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「くじ引きのやり直しを提案します!!」 「手法を提案したのはお前だろうが」 「だからってない! こいつとデートはない!!」 涙目になって京介を指差すリナ。そんな嫌がらんでも。 事の始まりは、リナの提案にある。 『まいどカップルネタでハブられるのは納得いかないからくじ引きでペア決めてデートしよう』 もはや手段と目的が入れ替わっている感がないでもない。 「つーか、それならフレーゼとか聡の方がいいのかよ、ん?」 「……。よくよく考えたら、ここってろくな男がいないのね」 「だろ」 「おいグレイス」 「う、うーん。まあ、その、否定するほどのものがあるわけじゃないけど、なんだか、ねえ」 「こまけえことはいいのよ! というかやり直しを!」 「誰なら満足をするんだ、君は」 京介の問いかけに、リナは力強く答える。 「やってから考える!!」 「……。話にならないね」 肩をすくめる京介。まあ会話が通じないのは今に始まったことではない。 「俺もリナはちょっと」 「テメエから地雷を踏みにいく理由もねえし」 「グレイスさんなら、まだ話も通じるし……」 「オレもエリアさんの方がいいし」 「ようしテメエら表に出やがれぇ!」 「はいはーい、リナちゃーん、暴れるのやめましょーねー」 「ええい放しなさいエリア! あたしは正義の鉄拳を振るわなきゃいけないのよ!」 「あたしが言うのもなんだけど、鉄拳に正義はないと思うわよー」 平和な日本では話し合いで解決すべきなのだ。 「ま、行こうぜ」 「あ、ちょっとぉ!?」 ぞろぞろと出て行く一堂。リナは膝をついてたそがれるのであった。 〜 第一グループ アンジェラ&聡の場合 〜 二人はどことも知れぬ街を歩いていた。 歩いているのは繁華街。酔い客がつらつら歩いているのが見て取れる。 どこの街かはわからない。それを問いかけることも無駄なのでしない。 「アンジェラって酒とか飲まないんだよな、どうする?」 「そもそも、貴方も飲酒をしてはいけない年齢ではないのかしら」 「成人してればいいんだろ?」 「していないのでしょう?」 「細かいことを気にしちゃいけないんだぜ」 「……。貴方の未来に関わることなれど、貴方自身が納得して選択するのであれば、それもまた道なのでしょうね」 「そんな小難しいことじゃないと思うんだけどな」 「刹那的なのかしら」 「今がよきゃ後はどうでもいい、ってわけじゃないんだけどよ。そりゃ今が面白くなきゃ意味ねえじゃん?」 「そうかもしれないわね」 「そういうこった。よし、飲みにいこう!」 「私は酔わないわ」 「そういうもんじゃねえさ。アンジェラもいっぺん、雰囲気を楽しんでみた方がいいだろ。酒に酔うってのはさ、そういう側面もあるんだぜ」 「雰囲気を?」 「そうそう。ま、クリスマスくらい、景気よくいこうぜ」 「趣旨とは異なるようにも思うけれど、付き合うわ」 「そうこなくっちゃな!」 〜 第二グループ 光子&カズマの場合 〜 別グループ、有沢光子とカズマ=クライフォードは、アンジェラたちと同じ繁華街を歩いていた。もっとも、同じ繁華街といっても、通りが変われば雰囲気も変わる。 こちらは、ショッピングモールのような趣きだった。きらびやかな洋装店、装飾店。カップルも多いが、女性だけのグループも見受けられるような、そんな通り。 「……。居心地わりい」 「あたしもよ」 そして、この二人にはそんな場所が最高に似合わない。 「お前は女なんだからおかしくねえだろ。オレは暗殺やってる男だぞ。どうひっくり返っても似合わないじゃねえか」 「あたしだって、普段からお洒落なんてしたことないわよ。見りゃわかるでしょ」 「見てもわからん」 「あんた、そんなんでよく恋人なんて連れていられるわね」 「クルルは飯を食ってれば満足するタイプだからな。お前こそ」 「あたしはお金がないのよ」 有沢光子は高校生だ。だが、普通の高校生みたく、親からこづかいを貰っているわけではない。アルバイトはしているが、それだけで服装に金はかけられないのだ。 はあ、とため息をついた有沢。 「まあ、いるからには仕方ないわ。カズマ、あんた、クルルの服を選んでやりなさい」 「はあ? なんで」 「たまにゃそういうこともしてやりなさい。どうせあんた、まっとうな人間の生活できないんだから」 「オレはわかんないぜ」 「あたしも手伝ってあげるわよ。それで時間を潰せばいいでしょ」 「めんどくせえ」 「殺すわよ」 「……わかったわかった、ったく」 〜 第三グループ グレイス&フレーゼの場合 〜 こちらはとある遊興施設。その中にある、バッティングエリアにて。 「はっ!」 ピッチングマシンから飛び出すボールを、グレイスは難なく打ち返す。 「いよっ!」 「すごい、よく当たるね」 「こんくらい簡単なもんだ、ろっ!」 そりゃ凄腕の剣士様ならそうかもしれないが。 手を止めたグレイスは、ネット裏にいるフレーゼに向き直り、 「というか、お前もできんんだろ。こんくらい」 「僕は無理だよ。運動神経がいいわけじゃないし」 「はあ? だってロボット乗りとはいえ、戦いにも出るんだろ?」 「それはそうだけど、あくまでロボットだからね。実際に手足を動かすわけじゃないし、力もいらないから」 「こんなもんに力なんていらねえよ。タイミングさえ合えばな。反射神経とか視力は悪くないだろ?」 「それはそうだけど」 「じゃ、お前もやってみろって。見てるだけよか、実際にやってみた方が早いぜ」 「そ、そうかな」 グレイスにバットを押しつけられ、フレーゼはバッターボックスに立つ。 ピッチングマシンが動き、白球が飛び出し――。 「やっ!」 どこか気の抜ける掛け声と共にバットを振る。白球をしっかりとらえたバットは、押し負けることもなく、そのまま打ち返した。 「ほら、できんだろ?」 「……、まあ、どこに飛んでくるか分かっていたから」 「わかってたって出来ない奴はできない。そういうもんだぜ? お前はもうちっと自分に自信を持てよ」 「あー……うん、まあ、そうだね」 「ほら、もういっちょ来るぞ」 「え? わわ!」 〜 第四グループ エリア&ヒカルの場合 〜 エリアとヒカルの二人は、花園を歩いていた。 遊歩道の左右には、水仙の花が遠くまで続いている。見事なものだ。 「こういうところでよかったんですか?」 「うん。あたし、自然とか好きだしね」 「オレも花は好きですね」 「へえ、そうなんだ。男の子にしちゃ珍しいね」 「そうですか?」 そのまま、しばし歩き進める。話が続かなくて言葉が出ないというより、二人とも花に見とれている感があった。 「……ねえ。ヒカルも戦争を経験したのよね」 「え? ええ、まあ」 「どう思った?」 「金輪際、経験したくないって思いました」 「きっぱり言うのね。でも、あなたは戦場ではヒーローだった。その手で戦争を終わらせるほどの力を持ち、その気になれば多くの人を殺すことも、守ることもできた。それでも?」 「オレはヒーローになりたかったわけじゃないですから。ただ、誰かを殺して、それが幸せの形だ、なんて理屈を……、認めたくなかった」 「ふうん? それで、戦争には絶対反対?」 「ええ。そりゃ、衝突しなきゃいけない時もあります。でも、死んじゃえばそれまで。ケンカは未来のためにすることであって、未来を捨てるためにやることじゃない。オレは、そう思います」 「ん……」 「わ!」 突然、エリアはヒカルを抱きしめた。ぎゅっ、と、力強く。 「エリア、さん?」 「みんなが、そういう考えを持ってくれれば、あたしたちはいらなかったのにね」 「――そうですね」 静かにエリアは離れる。 「さて、と。お茶でも飲む? お姉さんがおごってあげるわよ」 「ええ、それじゃ、ご馳走になります」 「ふふ。ありがとうね」 〜 第五グループ リナ&京介の場合 〜 最悪の相性である二人組は、とある飲食店の窓際で、食事をしていた。 「だいたいさー、なんでさー、あたしがさー、あんたなんかと一緒にご飯を食べなきゃいけないわけぇ?」 「お互いクジ運が悪かったとしか言いようがないな」 言って、京介はフランスパンをちぎって口に運ぶ。 「冗談じゃないわよ。だいたい理屈屋ってあたしがいっちゃん苦手なタイプよね」 「ならば、どういう相手がいいんだ」 「えー? えーと、エロくなくて、嘘をつかないで、なんかムカつくほどの余裕はない奴」 「それは単に自分の周囲にいる人間の批判じゃないのか」 「なによ、悪い? 自分のまわりにいる人を参考にしなきゃ、他人に対する評価なんて出しようがないじゃない」 「なるほどね、君にしては理論的だ」 「あんたさ、あたしのこと、普通に馬鹿にしてない?」 「それ以外の可能性が?」 「……やっぱ、あんたムカつくわ。さっきの条件とかなしに」 「当然ではあるね。僕はそもそも、他人に好かれようという努力は一切していない」 「努力以前の問題よ。嫌われる努力でもしているんならともかくね」 「僕の生き方は他人との交流を必要としない。むしろ邪魔になりかねないからね。合法的なことばかりしているわけでもなし、仲良くする理由はないな」 「そういう問題じゃないわよ、あんた。人間なんて他人なくして生きていけないんだから、少しは仲良くするよう自分を曲げなきゃ」 「僕が他人を必要とするとでも?」 「していないわけ? あんだけ他人の力を借りて生き延びたくせに。友達はかわいそーねー」 「……。まあ、彼のことは感謝しているさ」 コーヒーをすする京介を眺め、リナはため息。 「もしかして、あんたってすっげーガキ?」 「はあ?」 「そんな顔しなくてもいいでしょうがというかやっぱガキね。女の子をレディ扱いできないなんてガキね」 「淑女ならば淑女らしくしたらどうだ」 「うっせーバーカ。げ、ピーマン嫌い。あんたにあげる」 「好き嫌いしている方も十分に子供だと思うが」 「あたしは永遠の十代だからいいのよ」 「ふん……。まあ、外面はそうだな」 「内面は?」 「コメントを拒絶する」 「えー、何よそれ。あんたって本当にムカつくわね」 「君は無遠慮すぎるな……」 「ん?」 「なんでもないさ」 〜 デート終了後 〜 「ようやく終わったか……」 「ちょっと聡、起きなさいよ。てかなんで酔っぱらってんのよ、あんた」 「あー? いーじゃねーかクリスマスなんだしー」 「酒量というのがよくわからなくて」 「なんか酒場にいる親父みてーだな。おい、外に転がしといたらどうだ」 「風邪を引きますよ」 「馬鹿は風邪を引かないっていうんだから、いいんじゃない」 「俗説だろ、それ。根拠とかねーんじゃないか」」 「でもさ、ちゃんと教育が行きわたっていないとこだと、病気とか多いイメージってないか?」 「たぶんだけど、教育をする余裕がないような国には医療技術も、衛生観念もないからだと思うわよ」 「まあいいけどよ。てか、このデート? って意味があったのか」 集った一堂、お互いに顔を見合わせる。 「まあ、他の一面は見れたんじゃねえか」 「ちょっと気持ちが楽になったわ」 「こういう機会でもなければ、ああいう話をするチャンスもなかったと思うしね」 「楽しかったわよ」 「……じゃ、まあいいのか」 「ちょっと。なんでこっちは見ないのよ。なんでこっちは見ないのよ」 「僕と君では相性が悪いことなど自明だろう。聞くまでもないと思うが?」 「ああ? だからってスルーは頂けないわ。主人公的に言って」 「そんなことを言ったら全員がそうだろう」 「うるさい! てか、なんであんたはそう口応えするのよ!」 「すまないね、それが僕の特性だ。君の、思考する前に発言する癖と、まあ似たようなものだよ」 「だから、そういう一言が余計だって言ってんでしょ!?」 「ふん。挑発によって感情を乱されるようでは、交渉など成り立たないぞ」 「力で交渉するからいいのよ!」 「君はそもそも力も弱いんじゃないのか?」 「ええい正論を!」 言い合うリナと京介を眺め、他のメンバーは不思議そうな顔。 「お前ら。いつからそんな風に仲良くなったんだ」 『仲良くなってない!!』 「……素敵ね」 救いの生まれた日。 それだけでしかない日ではあるけれど、そこに何かの意味を見いだせたなら、それはきっと幸せ。 メリー・クリスマス |