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「メリークリスマスッ! 『焔色の夕凪』特別企画、クリスマスパーティよッ!」 「……無駄に元気ですね」 「いいでしょ別に! 本編じゃ活躍が少なかったんだし、久々の出番なんだし」 「活躍が少ないという点に関しては僕も同じはずですが、はて、僕とは意見が異なるようですね」 「うっさい」 サンタ服を着込んだナミに睨まれ、秀一はアメリカ人のように肩をすくめた。 ここは異次元空間。あらゆる世界の人間が出入りを許されるビックリパラレルワールドだ。 クリスマスを祝うため、広い部屋はクリスマスカラーである赤と緑に埋め尽くされ、部屋の隅にはもみの木が飾られている。テーブルの上には七面鳥やらケーキやらが並び、華やかだ。 集まったメンバーは、『紋章伝』のヴァルゴ・オフィユカス、『Lord』の如月秀一、『GO!』のナミ、『夜空の鈴』のアンジェラの計四名。ナミを除くメンバーはいつも通りの服装だ。ヴァルゴは鎧を、アンジェラは夜空色の衣を、秀一は心魔学園の制服を着ている。 「で、どうして僕が『焔色の夕凪』のクリスマスパーティなんかに呼ばれたんです? そもそも、クリスマスって何ですか」 「クリスマスは、キリストの意を示すギリシア語、Xristosの頭文字と、祭日の意を示すmasを組み合わせた言葉。キリストの降誕祭の事で、元は太陽の新生を祝う祭りがキリスト教化されたものと言われている」 秀一の疑問に、アンジェラはすらすらと答えた。それにしても、夜空色と呼ばれるアンジェラの服は、祝いの席ではひどく浮く。もっとも、ヴァルゴのプレスト・メイルに関しても同じ事だが。 「キリストは『油を注がれた者』という意味。キリスト教では、イエスというキリスト教の開祖を示す言葉ね。メシア……救い主などと言われているわ」 「つまり、宗教のお祭りなわけだ。管理人はキリスト教徒なのか?」 ヴァルゴの問いに、アンジェラは首を振って答えた。 「日本ではキリシタンであるかどうかに関係なく、ただのお祭りとしてクリスマスを祝う……と言うより、騒ぐわ。焔嵐はそれに従っただけよ」 「……? キリスト教徒の祭りを、キリスト教徒でない者が祝うのですか?」 「ええ。日本ではそういう文化があるようね」 アンジェラは特に興味もなさそうに言う。いや、本当にないのだろう。彼女にとっては単なる知識に過ぎない。 「いーじゃない。せっかくのお祭りなんだから、楽しめばいいだけでしょ」 「……ナミさん、でしたっけ。その服は?」 秀一は汚物でも見るようにナミを見つめた。控え目な胸元を精一杯に強調し、動き安さよりは単なる色気のために短く切り込まれたスカートから伸びる足は、白く美しい。が、秀一はそういったものに興味がないようだ。世の男性諸君に怒られそうな目付きである。 「これはサンタ服っていうの。クリスマスの正装よ。あんたの分もあるわよ? もちろんスカート」「要りません」 ナミに皆まで言わせず、秀一は否定した。 「で、代表がどうして僕なのか、その理由はまだ説明して頂けませんかね?」 「あー。私は知らないのよね」 てへへ、とナミは笑った。秀一はあからさまに溜め息をつき、ヴァルゴに視線を向ける。 「あなたはご存じで?」 「ん……まあ管理人には聞いたが、いまいち意味が理解できていないんだ」 ヴァルゴは困ったように眉をハの字に曲げた。 「構いません。伝え聞いた通りに教えてもらえますか?」 秀一に促され、ヴァルゴは口を開いた。 「『クリスマスに暇な奴なんてカップルじゃない奴に決まっているから、そいつらが代表ってことでよろしく』」 ――静寂が、訪れた。それを破ったのは秀一の一言。 「……なるほど」 「って納得しないでよちょっとォ!」 そこに激しくツッコミを入れたのは、言うまでもなくナミだ。 「私だって好きで彼がいないわけじゃないしだいたい自分より強いヤツは女じゃない的な発言する馬鹿ばっかだったしショウは恋愛からきしの朴念仁だし従って私は悪くない!」 一息で言い切り、ぜーぜーと荒い息を吐く。 「だいたい、あんたたちは文句ないわけ?」 ナミは順々に睨みつけた。 「僕は別に。事実ですし」 「俺も別に。サリサ以上に好きだと思った相手はいないからな」 「私にはそもそも恋愛感情が存在しないわ」 「だーもー! あんたらそれでも生命体ですか!? 生き物なら総じて異性の関心を引きたいという感情があるはずでしょーが」 興奮するナミとは対照的に、面々は冷静だった。興味がないと言ってもいい。 「……私は死導者。生命体ではないのだけれど」 「行動できて会話もできるなら生命体と変わりなし! よって文句は言わせません!」 ナミが断言した時、あー、とヴァルゴが言いにくそうに言葉を吐いた。 「実は管理人から手紙を預かっているんだが、この状況は読まない方がいい気もするんだよな。で、どうする?」 「読みなさい」 ナミに凄まれ、ヴァルゴはしぶしぶ懐から封筒を取り出した。 「読むぞ。『せっかく恋人のいない連中が集まったんだし、なんかラブコメ的な展開もアリだと思うわけで、でもそんなもんは私も苦手だし、つまりは仲良くする事。カップルが成立したらなおよし。ま、合コンみたいなもんだと思ってくれ。以上』……だ、そうだ」 「……合コンというのは?」 秀一が首を傾げた。 「合コン……平たく言えば、男女の出会いの場ね。もっとも、ここで出会うというのは少ないでしょうけど。集団見合いのようなものと思っていいと思うわ」 「見合い? 結構です、僕は帰ります」 さっさと行こうとする秀一の肩を、ヴァルゴが掴んだ。 「待て。逃がすか」 「あなたも逃げればいいでしょう」 「管理人命令には逆らえないからな」 はあ、と溜め息ひとつ、秀一は腰に手を当てた。 「わかりましたよ。で、何をすればいいんですか?」 ヴァルゴは無言でアンジェラに救済を求めた。が、アンジェラもそこまでは知らないらしく、首を横に振った。 「いいじゃん、とりあえずご飯でも食べていれば」 「そうですね。焔色のおごりですし」 すたすたと料理の方へ歩くナミと秀一の背を見て、ヴァルゴは呟いた。 「……息、合っているじゃないか」 「そうね。これでいいのかしら」 「さあ?」 ヴァルゴの懐には、管理人から受け取ったものとは別に、ふたつの封筒が入っている。 ひとつはショウから。 『こういう時期にはうるさくなるので、何とか黙らせて下さい』 一方、もうひとつは新藤から。 『秀一君も相変わらず人間関係が下手なので、少し仲良くしてやって下さい』 そっと笑い、アンジェラは言った。 「人間、喧嘩するよりは……そっと寄り添う方が、よほどいいわ」 「そりゃそうだな。クリスマスって、そういう日なのか?」 「……そう解釈しても構わないでしょうね。クリスマスとは、本来ならこの世を救う者が降誕した日。罪や貧しさに苦しむ人々が、笑いあう日なのだから」 微笑みながら、アンジェラはそう言った。その視線の先では、秀一とナミが楽しそうに笑っていた。 |