クリスマスである。
 今日は焔メンバーの中でも比較的新人に位置するみんなを呼んでの食事会、ではあった。
 だが開始早々、美空は空を眺める。
「神様は死んだのよ」
「いきなりどうしたのよ美空」
「だって神様が生きていたら清く正しく生きる妖怪がこんな悪夢の宴に呼ばれるわけないもの」
「清く正しく生きてないでしょあなた。というか、そんなに悪いことしてなくない? ただご飯食べようって言っただけでしょ」
「それは!! 食べ物を!! 出してから言え!!」
 テーブルに並んでいるのはリナの作ったクリスマス特別メニュー。つまるところ推して知るべし。
「あんた料理するならせめて味見しなさい! 狐だってそのくらいするわよ!」
「味見したら量減っちゃうし」
「誤差だわ!!」
「あ、あの、美空さん。そんなに叫ばないでも……」
 激昂する美空を引き留めたのは、武闘家アディー・ヒーリ。
「それにこの黒いチキン……。いや、ポークかな……? と、とりあえず食べても死なないようですから」
「それはあんたが闇を食べなれているからでしょうが。ちょっとパワーチャージできちゃってるでしょうが」
「これモンスターと同じ性質なのか? ヤバいな……」
 フォークでローストビーフ(と近しい何か)を拾って眺めるアルフォンス。びっくりするほど美味しそうじゃない。
「なにおー。今回はこのリナちゃんひとりで料理を頑張ったのよ? 偉くない?」
「偉くない。偉かったら料理しようとか思わない」
「……そこだよ」
 ふと、フォークを止めたアルフォンスは言う。
「リナの料理が不味いのは周知だけどさ」
「リナちゃんは初耳だぞ?」
「いや頻繁に言ってるわ。じゃなくて、ただ単純に不味いだけで食べ物だ。それなら、食べ物じゃない料理を作るやつのほうがヤバくないか?」
「それ料理じゃないわ。というか、そんなやついないでしょ」
「どうだろうな? みんな言わないだけで、実はシチュー作ったらローパーが生まれるとかいうやつもいるんじゃねーの」
「質量くらい保存しろ! というかそれあんたんとこの魔王じゃないでしょうね!?」
「うちの元魔王はパンツがダサいだけで料理はしないから大丈夫だよ」
「メイドいたしね……」
「コハルも自分で料理するよね」
「え? ああ、まあ。多少だけど」
「……ここ男子の方が女子力高いんだよね」
「まあ女子勢の女子力が低すぎるというのでもあるけど」
「す、すみません……」
「アディーは冒険力が高いんだからよくない?」
 話を黙って聞いていたリナは、ふむ、と頷く。
「そこまで言うなら、みんなにもクリスマス料理を作ってもらおうじゃない!」
「え?」
「あたしの料理に不満があるんでしょ? ならあたしよりうまく作れた人が優勝で!」
「それ楽勝じゃない?」
「シャラップピーポー」

   〜でもって〜

「ということで、アディー、アルフォンス、コハル、美空に料理をしてもらいました〜」
 ずらりと並んだ料理。
「テーマはクリスマス料理! クリスマスのない世界な人の方が多いけど気にしないとして、最初はアディーちゃん!」
「あ、はい」
 アディーが出したのはチキンらしきもの。
 焼けてはいるが焼いてあるだけ。
「……まあ余計なことしないのは評価じゃない?」
「えっと、これに市販のソースつけて食べるだけでも美味しいんです、よ。あとはこれとか」
 アディーは薄いパンのようなものを出し、
「挟んで食べると美味しいんです。このパンは保存食なので、冒険中の携帯食にも用いられます」
「へえ」
 ぱくりと食べる。パンに塩味が効いているので、ソースがなくても十分に肉の旨味は感じられる。
「なるほど、悪くない」
「ぐぬ……。陰キャラだからすごいの出すかと思ったのに」
「お前な……。というか陽キャじゃないだけでアディーは普通に生活力高いぞ。基本人生がソロだし」
「ま、まあいいわ! 次はアルフォンス! あんたなんかただの生意気クソガキだし料理なんて」
「ほいポテトサラダ」
「料理じゃん!?」
「料理ってほどのもんかよ……。まあクリスマスっぽいかと言われると疑問かもしれねーけど、芋とマヨと野菜で作れるしな」
「料理人みたいなことを!?」
「混ぜるだけなのに料理って言うほどじゃねーっての……」
「うぐぐぐ! 次コハル!」
「はいケーキ。手作り」
「手作りケーキとか女子か!?」
「だってこういうの出さないとヴィナ怒るし……」
「どうなってるんだこの空間……。ならラスト! 美空!」
「……」
 そこでぴたりと空気が止まる。
「あれれ〜? 美空ちゃん、どうしたのかしら〜?」
「う、うるさい。料理は狐の担当だからいいのよ」
 どん、とテーブルに乗ったのは、普通なら立食パーティーで出るようなサンドイッチとおぼしきもの。
 パンを切って具材を挟むだけなのだが、はたしてこれ何を挟んだのか。なぜかうごめいている。
「……生命誕生した?」
「んなアホな。だって切ったんだろ?」
「私はね、霊力が強いのよ。その気がなくても霊気を分けちゃうことがある」
「で?」
「もとは妖怪だったはずなんだけど……」
「いや妖怪食わそうとしたのかよ」
「霊力を受けて蘇ったかも」
「……ちなみにもとにした妖怪は?」
「こだまねずみ」
「ってそれ、爆発する妖怪……!」


 ーーちゅどーん!!


「おい、どうするんだこれ」
「ちょうどリナも気絶したしいいんじゃない?」
「さすがアルスと美空、防御の発動が早いよね」
「ってそういう問題かっ!?」
「まあまあ。いわゆるひとつの爆発オチ?」
「仕方ないわね」
「美空……。お前もしかしてわざとじゃ」
「気のせいよ」







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