■実力者の集い

ポケギアに連絡が入ったのは、ショウがコガネシティを離れて、ちょうど一ヶ月が経過した時だった。

かかってきたのは夜。ショウがそろそろ横になろうとした頃である。ポケギアのディスプレイにはナミの名前が出ている。

「はい」

通話状態にし、ショウは短く声を出した。

「あ〜、ショウ?」

「ナミさん、何ですか?こんな時間に」

「ちょっと分かった事があるの。そっちの都合がつくなら、一度こっちに戻ってくれない?」

「分かった事、ですか?分かりました。明日にでも戻ります」

「ありがとう。お願いね」

短い会話である。事務的で、必要な話しかしない。それは、ふたりにだけ通ずる心のやり取り。

電話を切り、ショウは浅い眠りへと落ちていく――。



久しぶりのコガネシティは、どこにも変わりがなかった。賑やかな町並、街道を歩く人々、天高くそびえる建物の数々。この町は日々変わっていて、

しかし全く変化がない。

ショウは真っ直ぐコガネジムに来た。インターホンを鳴らすと、直接アカネが出た。

「ショウはん!待ってたで」

「お久しぶりです」

笑顔を見せつつショウはジムの中に入った。すぐに奥の居間まで通される。

そこにはすでにナミが座って待っていた。

「ショウ。ようやく動いてくれたわよ」

ショウの顔を見るなりナミは怪しい笑みを浮かべた。ショウの経験上、ナミがこの笑顔を浮かべた時はよくない事が起きる前触れだ。

過去の事例では、ナミをからかった少年がボコボコにされたり、弱い者いじめをしていた少年がナミを見るだけでおびえて逃げるくらいのトラウマを植

え付けられたりしている。

今回もナミはハザマにいろいろとやられている。倍返しで済めば平和的だ。

「ナミさん。何が起きたんですか?」

「まずはこれ、見て」

ナミは一枚の紙切れをショウに渡した。

見ればそれは何かの文書。印刷されている紋からポケモン協会の公式文書である事が分かる。

『ジムリーダーへの緊急連絡事項。

最近、各地にて黒服の怪しい人間が目撃されており、協会の聞き取り調査の結果、ロケット団の制服を着用していた事が判明しました。

目的等は一切が不明ですが、警察への捜査協力を申し入れました。

関連する可能性のある事項を調査したところ、特にチョウジタウン付近にての目撃事例が多く、また近隣でポケモンの異常減少が認められました。

したがって各地ジムリーダーも情報を得た際には協会へ連絡をお願いします。また、時間的余裕がある方はチョウジジム・ジムリーダーのヤナギ氏

が行っている調査に協力して下さい。』

読み終えたショウは自然な笑みが口の端に浮かんでいた。

「とうとう尻尾を出しましたか」

「せやけど向こうも、制服で動いたらどないな結果を生むか分かってるはずや。簡単にはいかないはずやで」

言いつつも、アカネの顔は明るい。

もともと手掛かりひとつなかったのだ。危険が増そうと、手掛かりがある方がやりやすい。

「ヤナギのおじいちゃんが調査してるから、明日にでも会いに行くわよ」

ナミの言葉に、ショウは深々と頷くのであった――。



チョウジタウン。ジョウト地方の北に位置し、さらにその北には“いかりのみずうみ”という有名な観光地が、東には氷ポケモンが住み着いた洞窟が

ある。小さな町で、高い建物はポケモンセンターとチョウジジムくらいという、田舎である。

ここのジムリーダーはヤナギ。氷ポケモンを扱う老人だ。爺さんと思って甘く見てはいけない。彼はジムリーダーの中でも在任期間が最も長く、その

凍技は永久に溶けない絶対零度を作り出すという。

聞いていると何だか筋肉質のやたらゴツい爺さんを連想したくなるが、実際に会ってみれば背丈はナミよりも小さかった。

「ロケット団の事か。すでに情報は集めてあるよ」

ジムの中で会った老人は開口一番、そう言った。

ジムにはすでに他のジムリーダーも何人か来ていた。

「湖の付近で何人か見かけた人がいた。そこで湖の近くに住んでいる人に聞いてみたら、バッチリだったよ。あの湖に潜るところを見たそうだ」

ショウたちは暖かいココアを飲みつつ話を聞いているが、どうにも寒い。原因はポケモンたちが発している冷気だ。入口の床に至っては凍っていたり

する。これで暖かいはずもない。

だが、ヤナギ老人は半袖である。聞いてみたところ、慣れた者には寒くないそうだ。ショウたちにはイマイチ信じられないが。

「潜るところを?という事は、水中に何かが?」

寒さのためか微妙に震えつつ、ナミが尋ねた。ヤナギ老人は頷き、

「ポケモンたちに探ってもらった。水底に人工物があったそうだ」

「ほな、決まりやな。ソッコーで乗り込んで終わりや!」

意気込むアカネに、しかしヤナギ老人は首を振った。

「今はその時じゃない。相手の規模も分からないし、何よりも包囲するためには人手が足りない」

湖を囲むとなると大変な話だ。だが、今のところ集まったのはショウ・アカネ・ナミと、ミカン。それにワカバタウンの近くにあるキキョウシティのジムリ

ーダー・ハヤトと、チョウジの山向こうにあるフスベシティのジムリーダー・イブキだけ。他のジムリーダーはジョウトを離れていたり、あまりに遠くて迅

速に動けなかったりという理由がある。ミカンとて、ショウたちが迎えに行かなければ出遅れていただろう。

「そうだな。速攻は悪い手ではないが、今は他のリーダーが到着するのを待つべきだ」

発言したのはイブキだ。ドラゴンポケモンを操るフスベの一族の末裔で、実力もかなりのレベルだ。そのイブキのハスキーな声に、アカネは眉をひそ

めた。

「時間を置いたらこっちの動きもバレるで。逃げられたら手が出せへん。早い方がええはずや」

「・・・俺も同感だな。相手がロケット団の残党ならそれほど数も質も揃っていないだろう。目的が何か分かってからでは遅い場合もあるしな」

アカネに賛同したのはハヤトだ。まだ新米のリーダーで、着物を着ている珍しい男である。鳥ポケモンを使うため、今回の集合もいち早く駆けつけら

れた。

「ナミさん、ショウ君、ミカンさん。君たちの意見は?」

ちらりとヤナギ老人はナミたちを見た。

「私は速攻に賛成。今なら戦力を大幅に蓄える余裕はないはずだから」

「あ、あの・・・私は、慎重にすべきだと思います。下手に動いてここの人がやられちゃうと、戦力も半減してしまいますし・・・」

速攻か、様子見か。どちらの意見にも長所と欠点が存在するだけにややこしい。

「俺は、攻めるべきだと思います。相手にはハザマという、ジムリーダークラスの使い手がいます。あいつに時間を与えれば何が起きるかわかりま

せんから」

本当の事を言えば、ショウの手応えではジムリーダー以上に強かった。ただ、それは言わないでおいた。言ったところで相手の強さが変わるわけで

はない。

「ふむ。では、明朝まで他のリーダーを待ち、早朝に湖を調査。ロケット団が関与しているであろう施設を発見したなら調査し、結果によっては破壊

する。それでよろしいかな?」

まとめたヤナギ老人に、ショウたちはそれぞれ頷いた。



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