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理由がいるんだ。 本来なら許されざる行為をする人間は、納得できるだけの理由がいる。 見失ったままじゃ、それはできない。だから俺たちは、模索し続けるんだ。 「なあ。人間の心ってのはどこにあると思う」 「は?」 残念ながら、病院の中では喫煙ができない。俺は鈴木を誘い、屋上までタバコを吸いに来ていた。 まだ梅雨前だってのに、すでに日光はガンガンと照りつけ、夏の気配にも似たものを漂わせている。少しは休憩を取ってもバチは当たらねえだろ、と文句を言ったところで、太陽には届かないようだ。 「時々さ、思うよ。お前の思考回路は狂っているって」 「お前に言われるのもおかしい気がするけどな。ま、医者なんてやってる奴は、だいたいどっかおかしいのさ」 とんとん、と頭を叩くと、鈴木は不快そうに眉をひそめた。 「いや、それはむしろお前が狂っているだけだろ。お前だけが狂っていると断定していいか?」 「人間の体を切ったり繋げたり。わけわからん薬を飲ませ、効果があるのかわからん治療行為をする。それのどこがイカれてないってんだ?」 「残念だが、俺はレントゲン技師だ」 「あれだって、人間の体に放射線をぶつけているわけだろ。本当に安全なのかねぇ?」 「今のところ苦情は来てないな。機械が冷たいだの生暖かいだの恥ずかしいだのは聞いたが」 んで。鈴木は、じっと俺の目を見た。 「それが、さっきの話とどう繋がるんだ?」 「たとえば、だ。俺は今日、腕の切除手術をしたわけなんだが。切除した腕は、人間かね?」 「……まあ、もう人間とは呼ばないだろうな」 「そう。つまり、切除した腕はただの物。言い方は悪いが、ゴミって事だ」 「本当に悪いな」 「だから悪いって先に言っただろうが。って事はだな、体から離れた部分は人間ではなく、そこに心もないって事になる。じゃあ、どこにある? 心臓か? 脳みそか?」 「脳みそじゃないのか。心と言っても、要するに人間の思考だ。思考は脳が生み出すものだろう」 「じゃあ、切除した脳みその一部には心の欠片が入っているのかね?」 そう言うと、鈴木は黙ってしまった。 俺は空を見上げる。白い煙が、ふわふわと揺れていた。 「そういう事だよ。心臓だって脳みそだって、それだけを取り出してホルマリンに漬ける事もできる。けど、そこにゃ心はないんだ。人間の体から離れた時点で、それはただの物なんだよ」 「なんだ。結論が出ているんじゃないか」 「いーや。なら、体ってのはどこまでだ? 体を個々の部品に切り分けた時、心はどこに行く? なくなっちまうのか?」 鈴木がさらに眉をひそめるが、それは知った事ではない。 これは、単純な疑問だった。 俺は職業柄、人間の体によく刃物を突き立てる。臓器の切除や、人体の切除だって、何度も何度もやって来た。 そんな経験が重なる度、俺の中に疑問が沸いて出てきた。 ――人間は、どこまでが人間なんだ? 物のようになった人間、物そのものとなった人間。色々な人間は見てきた。死んだ人間にさえ心はあるように見えるのに、体から離れた部品には心なんて存在しないという。じゃあ、体を切り開いたら、心はどこに消えてしまう? 曖昧な、心というもの。それが、俺には見えなかった。 「レントゲンで写しても、体をメスで切り開いても、心は見えない。誰にも見えやしない。なのに、その存在を否定する奴はひとりもいない。どうしてなんだろうな?」 「疲れているのか」 「あー、夜勤明けだしなあ」 「じゃ、もう寝ろ」 見れば、真剣だった。本気で、鈴木は言っていた。 「おいおい。ガキじゃないんだ、そういうゴマカシはずるいぜ?」 「頭を冷やせって事だよ。こちとら医者だ、哲学者じゃない。人を治すのが仕事であって、心を探す事が仕事じゃないんだ」 「そうかねえ? 俺は大切な問題だと思うね。心がないなら、俺たちはなぜ治す? ちぎれた腕を後生大事に保存して、治し治し眺めるような奴はいない。俺たちは、心があるものを治すのが仕事だ。なら、心がどこにあるのか、知ってないとまずいんじゃないのか」 一理はある、けれどそれは認められない。そんな顔で、鈴木は黙り込んだ。 吐いた煙が輪を作り、空に昇って行く。 まるで、天使の輪のようだった。 数日後。俺の勤める病院に、急患がやって来た。 交通事故の被害者だとかで、両足は潰れ、内臓にも深刻なダメージが及んでいた。どう転んでも、治療には他の人からの臓器移植が必要な状況だった。 幸いと言うべきか不幸と言うべきか。一緒に、兄弟が巻き込まれていた。こちらは完全なる即死。頭部が潰れていたが、内臓の方は無事だ。すぐさま移植手術の準備が行われ、俺もその大手術に参加する事になった。 手術は長時間に渡り、患者も何度か危険域までいったが、なんとか無事に成功させる事ができた。全ては、一緒に亡くなった兄貴のおかげだろう。 術後の担当は俺に決まり、俺と患者の交流が始まった。 正直、事故患者との交流というのは苦痛だ。特に最初の方。患者自身は何があったかを理解していないし、まして今回は、兄だけが死んだような状況だ。混乱と絶望、悲哀。沸き起こる感情の渦は、しばらく収まりゃしなかった。 なんとか冷静さを取り戻し、事情をきちんと理解してもらうまでは、さらに時間を要した。 「そう、なんですか。ヒロ君が、私の中に」 患者はそっと腹に手を当てた。そこには、兄貴から移植した臓器が脈動しているはずだ。今も、生きている。 「ヒロ君、私の中で生きているんですね。今もまだ、それに、これからもずっと」 「そうなるね」 ふと、思った。 「君の中には、お兄さんの心が生きているんだね」 「……そうですね。ヒロ君、まだ、生きているんだ」 感動する患者を尻目に、俺は別の事を考えていた。 この臓器は、元の持ち主である兄貴からは離れている。なのに、これには兄の心が宿っている。 これは、どういう事なんだろう。体から離れたものに心が存在しないというのなら、どうしてこの臓器には心が感じられるんだ? 心って、何なんだ? 「――? 先生、どうしました?」 「ああ、いや、なんでもない」 答えると、患者は怪訝そうな顔をした。その視線から逃れるように、立ち上がる。 「じゃあ、今日はここまで。何かあったら、すぐに看護師か俺を呼んで」 告げて、俺はそそくさと部屋を出た。背中に刺さる視線は、少し痛い。 扉を閉めてため息をつくと、目の前に誰かが立った。 「お、鈴木か」 「よう。この間の急患の子か?」 「そう。いやあ、モテる男は困るよな」 「嘘こけ。まさか、また変な事を考えていたんじゃないだろうな」 じっと俺の目を見つめる鈴木。その目が、怪しんでいる。 「なんだ。俺はホモじゃないぞ」 「だろうな。よし、後で屋上に来い」 「別に、今でも構わないけどな?」 「そうか。なら、上でゆっくりと話してもらおうか?」 鈴木の目は、本気だった。 「臓器に心、ねえ」 話を聞き終えた鈴木は、紙コップに入ったコーヒーを揺らした。 「確かにそういう話はあるよな。臓器を移植された相手が、元の持ち主と同じ食べ物を好きになったり」 「けど、それは『元の持ち主が自分の中に入ってきている』と勝手に思い込んだ患者が、持ち主を無意識的に真似ているだけかもしれないだろ」 「お。理論的になったじゃないか」 はは、と笑い、鈴木は続けた。 「その通りだ。心がどこにあるのか、それともどこにもないのか。そんな話は結論が出せるものじゃない」 「でも、そうすっと医者ってなんのためにいるんだろうな。心も通わないものを治し守るのが医者の仕事か?」 「……お前は、さっきの患者、心がないなんて思っているのか?」 首を横に振る。そうだろう、とばかりに鈴木も頷いた。 「医者は心を助けているかもしれない。心ってのは、生きているって事なんじゃないかな。だから、人間の体から離れた、生きていない手足は物に過ぎない。一方で、他人の中でも生き続けている臓器は、心がこもっている。だから、医者ってのは生きている人間を助けようとしている」 「綺麗な答えだな」 「お前に聞かれて以来、ずっと考えていたからな」 真面目な奴だな。 このあたりが、俺と鈴木が友達でいられる理由だ。 「じゃあ、死んだものには心はないってわけか」 「そうなるな」 「なら、心はどこに行っちまったんだ?」 「――それが、死ぬって事なんだろ」 「死、か」 医者が、永遠に乗り越える事のできない壁。仮に乗り越えたなら、それはもう人間じゃないし、医者も必要ない。 だからこそ、その先を医者が理解する事はない。霊能者だの哲学者だの宗教家だの、どんな連中が死の先を理解しようとも、俺たちが理解する事はない。 俺たちにとって、向こうってのは終わりだから。力の及ばない、絶対なる壁。 「結局、全てを知るのは神様だけって事なのかねえ」 「そうだろうな」 だとしたら、俺は神様に聞いてみたいよ。 医者は、なんのために存在しているんだって。 翌日、例の患者の病室に行くと、先客がいた。 患者は他の病室との関係から、個室に入れられている。そこに、小学生と高校生のペアが訪れていた。 「おや? お友達かな」 小学生はともかく、高校生の方は年齢が近そうに見える。桜色の着物と白いミニスカなんて変わった格好をしてはいるが。 「あ、先生。うーん、お友達、ってのも少し変かな?」 「あたしに聞かれてもね。ついさっき会ったばっかでしょ?」 「うん。でも、なんだかすごく親しめるから」 「そう? そんな事を言われたの、初めてね」 さっき会ったばかり? 初対面の子がどうして見舞いに来ているんだ。 「こんにちは。職務のお邪魔かしら?」 視線を下げると、夜空色のワンピースを着た小学生が俺を見上げていた。 「ん? いくつかの問診だけだから、別にいてもいいよ」 「そう?」 訪問客はそのまま、患者に問診をする。すでに状態は安定しており、臓器も定着したと見ていい状態だった。 「はい、おしまい」 俺がそう言うと、患者は細く長い息を吐いた。やはり緊張していたのだろうか。 その時になって初めて、じっと俺を見つめる視線に気づいた。小学生の女の子だ。 「どうかした? どこか調子が悪い?」 「私は健康よ。でも、貴方は?」 「俺?」 俺は顔の前で手を振った。 「これでも健康は俺のとりえだよ。医者の不養生なんて真似はしないさ」 「体が健康でも、心はどうかしらね」 図星ではある。鈴木にも言われたばかりだ。お前は病んでいるんじゃないか、って。神経科に行く事まですすめられたが、断った。 「貴方は今、ひとつの大きな疑問に面している。その疑念は、貴方が医師として生きるのに、絶対的な障害となりかけている。しかも、そうそう簡単にぬぐえるものでもない。違うかしら」 まったくもってその通りだった。 だが、同時に、俺は不気味なものを感じていた。 どうしてこの子は、そこまで判断できる? 俺は何も言っていないし、そんな細かなところは顔にも出るものじゃない。 あるいは、屋上での会話を盗み聞いていたのだろうか。それなら辻褄は合う、な。 「なんだか、答えを知っているって口振りだね」 「存在しない回答は答えられない。だから、私も貴方に正解を教える事はできないわ」 「へえ?」 小学生は目を閉じると、くるりと回った。 チリン―― 涼しげな、それでいてどこか暖かな鈴の音色が、個室に響く。 「心。言葉で言う事は簡単だけれど、では、それは何かしら。感情を生み出すもの? 想いを紡ぐもの? 人間そのもの?」 「意志の源、とかじゃないかな」 「人が、人である根源。それは、人間が見出したように脳が作り出しているかもしれないし、あるいは、魂の事をそう呼んでいるのかもしれない。 心は、幻よ。明確な形は持たない。意味合いも時々によって異なる。正確に答えを導く事は、私にはできない」 「アンジェラに無理じゃ、あたしには無理ね」 後ろで高校生が肩をすくめた。小学生は、そっとほほえむ。 「そうね。たとえば、彼女の中で生きる兄の臓器。そこには、心があるわ。兄は、彼女に生きて欲しいと願っていたから」 患者がそっと腹に手を添えた。その瞳に、悲しげな色が揺れている。 「では、兄が仮に彼女の死を願った時、臓器はどうなっていた? おそらくは、今と変わらないでしょうね。人の体は、生きるように作られている」 願おうが願うまいが、臓器は心を宿したように動く。そして、人はそこに、温かな心だけを感じ取る。 不思議な、話だ。持ち主の意志は、離れたものに関係していない。なのに、持ち主の意志を見つける。正しいかどうかさえわからない、意思のようなものを。 「心、と呼ぶものは、およそ受け取り手が決めるものだと、私は思うわ。受け取った人間に意志を生み出す源。だからこそ、ここに明確な回答は存在しない。人によって答えの変わる問題に、正答なんてあるはずがないでしょう?」 「道理だな」 俺は頷いた。なるほど、この子はまだ幼いのに、なかなかの哲学者だ。なんだか、丸め込まれてしまった気がする。 「もっとも。これは、私が私として存在し続け、その果てで考えた答えよ。貴方には貴方の答えがあるはず。与えられた答えだけでは、あまり意味がないと思うわ」 「自分で答えを見つけろって事かな。はっはっはー、ませているねえ」 子供に諭されるとはな。鈴木に話したら、爆笑される気がする。 けど、その論理からなら、俺は見つけられる。医者とは何なのか。どうして存在するのか。その答えを。 それが正しいとは限らない。前提条件がある上での回答は、それが崩れてしまえばおしまいだ。この小学生の出した答えなんていう前提、確実に絶対に正しいですとは言い切れない。 それを見つけるのもまた、医者の仕事ってわけか。 どことなく満足した俺を見て、高校生はため息をついた。 「あんた、変わってるわね。子供の言った事をそのまま信じちゃえるわけ?」 「そのまま信じているわけじゃないさ。そういう答えもある、それだけだろ?」 「そりゃそうね。哲学みたいな問題なんて、答えなんかいくらでもあるでしょ。極端な話、あたしとあんたじゃ正反対になるかもしれないし」 それもまた、心のなせる業、ってところだろうか。 本当に、こいつは厄介だ。見えないくせに存在感はあり、定義は作れないのに誰でも知っている。 それが、心。不安定で流動的で、姿形は存在しないもの。 「それが、俺の仕事か」 そういう事、なんだよなぁ。 俺を見上げる小学生は、満足そうに笑っていた。 「その顔を見ると、例の疑問は晴れたみたいだな」 「やっぱわかる?」 いつものように屋上で。俺はタバコ、鈴木はコーヒー。それぞれに揺らしながら、抜けるように青い空を見上げていた。 「じゃ、答え合わせといこうか。ちなみに正解はなし、だ」 「性格が悪いな。まさにお前そのものだ。で、回答だが」 こほん、と咳払いし、俺は口を開く。 「心は見えない。けど、受け取った側は確かに感じている。要するに、心を見出しているもの、生み出している存在ってのは、受け取り側って事になる」 小学生の受け売りを、そのまま語る。納得できたし、俺もそれが答えのように思えた。他人が導いた答えでも、よーく考えて同意できるなら、同じ答えになる事は変な話じゃない。 「医者の仕事は心を守る事、言い換えれば、心を生み出すものを守るって事だ。心を生み出すもの、それが、受け取る人間なんだな」 「なんだい、そりゃあ。要するに人間を治すのが医者の仕事ってわけか? それじゃ、答えになってないだろ」 「そうか? 究極的には、医者は人を治すのが仕事、それは変えられないって事だろ。けど、そこに至るまでの経緯は人それぞれだ。医者だから治す、でもいいし、心を守るために、でもいい。要するに、理由が必要なんだ。医者が医者であるためには」 「……それは、そうだな」 医者は人間を治すため、本来なら生き物の道理に反する事を行う。 体を切り裂き、不要な部分を切り取り、体に存在しない成分を注射し、自分たちで作り出した化学物質を患者に飲ませる。 それは一歩でも間違えれば、ただの傷害であり、殺人未遂であり、殺人そのものだ。 そうならない理由を、俺たちはそれぞれに持つ必要がある。そうでなければ、こんな商売はやっていられない。 心が、折れてしまう。 心が折れた人間は意志を生み出す事ができない。医者が医者たろうとする意志を失えば、そこに残るのは何だ? 「医者ってのは、因果な商売だよなぁ」 「人の命に最も近い場所だからな」 生と死の狭間。 それが、俺たちの立つ場所。 俺たちには越えられない壁の向こうに手を伸ばす人たちを、引き戻す。それが、俺たちの役目。 「おい。救急車のご到着だ」 「――おっと。それじゃあ、心を守る戦士様のご登場といきますか」 「ああ、先に行くぜ」 駆け出す鈴木の背中を見つめ、俺はタバコを灰皿に突っ込むと、同じように駆け出した。 向こう側になんか、行かせるものか。 チリン―― 生者と別れを告げ、ふたりの少女が歩いていた。 道行く人々は、まるで彼女たちなど存在しないかのように振舞う。事実、彼らにとって、彼女たちは存在していなかった。 「心、ねえ。そう言われてみると、明確な答えってなかなか出しにくいものね」 「それを知らずとも、人は生きていけるわ。けれど、意志の下で進もうと思うと、知らずにはいられない」 「んで、あのお医者様は知らないままに進む事ができなかった。だから、何かしらの答えを求めた」 「……彼にとって、おそらく答えはなんでもよかったのだと思うわ。彼が満足し、納得のできる答えなら」 「そうやって、自分をごまかすわけか」 ふうん、と鼻を鳴らす少女。それをちらりと見上げ、死導者は言う。 「人生には限りがあるわ。いつまでも考え続ける事も悪いとは言わないけれど、大抵の人間は、どこかで適度に折り目をつけなければいけない。考えている間は先にも後にも進めなくなってしまうもの」 「前も、後ろもない。そんな状況じゃ、生きられないわね。だから、生きるために簡単な答えを仕入れてくる、と。それが大人って事?」 「でしょうね。けれど、私や貴女には、無限と呼べる時間がある」 チリン―― ぴたりと、眷族の足が止まる。合わせるように、死導者の足も止まった。 「つまり、本当の答えを導き出す時間が与えられているってわけね」 「貴女は、貴女なりの答えを探せばいいわ。貴女にはそれをするだけの時間があるのだから」 「心、か」 桜色の着物を揺らし、死者としての道を歩む者は、人々の流れを見つめる。 それぞれが、道を行く。おそらくは、何かしらの目的を持って。その目的は、仕事のためであり、家族のためであり、自分のためであり。 「――そうね。いつかは、その答えも見つけなきゃいけないかも」 けれど。小さく呟き、眷属は道路を踏みしめる。 「今は、できる事をするしかない。でしょ? アンジェラ」 「ええ。私も、貴女も、彼も彼女もね」 今日も、小さな少女たちは人々の住まう町を行く。 ただ、己のために。 チリン―― |