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■合成式携帯獣
マイトは縛られたまま、ナミを前に語りだす。 「博士・・・この研究所の持ち主は、こう考えたそうです。ポケモンとトレーナーの関係はおかしい、と。ポケモンは飼い主を選べず、自分の意思とは 関係なくムリヤリ捕獲され、しかも戦いの道具にされる。痛い目を見るのはポケモンだけで、トレーナーは全く傷つかない。それで友達だの仲間だの なんて、詭弁に過ぎないって」 ――キベンニスギナイ。 言葉が、ナミの頭の中でぐるぐると回る。 「だったらいっそ、そんな関係を壊そうって研究を始めたらしいです。何の研究なのかはよく知らないんですけど、結果として何体ものキメラ・ポケモン が生まれました。ああ、他のポケモンと合成させたポケモンの事です」 ――カンケイヲコワス。 「博士が最終的に何をしたいのかは分かりませんが、この間、完成形に近いのができたからって・・・。実験のためにそいつを連れて、どこかへ行っ てしまいました。私たちは留守番をしていただけなんですよぅ・・・」 ――ジッケンノタメ。 「ナミさん!どうやらここには誰もいないみたいで、す・・・?」 部屋に入ってきたショウは、ナミの変化を敏感に感じ取った。 「ナミさん。こいつら、何を喋ったんですか?」 ショウはマイトたちを指しつつ、ナミに詰め寄った。 「・・・ポケモンは、オモチャじゃない」 「え?」 ナミの発した小さな声を、ショウは聞き漏らした。そして、聞き返した。それが結果的に、ナミの感情に火をつけた。 「ポケモンはオモチャじゃない!確かにポケモンが望んでトレーナーと一緒にいるわけじゃないかもしれないけど、でも!ポケモンを実験の材料にす るなんて!ポケモンとトレーナーの関係は壊させないから!何よ何よ、ふざけないでッ!あんたらに何がわかってるって言うのよ!何にもわかって いないじゃないのッ!」 「ナミさん!」 ショウに肩を強くつかまれ、ナミはようやく正気を取り戻した。 「え?あ、ああ・・・ショウ。ごめん、ちょっと興奮しすぎた」 「だいたい想像はつきましたけど・・・説明してもらえますか?俺にも」 ナミは頷いて、たった今、マイトから聞き出した話をショウにした。ちなみに、ショウの後ろにはイブキがいるから、正確にはショウとイブキに、だ。 「貴様らぁ・・・!」 イブキがギロリとマイトたちを睨んだ。マイトたちは小さく、ひっと悲鳴を上げる。 「マイト。ひとつ聞きたい」 「・・・何だ?」 ショウにだけはちょっとばかり強気なままのマイトは、反抗的なまなざしを向けた。 「ウツギ博士のところから持ち出した研究資料。あれはどういう意味なんだ?」 「・・・博士が研究していたのは、ポケモンのタマゴだ。そのために、タマゴに関するあらゆる情報が欲しかった。最新のタマゴに関する研究資料と聞 いて、私たちが動いたんだ」 「タマゴ?」 全ての、かどうかはまだ判明していないが、少なくても一部のポケモンはタマゴから生まれる。これにはいくつかの法則があるようだ、というところま でしか研究は進んでいない、まさに未知の分野だ。 「ああ。博士の研究は、合成したポケモンをタマゴから育てる事だ。これならポケモンとトレーナーの関係は、いわば親子。博士の悩み続けた課題を クリアできるという理論らしい」 「・・・じゃあ、ナミさんをさらったのは?」 この質問には、マイトはゆっくりと首を横に振った。 「それは私には分からない。とにかく捕まえてハザマ大幹部の指示を仰げ、と。それしか言われなかったし、それ以上の事は何も知らない」 マイトの言う話の全てをそのまま信じるわけにはいかないだろう。いくらか隠している事や嘘も入り混じっているに違いない。 だが、タマゴに関する部分、そこだけは信じていいと、ショウは考えた。 確かにあの研究資料は、その筋の専門家には面白い内容だが、一般人やロケット団の下っ端に面白い内容ではない。それをわざわざ盗んだの だ。危険を冒してまで。 ここの設備からしても、檻の中のポケモンの姿からしても、キメラ・ポケモンを作ろうとしていた事は間違いない。となれば、それをコントロールするた めにタマゴを利用した可能性は高い。 「本当にハザマや博士の行き先は知らないんだな?」 「ああ。私は、嘘は言っていない」 その言葉そのものが嘘であろうが、そんな事を追及している暇はない。 「ナミさん、イブキさん。すぐに地上に戻りましょう。もしもそんな研究が最終段階なら、急がなきゃ」 「うん、でも・・・こいつらはどうするの?」 ナミはマイトたちを見下ろした。別にここに縛ったまま放置してもいいのだが、何かの拍子に逃げられた日には、後々面倒な事になる。 「私が面倒を看よう」 イブキが一歩前に出ると、腰のムチを取り出した。猛獣使いなどが使うタイプのもので、殺傷能力こそないが、床に叩きつければ大きな音が出る。 イブキは一度だけピシッ!とムチで床を叩き、 「ハクリュー。こいつらを引っ張って水上に出てくれ」 「イブキさんはどうするんですか?」 ショウが聞くのに、イブキはほほえんで答えた。 「君と同じポケモンを使うだけだ」 波ひとつない湖の水面を、3匹のポケモンが打ち破った。トドゼルガと2匹のキングドラである。 遅れてハクリューが縛ったロケット団を連れてきた。ハクリューはそのまま宙に浮かぶ。ハクリューは天候を操り、宙を駆けるという珍しい力を所持し ている。 「ふぅ!ようやく普通の空気が吸えるわね!」 したたる水を振り払い、ナミは笑顔を見せた。 「笑ってる場合じゃないですよ。とりあえず、ヤナギさんたちに合流しないと」 出た場所はちょうど湖の中心辺り。すでに霧は晴れており、暖かな日差しが湖面を照らしている。 「ん・・・?おかしい、な」 キングドラの上に立ち、イブキは周囲を見回した。 本来なら湖から現れたポケモン・トレーナーは全てチェックする手筈だ。だが、湖からショウたちが出現したというのに、誰も来ない。それどころか、 誰もいない。 「何か、あったんですね」 地上に残ったのはジムリーダーが4人。それぞれが高い能力を持っており、簡単に倒される人間ではない。当然ながら、4人とも勝手に役目を放棄 して逃げ帰るような性格でもない。となれば、こんな事が起きた原因は絞られてくる。 「ハザマ、ね。やってくれるじゃない」 「どうやらこいつらは捨て駒だったらしいな」 ジムリーダーを4人も片付ける実力。そんなものを持つ相手は、ハザマ以外に考えられない。あるいはハザマ以外にあれほどの実力を持ったトレー ナーが敵にいるのかもしれないが、少なくてもハザマが戦ったであろう事は想像にかたくない。 「しかし、ジムリーダーが4人もいたんだ。全員がこれだけの時間で倒されたと言うのか?」 「ええ、おそらく。あるいは・・・マイドの言っていた、実験中のキメラ・ポケモンとかいうのを使ったのかもしれませんね」 「・・・マイトだ」 さわやかな風が、湖を駆け抜けた。小さな波が生まれ、すぐに消えていく。 「どう、する」 かすれたイブキの声に、ショウはあっさりと答えた。 「決まってます。探し出して、倒す。それだけです」 |