格なんてないのかもしれないけど。
「良樹。貴方はあの子を助けて欲しいのね」
「ああ。オレにできる事があれば言ってくれ。どうせ短い命なんだろ? ろくな人生でもないし、せめて最後にゃ派手に散らせてくれよ」
 バカ親父たちを殺せばいいってのなら、喜んで殺しに行ってやる。
 なんでもいい。あの子には不幸を知って欲しい。そして、幸せというものの味を噛み締められるようになって欲しい。
 かと言って、あの子にひどい苦労もさせたくない。ああ、だからオレはただの一度もあの子に何かをしてやる事ができなかったんだ。
 半分は、オレのせいなんだな。きっと。
「……いいわよ、良樹。貴方の願い、助けてあげる」
「ほ、本当か!?」
「勘違いしないでね。助けてあげるだけ。私たちが彼女に不幸を教えるわ。代わり、貴方はその生の全てを賭して彼女に幸せを教えてあげて。不幸から這い上がった貴方の重みは、想像するよりも大きなものよ?」
 言って、微笑みながら小首を傾げるアンジェラは、天使のような悪魔だった。

 どこへともなくアンジェラたちが消えた後、見事に何も起きなかった。
 平穏無事な夜を迎え、いつも通り何事もなく夜半となり、眠る。起きたら屋敷が消えているんじゃないかと思ったけど、そんな事もなかった。
 仕方なく起き上がり、着替えて台所に向かう。食事の準備は別の使用人の担当なので、オレがする事といえばテーブルを拭いたり簡単な手伝いをするくらいだ。
 やがて、食事の準備も整った。今朝は洋食だ。
「……遅いなぁ」
 その頃になっても、お嬢様はまだ起きてこなかった。
 あの子はやけに律儀で、特に守る必要もないのに朝食の時間には正確に起きてくる。それが、今日は何故だか朝食ができても起きてくる気配はなかった。
「羽田さん、ちょっと起こしてきてくれる?」
「はい、わかりました」
 先輩使用人に答え、オレはお嬢様の部屋に向かった。
 階段を上り、お嬢様の部屋の前で一息。そして、ノック。
 コンコン、という控えめな音。しかしお嬢様の声は聞こえてこない。
「お嬢様? 起きてらっしゃいますか?」
 コンコン、とさらにノックをするが、お嬢様が起きてくる気配はない。
 ふと思いついて、扉に耳を当ててみた。起きていれば何か聞こえるかと思ったが、聞こえてきたのはくぐもった声だけだった。
『あ……、い、いや……』
 多分におびえを含んだ声。それは間違いなくお嬢様の声だった。
『いや、怖い、来ないで!』
 必死な声。
 後先なんて、考えられない。
 体が勝手に動く。簡単な鍵さえかけていない扉はひねっただけであっさりと開いた。視線を薄暗い部屋の中に走らせ、ベッドの上にお嬢様の姿を見つける。
「お嬢様!」
 慌てて駆け寄ると、お嬢様は苦しげな表情で目をつむっていた。それを、必死に揺り動かす。
「お嬢様、お嬢様ッ!」
 ひたすらに声をかける。それでもしばしうなっていたお嬢様は、やがて、小さく目を開いた。
「お嬢様!」
「羽田、さん……」
 オレの存在を認識するやいなや、ガバッ! とお嬢様は抱きついてきた。
「お、お嬢様!?」
「ごめんなさい、羽田、さん。しばらく、こうさせて、下さい」
 荒く息を吐きながら言うお嬢様。その声は確かに震えていて、全身が恐怖を泣き叫んでいた。
 オレはすでに何かを言う気も失せて、その背中をそっと抱きとめる。
 そのまま、お嬢様が落ち着くまでは数分の時を要した。
 呼吸が整い、冷静になったお嬢様は、そっとオレから離れる。
「ありがとう、ごめんなさい――」
「いえ、構いません。それよりも、どうなさいました?」
 オレの質問に、お嬢様はわずかに言いよどみ、結局は口にする。
「あの、夢を……」
「夢?」
「はい。とても、恐ろしい夢でした。まるで現実の出来事のようで……」
 また、ぶるりと身を震わせる。顔色は青白く、とても健康とは思えない。
 ここに至って、オレはあの死神たちのやった事を理解していた。
 ――お嬢様に、悪夢を見せる事。それも、相当にリアルな。
 現実世界において、お嬢様に不幸をもたらす存在はいない。だとすれば、夢の中しか、お嬢様が幸せを感じられるほどの不幸を得られる場所はない。
 チリン――
 どこかで、あの鈴の音が聞こえた気がした。つまりは、こっからがオレの出番、ってわけね。
「お嬢様。どのような夢でしたか? 具体的にお願いします」
 本当は思い出すのも辛いだろう。が、それをしっかりと胸に刻み込んでもらわなきゃ困る。あれはただの夢、現実とは何の関係もない、なんて思われちゃ困るんだ。
 お嬢様は節目がちのまま、
「……はい。あの、まず、最初は私の部屋でした。起きたらお父様や羽田さんたちがいて、私を囲んでいるんです。けど、すぐに――」
 その光景を思い出したのか、お嬢様は首を振る。
「すぐに、殺されました。誰だかわからないけれど、私と同い年くらいの女の子に。そうしたら今度は急に空腹を覚えて、それで、私……、羽田、さんを」
 そこまで言って、お嬢様は嫌々するように首を振る。
 なんつー夢を見せてんだ。あの死神。そんなもん現実で生きていてもそう出会わない不幸というか、パーフェクトにトラウマ体験だぞ。
 オレはそっとお嬢様の肩に手を置き、
「お嬢様。とても、貴重な体験をなさいましたね」
「貴重な、体験?」
「そうです。生きている事が当たり前ではない、在り難い事であると、理解できたでしょう?」
 ありがたいとは、在り難い。現実にはなかなか起こり得ない事、という意味。
 人が生きて、美味しいものを食べて、楽しい事をして。そういう事は日本では当たり前のようにできる。そこに感謝はない。何故なら、在り難い出来事ではないから。当たり前に対して感謝という概念は生まれない。
 ただ、それらは仮初。本当は、今という現実こそが針の上でバランス取っているようなもので、とても不確かだという事。お嬢様は、あるいはオレさえ、そんな事を理解していない。
 それを、体で感じる事ができた経験というのは、貴重な体験と言うに他ない。
「さあ、お嬢様。暖かい紅茶でも飲みましょう。朝食はいかがなさいますか?」
「朝食は、ちょっと。紅茶だけ頂きます」
「では、着替えて台所に」
 ベッドの上から離れたオレを悲しげに見ていたお嬢様は、こくん、と小さく頷く。
「そう、ですね。いつまでも囚われていても仕方ありません」
 オレはお嬢様の部屋を出ながら、思う。
 人間の生活には、幸せばかりは要らないんだ、と。
 不幸と、幸福。ふたつが揃って、バランスよく成り立って、ようやく楽しい。
 どちらか一方だけの生活なんて、とてもじゃないけれど生きた心地はしない。
「ありがとな、死神」
 オレはそう長くお嬢様のそばにはいられないだろうけど。
 せめて、それまでは。
 見守りたい。


 チリン――
 廊下を歩むふたりの姿を見送りながら、桜色の少女はうーんと背伸びした。
「なるほどねぇ。確かにありゃ不幸だわ」
 ようやく実感が沸いた、と言わんばかりに、眷属は頷く。
 呼応するように、隣に立つ夜空色の少女が答える。
「不幸の上に幸福が在る。カードは表と裏がなければいけない。裏だけのカードも、表だけのカードも意味はない。それは、カードとして成立する事はない」
 言って、死導者は目を伏せた。
「彼女は極端な形だったわ。けれど、特別ではない。死の確率を下げ続けたこの国は、かえって幸福から遠ざかっているのかもしれない」
「じゃあ、死んだ方がいい?」
「そうは言わないわ。やはり私は、生きてこそだと思うもの。けれど、摂理に反した生をいくつも産み続けても、やはりそこに幸福はないと思うから」
 生か、幸福か。
 どちらかを選んでしまうと、どちらか一方はないがしろにされがちな現実。
 チリン――
 鈴音を渡らせながら、少女は音もなく廊下を歩む。
「ねえ、ケイ」
「ん?」
「私たちは、幸福かしら」
「あたしは、少なくとも」
 ニッと笑う部下に、死導者も薄く微笑んで。
「なら、私も幸せね」
「そうそう。幸せなんてねー、思い込んだ方が勝ちなのよ!」
 少女たちは気づいている。
 幸福と言える現在の裏に、不幸と言えた過去があった事を。
 それでも、未来の幸福を信じて歩み続ける彼女たちは、どこか人間に似ていた。
 当人たちは、気づかぬまま。
 チリン――



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