| ヴァルゴ・オフィユカス | 主人公。男性。周囲の人間を殺してしまう呪いのせいで長く一人旅をしていた。コミュ能力はない。 |
| セリア・リンカークス | ヴァルゴの旅仲間。女性。よくいえば親しみやすい性格、悪くいえばおせっかい。 |
| 村野聡 | 主人公。男性。天才的魔法使い。うっかり発言で痛い目を見るタイプ。 |
| 宮野茜 | 聡の幼馴染にして彼女。もちろん女性。聡とこなした悪戯は数えきれない。 |
| 橋本ヒカル | 主人公。男性。高校生。異世界に強制転移するも大活躍する最近流行しているタイプの少年。 |
| エレナ・テスタロッソ | ハーフエルフ。女性。教会で要職を務める。ヒカルの彼女にして名実ともに聖人。 |
| リナ=ミサキ | 主人公。女性。能力とひきかえに永遠を手にした超能力者。諸事情により彼氏ができないことを悩んでいる。 |
| シルヴィア=ガーネット | リナの友人。女性。胸は壊滅的。 |
| グレイス・フェイリアー | 主人公。女性。世界のバランスを保つ茜色の姫君という能力を備えている。男社会で生きた反動か口調は男性的。 |
| ディック・ハーション | グレイスの旅仲間。男性。周囲を巻き込みがちな暗黒騎士という能力を備えている。 |
| カズマ=クライフォード | 主人公。男性。暗殺を生業としていた人造魔人。現在は足を洗っている。 |
| クルル=コクーン | カズマの恋人。女性。伝説の魔法を使える唯一の現代人。大食漢なのは能力のせいだと言い張っている。 |
| フレーゼ・ハイブリーダ | 主人公。男性。傭兵だが喧嘩が苦手な性格。ハーブを育てるのが趣味。 |
| ラナス・プラネッシア | フレーゼの傭兵仲間。女性。遺伝子研究で生まれた人造人間。酒には弱い。 |
| エリア・クリスティ | 主人公。女性。恋人を失い、国家転覆のテロリストとなる。 |
| レイチェル・ライラック | エリアの友人。女性。鍛冶の能力を持つ。実は王族の子供。 |
| 雨雲京介 | 主人公。男性。根性曲がり。父親はサイコ的な大量殺人犯。本人もまともではない。 |
| 日向雪乃 | 京介の仲間。女性。京介とは異父姉弟。殺人に対する倫理観はない。 |
| 有沢光子 | 主人公。女性。町の名士の娘だが、見た目はヤンキーっぽい。頭が切れる。 |
| 笹森流人 | 光子の彼氏。男性。精神崩壊気味の母を守るべく、長らく弟のふりをしていた。 |
| 烏丸太陽 | 主人公。男性。ヤタガラスという妖怪の一種。実は妖怪の中でも力が強い方だが、妖怪としては変わり者。 |
| 獅堂瑞奈 | 太陽の保護者兼教師。女性。火車という妖怪の一種。元は妖怪の長だった。 |
| マリナ・チェストナット | 主人公。女性。神様やら魔王やらを倒しまくった伝説級の勇者。 |
| レオン・フェイバー | マリナのパートナー。男性。人格を持ったプログラムで、現在は剣の形をしている。 |
| 古木作也 | 主人公。男性。文芸部の部長。以前、自作の小説を部の顧問に盗作されたことがある。 |
| 若井みどり | 作也の彼女。女性。肉食系かつスーパーワイルド。 |
| 久住優希 | 主人公。男性。通称ユウ。普通の人間。 |
| 白馬百合 | 優希の部活での後輩。女性。競争率の高いチケットを奪い取った勝者。 |
| 八雲恵美 | 主人公。女性。過去から伝わる神力を現代に伝える天才少女。 |
| アメリア・ラッセル | 恵美の仲間。女性。ケモノに両親を殺され、復讐にかられていた。 |
| ショウ・コガネイ | 主人公。男性。ポケモン研究者。ポケモンの能力を限界以上に引き出す能力を持つ。 |
| ナミ・リュウザキ | 主人公。女性。たゆまぬ努力によりポケモンリーグチャンピオンとなった。 |
| アンジェラ・ウェーバー | 死導者。女性。趣味は人間観察。 |
| 志野ケイ | 死導者の眷属。女性。アンジェラに振り回されることも多々。 |
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「無駄にきんきらしてるわね……」 頭上を見上げ、志野ケイは呟く。 そこには金ぴかの看板が掲げられており、『祝! 10周年』と記してあった。焔色の夕凪10周年の記念会場である。 「ていうか、祝て。そういうのは他人が言うものじゃないの?」 「祝う人間はいないから、だそうよ」 「それもどうなのよ」 隣に立つアンジェラはいつもいつでも無表情。まあ愛想を求める相手ではない。 「さあ、入りましょうか」 「いいけど。でも、あたしも入っていいの?」 「チケットには同伴一名まで可、とあるわ」 「そうだけど、あたしでいいわけ?」 アンジェラは自分の部下を見上げ、くすりと笑う。 「何か問題でも? 私のパートナーはあなたでしょう」 「……そういう一部が勘違いしそうなこと言わないの」 「?」 「まあいいわ。ほら、入るわよー」 木製の扉を押し開くと、そこは広い空間になっていた。テーブルの上には料理が並び、あちこちにきらきらと飾りつけがなされている。 「はぁ、なんか無駄にすごいわねぇ。っと?」 入口で戸惑うケイの後ろから、人が入ってくる。ケイは軽くかわして、 「ああ、ヴァルゴ。あんた一人なの?」 「む? あ、ああ」 ヴァルゴは外套を脱ぎ、会釈した。 「意外ね。てっきりセリアあたり連れてくるもんだと」 「チケットには同伴可とあっただけだ。以前のように義務があったわけじゃない」 「そりゃそーだけど。でもいいの? 後で怒られない?」 「気づかなければ問題ないさ」 「いや気づくでしょ……」 「気、づ、い、て、る、わ、よ」 ぎくり、とヴァルゴの肩が震える。振り向けばそこには阿修羅。 もといセリア。 「ヴァルゴ〜! なんで置いてっちゃうのよもう! 今日はいつもと違ってついてきていいんでしょ!?」 「そ、それはそうだが。だが……」 「だがもしかしもないでしょ!? たまには旅仲間をねぎらおうとかいうやさしさが欲しいなー!」 「ま、まあ待て、わかった、わかったから騒ぐな」 「騒ぐと何か問題あるの? 一緒じゃ問題?」 「お前は問題ないだろうが、そういうことを気にする奴が……、はっ」 再び振り向くヴァルゴ。その後ろには般若もといリナ=ミサキ。 「ああらぁ、ヴァルゴくーん。同伴出勤とはいいご身分ね」 「そういうつもりじゃ……、ぐふっ!?」 「見せつけおってからにぃ! ただでさえカップルだらけでイライラしてるってのに!」 「待てリナ、そういうのはおかしい!」 「そうですわよ、リナ。おやめなさい。ヴァルゴさんに御迷惑でしょう」 あきれ顔で出てきたお嬢様の名はシルヴィア。リナの友人だ。 「だってぇ! こんだけカップルだらけだったらシルヴィアだってイラつくでしょ、そうでしょ!?」 「別に、わたくしはあなたほど飢えていないもの」 「にゃんですってぇ!? じゃあシルヴィアもとうとう彼氏を……!?」 「そうではなく。今は任務もあって充実していますもの」 「……あー。仕事に生きるってやつ? わびしい」 「なっ!? な、何が悪いんですの!」 「まあそうだよねぇ。シルヴィアの大平原じゃ彼氏なんかできないわよねぇ」 「むっかー! あなただって大差ないでしょう!」 「おー言ったな!? 言っちゃったな!? 言っちゃいけないこと言っちゃったな!?」 「先に言ったのはそっちでしょう!」 ぎゃあぎゃあと喧嘩をする二人をよそに、ケイは肩をすくめる。 「アンジェラ。ほっといていい?」 「まあ、いつものことね」 矢とかハンマー的なものがぶんぶん振り回されるが、ヴァルゴが迎撃しているおかけで被害も出ていない。ならばよしと、アンジェラたちは移動した。 会場の違う一角では、料理を前に別グループがいた。 「おー、アンジェラ。おつかれー」 「聡。それに、茜も」 村野聡と宮野茜。幼馴染カップルのご登場である。 「あー、やっぱり聡は茜を連れてきたのね」 「そりゃそうだろ。他に選択肢もねえだろ?」 「まあそうねぇ。あえて新藤先生とかでもよかったんじゃないの?」 「まー、一応あの人も主人公級だからなぁ。てなわけで探したんだけど逃げられた」 「探査はしたし、見つけたのよ? だけど捕まらないの。やっぱり本気で逃げに徹されると厄介ね。今度は別のトラップを仕掛けなきゃ……」 「先生は珍獣か何かなの?」 「いや、猛獣だな」 「じゃあさしずめ由佳ちゃんは猛獣使いね」 「ぐふっ、やめてよ。想像しちゃうじゃない!」 ひとしきり笑ったところで、ケイは問いかける。 「そういえば、今日はリナの相手をしなくていいわけ?」 「そう毎度毎度やってられっか。今日は茜もいるんだから」 「あら、私は相手してもいいわよ? 戦いなら負ける気がしないし」 「そういう問題じゃねえの。だいたい茜がやられたら、手加減できなくなっちまうかもしれねえだろ」 「なんで?」 「は? なんでって、んなもんオレがキレるからに決まってんだろ」 「……」 「……暑いわねぇ。こんなとこいらんないわー」 「ふふ。仲が良いのね」 ぱたぱたあおぐケイと、嬉しそうなアンジェラ。そんな二人を前に、聡は首をかしげ、茜は頬を染めていた。 料理を食べることができるわけでもないケイとアンジェラは、他の参加者に挨拶をすることにした。 聡と別れた後にいたのは、なにやらお疲れ状態の一般男子2名。 「えーと、作也と優希、だっけ? あんたら」 「あ、うん、古木作也です……」 「久住優希、です」 なにやらげっそり気味の二人に、初対面のケイですら眉をひそめる。 「どうしたの、あんたら」 「いや、色々とあってね……。まあ、僕は久住君よりマシだと思うけど」 「まあ、その……、古木さんも大変だと思います」 「何が? ……ん?」 疲れ気味の二人、その後ろには、連れの少女たちがいた。若井みどりと白馬百合、どちらも男子より強気な女子である。 「あら、百合の方が来てたの?」 「あ、ケイさん。ふふん! 先輩がたとの勝負に勝ちました!」 「勝負って……」 「もちろん、先輩のエスコートを受ける権利です。同伴一名までなんて、そんなの戦争になって当然ですよね?」 「あー……。まあ、優希は競争率高いもんねぇ」 部活仲間四人が四人とも狙っている高倍率少年なのだ。 「でも、独り占めは諸先輩に悪い〜、とか言ってなかった?」 「それはそれ、これはこれです。どうせ一日だけですし」 「あ、そ、そう。ちなみに、勝負の方法は?」 「もちろんガチバト……、いえ、なんでもありません」 「……地形とか変えてないでしょうね」 町の被害とかが気になる今日この頃。 「それで、せっかくのチャンスですし、まあ思い出のひとつくらい作れたらなぁとか思うわけです。わけです!」 「そんな力強く言わなくてもいいけど……。具体的には?」 「そんな恥ずかしいこと言えるわけないじゃないですかー」 「言えないほど恥ずかしいことしようとしてんじゃないわよ」 ベジタリアンだが肉食系なのだ。 「優希がなんとなく疲れてんのはわかったけど、じゃあ作也はなんで疲れてるわけ?」 「いやあ、若井さんが諦めてくれなくて……」 「諦めってなんですか! ちょっと物陰に拉致もとい連れ込んで、男女のほにゃほにゃしようとしただけじゃないですか!」 「いや、だからね? なんで若井さんそんなに肉食系なの?」 「そりゃあもう。女としては惚れた男に一発……」 「一発とか言わない。もう、ずっとこの調子でね……」 「あー。もういっそ観念しちゃえば?」 「そうです先輩! ファイト一発!」 「一発とか言わない。それに、そういうことは、ちゃんと責任を持てるようになってからすべきだと思うよ」 「大丈夫です! なんとかなります!」 「その勢いだけは凄いんだけどね……」 ぎらぎらと欲望渦巻く女子勢と負けがちな男子勢。男子2名から助けて視線を受けるケイだったが、 「あー、まあ、公序良俗に反しない程度にねー」 「ちょ、ケイさん!?」 「見捨てないでください!?」 「大丈夫よ、死にゃしないからー」 「基準がおかしいです!?」 普段から生き死にの境を歩んでいるケイにとって、まあこんなものは不幸のうちに入らないのだ。 ひらひらと手を振りながら男子たちを見捨てたケイは、次のテーブルへ。 「よう、ケイ」 橋本ヒカルとエレナ・テスタロッソ。竜神組だ。同じ卓にはカズマ=クライフォードとクルル=コクーンの姿もある。 こっちはこっちでカップル席、ただし先ほどよりはもう少し初々しいメンバーだった。 こちらのテーブルは所せましと料理が並び、しかもそれが見ている間にも減っている。 「クルル、ほら、挨拶くらいしろって」 カズマに促され、ようようクルルは食べる手を止めた。 「えっと、こんにちはー!」 「はい、こんにちは。あんたってば、本当によく食べるのね」 「だって美味しいし!」 「その体のどこに消えてったのか気になるわね……」 決して大柄ではないクルル、食べた量の方が多いんじゃないかというレベル。 「まあ、クルルはよく食べるからなぁ」 「いいじゃない! 料理はいくらでもあるんだし、食べなきゃもったいないもん!」 「そりゃそうだけどよ。ほら、ケイも食べるか?」 「あたしはいいわ。消化できないもの。ヒカルとエレナは?」 「いやあ……」 「そうですね……」 ヒカルとエレナは互いに顔を見合わせ、 「目の前でこんだけ食ってるの見るとなぁ……」 「かえっておなかがいっぱいになってしまうと言いますか。別段、食事をしたわけではないんですけど……」 「あー、なるほどね」 人間の限界を突破するような食欲を発揮するクルルに、ヒカルたちは負けているらしい。 「それに、料理ならエレナが作るほうが絶対に旨いしなぁ」 「え? い、いえ、それほどでも……。このお料理も美味しいですよ?」 「そりゃテクとかはそうかもしんないけどさ。ほら、エレナはやっぱオレの好みとかも知ってるし、それにオレのことを考えて作ってくれるじゃんか。そう考えると、エレナの作る料理の方がなぁ」 「あ、あぅ……」 顔を真っ赤にするハーフエルフに、ケイは肩をすくめた。 「はいはいごちそうさま。カズマ、あんたがこの卓にいる最後の良心なんだから、なんとかしなさいよ」 「馬鹿につける薬はねえ、って言うだろ」 バカップルにつける薬もないのだ。 「ま、どっち見ても胸焼けするのはしょうがねえって話じゃねえの?」 「別の意味でね……」 なんとも言い難い表情をするケイであった。 少し離れた卓へと移動したアンジェラとケイ。 そこでは、なにやら良い香りが漂っていた。 「なんだろ、このにおい」 「ハーブね」 「ハーブってことは……」 姿を見るまでもなくわかる。 「ああ、アンジェラ。それにケイさんも」 「やっぱりフレーゼね。それにラナスか」 フレーゼ・ハイブリーダとラナス・プラネッシア。二人とも機械兵器を操る傭兵だが、こうしてお茶をたしなむのが趣味でもある。 「ようフレーゼ、食べ物を持ってきてやったぞ。お、ケイとアンジェラ」 「あら、グレイス」 両手に皿を持って登場したのはグレイス・フェイリアーとディック・ハーション。二人とも騎士だ。といっても、主君を持っているわけではないので、称号としての騎士ではなく能力としての騎士だが。 「またこんなにたくさん……」 「食べきれないのではないでしょうか」 「ああ? お前たち若いんだし大丈夫だろ」 「二人とも傭兵なんだし、少しは食べておいたほうがいいぜぃ? 線が細すぎにゃ〜」 テーブルに並んだのは鳥のモモにローストビーフ、それに何かの肉の串焼き。どれもこれもガッツリ系だ。 「わたしはもともと遺伝子研究の結果ですから。ここまで成長しただけでもイレギュラーだそうですよ」 「僕も食べるのは得意じゃないし……」 「そんなこと言ったって、体を動かすのが仕事だろうが」 「機体に乗ったらそんなには?」 「動作にはパワーアシストもありますしね。それにイグニスは入力操作も可能です」 「ごちゃごちゃいいから食べろっての。ほら」 皿を強制的に渡していくグレイス。その横でディックもにやにや笑っている。 「大丈夫だなん。今日はグレイスが作ったわけじゃないしー」 「なんだよ。オレが作ったら食えないってのか」 「はっはっは、いやあ、今日もいい天気っすねぇ」 「ここは室内だろうが! おい、ディック、本音で言え!」 「グレイスの料理はちょっと」 「本音で言いやがったな!?」 「言えと言っといてそれはひどいなん!?」 横で始まる剣劇、慌てるフレーゼと特に気にしないラナス。 「フレーゼさん。あの人たちにとってはいつものことでは?」 「そうだけど……、うわ!? なんで落ち着いていられるの!?」 「アンジェラさんとケイさんも落ち着いているじゃないですか」 「まあ、あたしたちは当たらないしねぇ」 「力の通っていない剣では斬られないわ」 「そういう問題かなぁ!?」 「おちついてください、そうそうあたりはしませんよ」 「そうだけど……、あれ? ラナスちゃん?」 ふと気づけば、ラナスの顔が少し赤い。なにやら目つきもとろんとしている。 「……あ、これお酒じゃない?」 ケイがテーブルの上にあった瓶を持ち上げる。グレイスたちが持ってきた酒瓶だ。 「まずい!? ちょ、ケイ、ラナスちゃんを捕まえて!」 「は? なんでよ」 「こういうことじゃないかしら」 アンジェラが眺めている横で、ラナスは服に手をかけていた。 「なにやらあついですね、このかいじょう」 「って、何を脱ごうとしてんのあんた! それワンピースでしょうが!」 「だってあついですし……」 「暑いですしじゃないし! フレーゼ、この子まさか酒乱!?」 「そうなんです〜! あ、こら、ラナスちゃん! 見えちゃうから!」 「お、おお!? ラナス、何やってんだ!」 状況に気づいたグレイスとディックもじゃれ合いをやめ、ラナスを抑えにかかる。 「なんでとめるんですか」 「なんでじゃねえだろ! あとディック、お前はこっち来るな!」 「ひどくないかなん!? あ、パンツ見えそ」 「死ね!!」 「ぐお!?」 渾身の一撃で天井の一部と化したディック・ハーションは、アンジェラが引きはがすまで落下すらしなかった。 「あ〜……、無駄に疲れた」 酔っぱらったラナスをフレーゼと共に休憩室まで放り込んだケイとアンジェラは、ようよう戻ってこられた。 「というか人間のくせに無駄に力強かったわねあの子」 「酒に酔ってタガが外れていたのでしょうね」 「お酒は怖いわ……。お?」 出入り口の近く、部屋の片隅。そこでは先ほどと違う香りを感じ、ケイは足を止めた。 「これ、煙草? ああ、瑞奈じゃない」 「なんだ」 くわえ煙草の女教師・獅堂瑞奈は、窓際でケイをにらんでいた。 「ここ、煙草OKなんだ」 「知るか。禁煙などクソくらえだ。私のいる場所が喫煙所だ」 「なにその私がルールブック」 「まあいいんじゃねえの? 煙草さえ与えときゃおとなしいんだから」 獅堂と共にいたのは、当然というか、烏丸太陽。妖怪コンビである。 「これが他の連中だったらおとなしくしてねえだろうしな。ルナ先輩とか絶対にやらかすし、くるみは料理を喰いつくしかねないし。茨にいたっては会場が壊れる」 「郁乃は?」 「あいつは知らねえ奴の心を読めちまうからな。人が多いところはかわいそうだろ」 「ふうん。あんたでも考えるのね」 「俺は親切心の塊だぜ?」 「自分でそういうこと言うから信用なんないんでしょうが」 そこでケイは獅堂を見やり、 「それにしても、あんたはよく来たわね。こういうとこ、好きそうじゃないけど」 「……うるさい」 「は? なんでよ。太陽、どうやって誘ったわけ?」 「あ? いや、普通に、一緒に来てくれって頼んだだけだぜ? 他に頼れる奴もいなかったし」 「テッセンとかミハエルは?」 「せっかくパーティなんだから、男連れてくるより、女の人のほうがいいだろ。先生も綺麗だし、華があるだろ?」 「……あー、そういう」 「うるさい。志野、そういう目でこちらを見るな。視線がうるさい!」 「いーやー? 先生も女子なのねぇ」 「は? なんだよそれ」 一人だけ訳がわかっていない太陽は、ただただ首をかしげるのであった。 ケイとアンジェラがバーカウンターへと移動すると、カウンターの内側には有沢京子が立っていた。 「なに、あんたも招待客じゃないの?」 「そうよ。何か悪い?」 ギロリとケイをにらむ有沢。もっとも、ケイはそんなものでひるむほどかわいらしい精神をしていない。 「何かしていないと落ち着かないんだって。有沢さんは」 「あ、流人」 カウンターのスツールには、笹森流人が座っている。その前にあるのは、もちろんミルクティーだ。 「それに、お酒はみんな、勝手に呑んでいるからね。逆にコーヒーとか紅茶は淹れてくれる人がいないと難しいし」 「自分で淹れなさいよ」 「有沢さんが淹れてくれたほうがおいしいじゃない」 「……まあ、それは当然でしょ。あたしは練習しているんだから」 「そうでなく。やっぱり彼女が淹れてくれたって思うほうがおいしいじゃない」 「……馬鹿」 そっぽを向いた有沢は、再びケイをにらむ。 「何。何か言いたいわけ?」 「暑いわね、あんたらも」 「もって何よ!」 「さんざんそういうの見てきてんだから。何? カップルになると馬鹿になる呪いでもかかってるの?」 「君がそういうことを言うとは意外だな」 反対側から飛んできた声にケイが振り向くと、雨雲京介と日向雪乃が並んでスツールに腰かけていた。 「ああ、京介。あんたもいたの。というかね、確かにあたしは恋に恋い焦がれるような人生を歩んでこなかったけどね? それはそれとして、こんだけカップルに会うと食傷気味なのよ」 「まあ、好きにすればいい。当人たちには自分たちしか映っていないのだろうさ。恋は盲目といったところか」 「あんたに恋とか似合わないわ」 「ふん。大きなお世話さ」 「ちょっと、京君。女の子にはもっと優しい言葉使いをしなさいよ」 「……日向、君もいいかげんやかましいね」 「やかましくないよ、京君をちょっとは真人間にしたいだけ。お姉ちゃんって呼んでくれてもいいのよ?」 「結構だ」 そう言って、京介はコーヒーをすする。 「ふむ。確かに町の喫茶店よりはおいしいかもしれないね」 「京君、コーヒーの味なんてわかるの?」 「匂いの強さと、苦いか甘いかくらいわかるさ」 「いつもコンビニ弁当しか食べてないのに?」 「料理はできる人間がすればいい。他の仕事も同様だ。できない人間が努力をするよりはるかに手早く、効率的だ」 「そういうものでもないと思うけど。それに、京君は私が作ったお料理、あんまり食べてくれないじゃない」 「それはきっと恥ずかしいんじゃないかな」 流人の言った言葉に、京介は眉をひそめる。 「笹森流人。どういうつもりだ」 「思ったことを言っているだけだよ。ずっと弟であることを隠していたんでしょ? そういう後ろめたさもあるかもしれないけどね」 「流人、あんまり言うと京介がキレるでしょ。というか、あんたはうしろめたさとかないわけ?」 「有沢さんは気付いてくれたし」 「う〜……。私はぜんぜん気付かなかった……」 「そりゃ脳みそまで筋肉が詰まっているような人と一緒にされたくはないけど」 「なッ……!? わ、私だってちょっとは考えてるし!」 「日向、やめておけ。有沢光子が相手じゃ分が悪い」 「そんな!? 京君まで!?」 戦闘では四人のうち最強を誇る日向雪乃も、性格と口の悪さでは勝ち目などない。 「あはは、雪乃もかなわないわねぇ」 「ケイ。あまり笑えないわ」 「え? なんで?」 「……」 「……アンジェラ。君も部下には恵まれていないね」 「いえ、私はとても恵まれているわ」 「見解の相違か」 「求めるものの違いよ」 「なるほどね」 「……? アンジェラと京君は何を言ってるの?」 「さあ? 光子、わかる?」 「名前で呼ばないで。まあ、お互い不満はないのだから、いいんじゃないの」 「そうだね。人と人のつながりは利便性だけじゃないしね」 ミルクティーをすする流人と、カップを洗う光子。そんな二人を横目に、日向とケイは首をかしげていた。 会場を見て回っていたアンジェラとケイ。 そのうち、アンジェラが足を止めた。 チリン―― 小さく鈴が鳴り、アンジェラは頷く。 「ちょっと、アンジェラ。どうしたの?」 「助けてと聞こえたわ」 「は? 助けて……?」 きょろきょろと見渡す。目の前にはタワーのごとき巨大なケーキ。その後ろを覗くと、女子の一団がいた。 「何してんの、そんなとこで」 「あ、ケイ」 エリア・クリスティ、レイチェル・ライラック、マリナ・チェストナット。三人もの女子が揃ってケーキを見上げている。 「いやね、ケーキを切り分けようと思ったのよ」 「そしたらナイフがないってことになったわけ」 「で、レイチェルにちょっとナイフ作ってって頼んだんだけど」 「あたし、今日はチューナー持ってきてないもん。錬金なんか使えないわ」 エリアとレイチェルが交互に説明を果たす。そして、最後に注目を集めたのがマリナ。 「そこで、ちょうど剣を持っていたマリナに頼もうと思って」 「剣でいいわけ? というか、その剣って……」 マリナが持っているのは黒の聖剣。もちろんその剣は、 「……レオンが助けてと言っているわね」 「あ、やっぱし」 レオン・フェイバー。マリナの弟子にしてパートナーであり、現在は剣の中に人格を宿している。もっとも、ただの剣なので口がない以上、マリナ以外と意思の疎通をするのは難しい。ここが彼の支配するゲーム空間であったなら、まだ勝手は違うのだろうが。 「だから、敵を斬るのもケーキ斬るのも一緒でしょって言ってるんだけど」 「いやあ、だいぶ違うでしょ……」 そもそも剣で食べ物を斬ることに違和感はないのだろうか。もちろんない。なんだかんだと言ってもマリナは旅がらす、エリアは細かいことを気にしておらず、レイチェルは食べられればなんでもいいらしい。 「あ、そういえばアンジェラはレオンの声が聞こえるのね」 「ええ。意志があるのであれば」 もちろん意志はあり反抗しているのだが、しょせんは剣。マリナには逆らえない。そこで助けを求めたのだろう。 「うーん、そう言ってもね。他に刃物ないし?」 「あたしが斬ろうか?」 「ケイが斬ると存在が消失しそうだからダメ」 「て、手加減するわよ!」 わいのわいの言っていると、 「お、どうしたんだい?」 「あ、恵美! ちょうどいいところに!」 八雲恵美とアメリア・ラッセル。いずれも人ならざる力を有する、PMCの要員だ。 「恵美、あんた刀を持ってるでしょ。それでケーキを切り分けなさいよ」 「刀はあるけど……、これでいいのかい?」 「とことんガサツね。崩壊世界ではないのだから、包丁のひとつくらい用意できないの?」 嘆息する金髪少女に、皆が顔を見合わせる。 「そうは言ってもねぇ。料理はどこかから出てくるからいいけど」 「皿とフォークくらいならあるんじゃない?」 「フォークでケーキは斬れないでしょ。そもそもこの大きさなんだし、普通のナイフじゃ無理だし。やっぱりレオン君……」 「嫌がっているわよ?」 剣としての矜持か。レオンはどうもケーキを切ることに抵抗がある様子。 「じゃあ、やっぱりボクが……」 「やめなさい、エミ。刀で食べ物を切るなんて」 「変種は切っているじゃないか」 「そういう問題じゃないでしょう」 形式か現実か。激論をかわす面々。そこに、 「ふふん、お困りのようね!」 ばばーん、と登場したポニーテル。その手には結婚式でも開くのかと言わんばかりの巨大ナイフ。 「ヒーローは遅れて登場するもの! ここはナミちゃんにお任せよ!」 「ナミさん、ナイフを持ったまま隠れると言いだしたのはそういうことだったんですね……」 ポケモンシリーズのナミ・リュウザキと白衣の青年・ショウだ。 「あんたがナイフを隠してたの?」 「もちろん! これで注目度ばつぐんでしょう!」 「単に迷惑なだけじゃないですか」 「確かに。迷惑なのはレイチェルだけで十分よねぇ」 「あたしが! いつ! 迷惑かけたか! てか命がけで手伝った友達に言うことなのそれ!?」 「ナイフだけ隠しても、レオン君やボクの刀が残っていたら意味がなかったと思うけど……」 「剣でケーキを切ろうとする馬鹿はエミとマリナくらいでしょう」 「二人もいるじゃないか」 「……まずは自分のやろうとしたことに疑問を持ちなさいよ」 「ふふーん! さあ、ケーキ入刀! とうっ!」 思い切り跳びあがったナミは、そのままナイフを振り下ろす。見上げるほどの巨大ケーキが、まっすぐ二等分される。 「ふう。働いたわー」 「あの、ナミさん。二つにわけただけじゃ意味ないんじゃ」 「一番目立つところやりたかっただけだし」 「正直ですね……」 はい、と渡されたケーキナイフを、恵美が振るい、一人分のケーキが量産されていく。 その頃には、方々でケンカもといじゃれ合いをしていた面々も中心へと集まってきていた。 「さて、そろそろ挨拶ね。誰がするの?」 「このメンツで代表ってんだったら、やっぱお前らじゃねえの?」 「まあ、アンジェラが適任よね」 「他のメンバーだと誰がやってもカド立ちそうだしなー」 「僕でなければ誰でも構わないが」 「誰も京介なんかに頼みゃしないわよーだ」 「ちょっとリナ、もう少し淑女らしく……」 「あはは、リナが淑女だってぐえっ」 「聡、あんたそのバカ少しは治しなさいよ」 わいのわいのと言う中で、ケイはかたわらに立つ上司を見やる。 「ですって、アンジェラ。はい、グラス」 「……何を言えばいいのかしら?」 「思ったことでいいんじゃない? たぶん」 ワイングラスを渡されたアンジェラは、檀となっていた上座に立つ。 そこからは、全員の顔が見渡せた。みな、楽しげに笑っている。 「……そうね。十年。皆、多様に生き、それぞれが欲したものを手にした。順風満帆とはいかずとも」 だからこそ、アンジェラ・ウェーバーは、笑うことができる。 「まずはこの十年への感謝と祝福を。そして、どこまでも続く道筋を願って。共に逝きましょう」 「そんじゃあみんなグラスを持って! 持ってるわよね? ほら、アンジェラもグラスを掲げて」 人間の慣習を知らぬアンジェラの横で、ケイがサポートする。めいめいグラスを手に、軽く持ち上げ。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「乾杯ッ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 |
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はい、ということで10周年です。 ここまで続くことを特に考えてはおりませんでしたが、なぜか継続はしております。 じゃあ20年やるのかとか、そういうことは特に考えておりませんが、とりあえずは来週の更新なんて考えつつ、書きたいものを書く、このスタンスは変わらず続いていくものかと思います。 では、またいずこかで。 焔嵐 |