「なんかいつもと雰囲気違くない?」
 そう切り出したのは、『ジャック』のリナだった。答えるのは『ロード』の村野聡。
「そら新しい場所だからだろ」
「新しいって?」
「焔色があったジオシティーズって世界サーバーが閉鎖されるらしくてなー、一緒に焔色も潰れちまうところだったんだと。で、この新しい場所に移ったんだって。えーと、なんてったっけ?」
「エクスリア」
「そうそう、エクスリア」
 『竜神』のヒカルが捕捉し、説明が終わる。聡が口をつぐむと、ぷるぷる震えるリナが一人。二人もいらんが。
「何それ!! そんなのあたしぜんっぜん聞いてないんだけど!!」
「だからトップページに書いてあるだろー。名付けて、新・焔色の夕凪」
「一応、前のところから自動的にテレポートするみたいだし」
「期限あるみたいよ、あれ」
「ええい! そういうことを言っているんじゃない!! というか新って何よ次に移転したら新新とかになるわけ!?」
「その時は、改とかフルとか、メガとか、スーパーとか、いっそ零式というのも……」
「ロボットみたいだね」
 オタクっぽい『お願い』の黒崎と、ロボ乗りである『ふらわー』のフレーゼが言い合う。もっとも、フレーゼが乗っているロボットは、新技術で改とか出てくるタイプではなく、どっちかいうとスーパー系だが。
「そういえばシリーズ物のゲームだと、2って付けたりするよね。焔色2? まあポケモンは2って噂されながら、結局付かなかったけど……」
「だが。ナンバリングされている方が、分かりやすい」
「そう、そうだよね。でもナンバリングが続くと、それはそれで、シリーズっぽくないって言われたりするのかな」
「ドラクエやFFは常にその狭間で悩んでいる。新しいものに挑戦すると、どうしても既存ファンとの乖離かいりが大きくなる……」
「ああ、あるよねぇ」
 『ポケモンシリーズ』のショウも混じり、オタク談義に花が咲く。彼らは彼らでほっておくとして。
 一方で聡は嘆息し、リナに言う。
「じゃあ何だよ、移転するのに相談がなかったってか? まあ世界は色々と選択の余地があったろうけど……」
「そうじゃなく! あたしの許可なく前の世界を潰そうってあたりよ!」
「そっちかよ。そんなんどうにもならねえだろうが」
「だって聞いてないし!」
「子供か。だいたい、前から告知出てたぞ」
「読んでないし!!」
「だから子供かと」
「他のメンバーは目を通してたわよー。ねえ?」
 声をかけたのは『それでも』のエリア。対して、それぞれ答える。
「僕は見ていたが」
「私も一応」
「あたしも読んだわ」
「ボクは見ていないよ!!」
 『ヘルメス』の雨雲、『勇者育成』のマリナ、『世界一不幸』の有沢、そして『神代』の八雲。四人の答えにリナは頷き、
「ほら! 恵美も知らないって!」
「その前の三人をスルーすんな」
「だっておかしいじゃないマリナなんか脳筋組でしょ!?」
「失礼ね……。ソロで冒険してるんだから、そのくらいの慎重さないと死ぬでしょうが。普通に」
「正論は聞いてないわよ」
「……めんどくさい奴ね」
 そこで、果敢にも『あやかし』の烏丸太陽が手を挙げる。
「でもよ、実際、引っ越して何か問題あるのか? こっちにゃ何の変化もねえだろ?」
 応じたのは『なみだ』のカズマ。
「確かに、飯も普通に出るし、雨風をしのげる場所もあるな」
「それが基準ってどうなのよ」
「暗殺やってるとそんなもんだぞ。冒険組もそうじゃねえか? ヴァルゴ」
 問われた寡黙な男・『紋章』のヴァルゴは、ひとつ頷く。
「まあ、外で雨風をしのげる場所は少ないな」
「だろ。ほら、立派だ」
「焔色に! 雨風は関係ない!!」
「焔色というか……、ホームページにサーバーなんか関係ないというか、どこでもいいんじゃ……」
 ぼそりと呟いたのは『あたりまえ』の優希。隣に座る『おぼえがき』の作也も、
「編集する側は色々と操作性とかあるかもしれないけどね。閲覧する側からすれば、広告の種類と出方くらいじゃないかな?」
「編集する側の操作性も、慣れるまでは大変だろうけど、慣れちゃえば良いとこ悪いとこってあるよね?」
「そうだね。一長一短とは言うけれど、どちらか一方が明確に優れているっていうことは普通、少ない。良いことがあり、悪いところがあるものだね」
「だから、正論はいらないって言ってるのよ、理解してる? というかメタいわ現代人ども」
「リナも現代に近いでしょ」
「はーい。じゃあリナは、どうしたいの?」
 問いかけたのは、『異葉』の愛梨。続けて『幻想』のグレイスも、
「場所にはリナも不満ないんだよな。ってことは、どこでもいいんだろ? なら納得すりゃいいよな」
 それに対するリナは、
「うんまあ、移転そのものには特に不満ない。新しい場所でもこうして楽しんでいられるし、ごはんは美味しいし。移転するって事実は、まあ、あたしは知らなかったけど、事前に告知があったから移転できてるんだろうし」
「じゃあ何が問題なんだよ」
「ぶっちゃけ、素直にはいそうですかと頷いたら女がすたるというか」
「……ただのいちゃもんか!?」
「そうよ! 何か悪い!?」
「うわ開き直った! サイテーだ!」
「おー? おおー? 言ったな! 言ったね! リナちゃんに暴言吐いたね! ようし喧嘩だ喧嘩ぁ!」
「だから!! 喧嘩するのやめろ!! 一般人いるんだから!!」
「避ければいいんだろー?」
「お前は一般人枠に含めん!!」
 なぜか生身でもリナの攻撃を平気でかわす『幾度死んでも』のヴァン・レクサス。体は一般人のはずなのだが、やはり勘が違うのか。
 ある意味でいつも通り、炎矢が飛び交うさまを眺めながら、『夜空』のアンジェラ・ウェーバーは言う。
「住めば都、ね。人間は、面白いことを言うものだわ」
「住所がないアンジェラがそれ言うんだ……」
 同じく住所不定(移動し続けるため)なフレーゼは苦笑を浮かべた。自分もそうなので、住めば都とは言えない。
 とはいえ、新しい場所でも、メンバーが変わらぬ以上、結局は同じようなことの繰り返しで。
 それこそが、平和というものなのかもしれない。

 というわけで、移転しても、焔色は通常営業なのである。





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