「芸術の冬だ! チキチキ雪像作りたいかーい!!」
 わーとかぎゃーとか。雪原にいろいろな声が響き渡る。
 ここは焔的超越空間。やたらと集まっているのは主人公ズ。
 中でもお祭り好きな『ジャック』のリナと、『ロード』の聡が壇上で声を張る。
「今回はこの雪原で、チームに分かれて雪像作りにチャレンジ! テーマはこの時期に沿って、クリスマス! 最優秀賞を取ったチームには、リナちゃんから特別な賞品が贈られます! みんな、全力で頑張るんだぞー!」
「みんなわかってると思うけどなー、リナがこういう顔するときってぜってーろくでもないこと考えてるときだから。賞品もどうせろくなもんじゃなぐふっ」
「はーい、じゃあ司会者が一名撃沈したところで!! 雪像作り、スタート!!」
 おーとかわーとか、なんとも冷え冷えしたコールが続いた。

〜でもって〜


「さーて、そろそろみんな出来た頃かな?」
「今さらだけど、こんな一瞬で出来るってどういう連中だよ……」
「そこはそれ、ほら、まあみんな各世界の主人公クラスだし?」
「まあいいけどよ。で、最初はどのチームだ?」
「あー、聡! こっちこっち!」
 手を振っていたのは、『竜神』の橋本ヒカル。チームメイトには、『ヘルメス』の雨雲京介と、『なみだ』のカズマ=クライフォードがいる。
「うちのチームはクリスマスを知っているやつが二人もいるからな、断然有利だぜ!」
「知っているだけでどうにかなるなら苦労はないと思うが?」
「まあ完成したんだからいいんじゃねえの」
 胸を張るヒカルの後ろには、なるほど、完成品らしい雪像がどーんと構えていた。
 構えてはいた、が。
「何これ、農家のおっさんと牛?」
「サンタとトナカイに決まってんだろ!!」
「トナカイ? あー、あれ角か……」
 聡が首を傾げるのも無理はなかった。
 トナカイにしては足が太く、胴体はさらに太い。角は短くて耳にしか見えず、顔はブサイク。
 隣にいる人物像が大きな荷物を抱えていることもあいまって、農家のおっさんが牛の世話をしているようにしか見えない。
「これでも頑張ったんだぞ!」
「ただなー、足を細くすると、重さを支えられないんだよなー」
「だから座像にすべきだと言ったんだ」
「だって立ってなきゃトナカイっぽくねーじゃん!?」
 他にも方法はいくらでもあったように思うが。
「まあ、完成しているだけ上出来だな」
「ボーダーラインが低い!!」
「そうは言っても、メンバーに無理がある。僕は芸術家ではないし、カズマは暗殺者、君はただの高校生兼テロリストだろう」
「テロじゃねえよ!?」
「じゃあ革命の使徒だ」
「竜神の使徒だから!!」
「はいはい。喧嘩ならよそでやってねー」
「それをお前が言うのか、リナ」

〜次はどうした〜


「クリスマスを知っているからこそ、狙いすぎたんかなー、さっきの連中」
「じゃあ次はクリスマスと縁のないチームならいいんでしょ。ほら、あのチーム」
 リナが指したチームは、『幻想騎士』のグレイス、『勇者育成』のマリナ、『それでも』のエリアが揃う女性パーティ。
 できたものは、巨大な円筒。
「……何これ」
「お、リナか。見ればわかるだろ、これ」
「見てわかんないから首かしげているんだけど」
「クリスマスっていまだによくわかってねえけどさ、いつもリナがケーキ云々って言ってたから、ケーキにした」
「ちゃんと上にロウソクも立てたわよ」
「なにげに綺麗な円形って難しいよねぇ」
 ロウソクが立つのはクリスマスというよりは誕生日だろうし、何より大きすぎて、下から見上げれば巨大な塔にしか見えない。
「これは評価に困るわね」
「まあさっきの連中よりはマシか?」
「さっきのって、京介のチーム? あのチームは二人で作ってるみたいなものだし、当然でしょ。京介は口ばっかりだし」
「聞こえてるぞ!」
 横から声が飛んで来るが気にしない。
 まあ実際、京介が手を出したからって、そんなに変わるわけでもあるまい。彼の身体能力は一般人並だ。
「で、これなら優勝か?」
「他次第だけど、まあ無理じゃない?」
「やっぱりチキンも用意すべきだったか」
「たぶんそういう問題じゃないから」

〜そんでもってお次は〜


 女性チームから離れてえっちらおっちら、次のチームは男性チーム。
 『神様のお願い』から黒崎、『あたりまえの幸福』から久住、『ふらわー』からはフレーゼ。
 全体的におとなしめのメンバー、リーダー不在……もとい、一応は久住優希らしい。 
 できた雪像は、わかりやすくモミの木のようだ。ただ……。
「ちっさいな、おい」
 サイズはミニマム。5歳児の背丈よりも低い。間違って蹴飛ばしたら吹き飛ぶレベルだ。
「せめてこう、雪像っていうくらいだし、もう少しサイズ感をだな」
「しょ、しょうがないじゃない。みんな力仕事は苦手だし、それに、レギュレーションにも違反していないし」
「まあ、それはそうね。奇をてらわず、堅実ってわけか。このメンバーらしいけど、面白くないわ」
「面白さを求めていないんだってば。だいたい、雪になれているわけでもない都内組だけで雪像が作れるわけないでしょ」
「フレーゼがいるじゃんか」
「す、すみません……。お役に立てなくて。せめてモルスが使えればよかったんですけど」
「んなもん持ってきたら邪魔だ。で、後ろでプルプルしているのは?」
「黒崎さんなら筋肉痛で……」
 なにせ、元とはいえど引きこもり。運動神経は女子にも劣る。
「え、じゃあなに、こんなちっこい雪像を作るだけで、そんな死にかけてんの?」
「しょうもな。運動神経が腐ってるんじゃないの?」
「面目、ない」
 リナに返しながら、プルプルと立ち上がる黒崎。その姿を見た聡は、
「アル中?」
「むしろヤク中に見える」
「どちらも。違う」
 当たり前です。

〜それからどったの〜


 次のチームは、一般人チームから少し離れたところに展開していた。
「ここのチームリーダーは誰?」
「オレだよ」
 ばさっ、と空から現れたのは、妖怪でもある『あやかし』の烏丸太陽。
「ここは人外チームか」
 他のメンバーはといえば、『夜空』のアンジェラ、それに『紋章』のヴァルゴ。
「ヴァルゴは人だけれど」
「数百年も生きられるやつがただの人間か?」
「存在の定義に対する問題ね」
「いい、アンジェラ。俺は気にしない」
 本人に言われては仕方ない。
 それよりも、と雪像に目を向ける。こちらは先ほどの一般人グループとは違い、ちゃんとした大きな雪像だった。ただ、モチーフには疑問が残る。
 でーんと構える少女像。長い髪に、ワンピース。その表情は儚く、ありていに言ってどっかで見たことのある顔。
「なんかこれ、アンジェラの像に見えるんだけど」
「私ではないわ。マリアよ」
「見た目は一緒だろうが。てかなんでマリア」
 マリアといえば、アンジェラを生み出した、アンジェラのそっくりさん。少なくてもクリスマスとは関係ない。そう思って問い掛けると、
「クリスマスのモチーフといえば神そのものでしょう。とはいえ、ユダヤ教の神は偶像崇拝を禁じているし、何より私たちの神ではないわ。そこで、私を生み出した神的存在の像にしたの」
「おい太陽。なんで抵抗しない」
「いやー、モチーフは思いつくけど、ヴァルゴに説明するのめんどいじゃん? その点、マリアモチーフなら題材目の前だし。楽じゃん?」
「俺はわからないから、従ったんだが。違うのか?」
「……アンジェラもたまにぶっとんでるよなー」
「あ、現実逃避したわね」
 まあ、モチーフはともかく、出来は悪くない。というか、人間ではないメンバーばかりの時点で、スタートラインからして違うかもしれない。

〜他のグループでは〜


「このグループはぁ、あれか。リーダーは?」
「私だよっ」
 ぴょん、と出たのは『異葉』の源。他に、『ポケモンシリーズ』からナミの方が、『神代』からは恵美の方が来ている。
「ここも女子グループか。つっても、さっきの女子力壊滅メンバーよりはマシかぁ?」
「出来たもの次第だけど。何を作ったわけ?」
「じゃーん。これでーす!」
 源が指し示したのは、長靴だった。靴の縁から、ステッキだのリボンだのがはみ出している。
「お、おう。というかこれ雪か?」
「もちろん! 私とナミちゃんで雪を四角く固めて、恵美ちゃんに斬ってもらったの!」
「そういう作り方なのか!? 逆にすげえ!!」
「ボクの刀なら、このくらい余裕だね!」
 えへんと胸を張る恵美。とはいえ、彼女の刀さばきは人間業ではない。
「この丸いのとか、どうやって作ってんだよ……。ばけもんか」
「なんかこう、勘で」
「天才肌は違うわよねぇ。こちとら努力の人だってのに」
「そういう次元かこれ」
 まさに異次元の能力。とはいえ、彼女の場合はそれが適切とも言える。
「ふふん!! 優勝はこのナミ様がいただきよ!!」
「お前は雪を固めただけじゃねえの?」
「ふんっ!!」
「ぐふっ!!」
 雪に埋もれた聡のうえから、さらに雪を被せる容赦のないナミ。
「あの。リナちゃん、あれ止めなくていいの?」
「大丈夫じゃない? あいつも天才だから」
「そういう問題じゃねえええええええええ!!」

〜次でラスト〜


 残るメンバーのところに向かう聡とリナ。そこで待っていたメンバーが、深々と嘆息する。
「あー、やっと来たわね」
 『世界一不幸』な有沢光子、『おぼえがき』の古木作也、『幾度死んでも叶えたい夢』のヴァン・レクサス。
 男女混合メンバーが作った作品は、二人の男女。
「して、その心は」
「……」
 顔を赤くし、そっぽを向く光子。かわりに、何も考えていないヴァンが答える。
「それ、カップルがテーマなんだってよ」
「あ、こら!」
「なんだよ。言わなきゃ仕方ないだろ、事実なんだから」
「そ、それはそうだけど……、むう」
「なんかゲロ甘な匂いがするな。なんでカップルになったんだ?」
 小首をかしげる聡に、作也が応じる。
「もともと、ヴァン君はクリスマスをよくわかっていなかったし、モミとかサンタも地球の文化でしょ? 世界が違うヴァン君に説明するの大変だから、どこの世界でも通じるクリスマスっぽいモチーフってことで、カップルにしてみたんだ」
「なるほどなー。んで、リナ審査委員長、結果は?」
 すでに聞くまでもない気がしていたが、声をかける聡。隣には、リナの姿などすでになく、魔人だけが鎮座していた。
「ふふふふふ。クリスマスといえば、誰か一組くらいはこういうことすると思っていたわよ。思っていたともさ!!」
 バン、と両手を合わせる。生まれる炎の矢。
「マヌケ発見! ましてやあんたら三人とも彼氏彼女持ち! 優勝賞品の滅殺よ!!」
「ちょっ!?」
「やめなさい、あたしら一般人よ!!」
「アルウェズいねえと転移もできねーしなー。逃げるか!」
「逃がすか!」
 炎の矢を放つリナと、身体能力は人間並のはずなのにかわしまくるヴァン・レクサス。本当にどうなっているんだ彼。
「あー、まあ、絶対こうなると思ったよなぁ。おーい、みんなー」
 ぞろぞろと集まる他のメンバー。そんな彼らに、
「本当の賞品はこっちなー、クリスマスっぽく、イチゴと抹茶で作ったツートンカラーのケーキ。優勝チームは、異次元の雪像を作った、恵美・愛梨・ナミチーム!!」
 わー、と拍手が贈られる。賞品のホールケーキを受けとった恵美と愛梨は、互いに顔を見合わせ、
「うん、やっぱりこうだね」
 刀を取り出すと、スパッ、とそれを20等分に切り分けた。
「うおっ!?」
「せっかくの美味しそうな食べ物だもの」
「みんなで食べた方が絶対に美味しいよ!」
 にこっと笑う愛梨と恵美。その後ろで、
「ちょっ、せっかく優勝したのにむぐぐ」
「はいはーい、ナミちゃん、せっかく良い子が良いこと言ってるんだから、邪魔しないでねー」
 エリアに取り押さえられる。
 一方で恵美と愛梨は、惜しみ無くケーキをみんなに配っていく。
「あー、やっぱこういう二人の方がモテるよなぁ」
 ぽつりと呟く聡の視線の先には、じゃれあうヴァンとリナの姿があった。



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