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■鋼鳥の想い
ここは・・・どこだ?私は一体・・・? ああ、そうか・・・。私はまた負けたのか・・・。 考えてみれば、あやつに捨てられて数年・・・。良い事など何もなかったな。周囲には敵ばかり。明日も分からぬ日々だけが過ぎて・・・結局、何も得 られなかった。 すまない、みんな。最後くらい護ろうと思ったが、それも私には出来ないらしい。弱い私を・・・・許して、くれ・・・・。 パチパチと音がする。これは・・・焚き火の音か? ゆっくりと目を開けてみる。周囲はすっかり暗くなり、目の前には燃え盛る炎だけがあった。 どこにいるか確認しようと体を起こしかけて、激痛で動きが止まった。 「お?目が覚めたか。まだ無理するなよ。ランの拳は並じゃないからな」 声の方に視線を送る。そこにいたのは、人間。ついさっき、自分を倒したはずの・・・人間? 噛み付いてやろうとして、やはり激痛で呻いた。仕方なく、大人しくする事にする。 改めて周囲を見てみると、周りに光る目のようなものがあった。あれは・・・ホーホーにヨルノズク?それに、ポッポやオニスズメ・・・・。 「こいつら、お前の仲間なんだろ?お前が“気絶”したら心配そうに寄って来てさ、お前を庇ったんだよ。お陰でお前の治療に手間取ったぞ?」 よく見ると、この人間はボロボロだ。どうやら、自分の治療をしようと近づいてこの鳥ポケモン達に襲われたらしい。 ・・・・何故、だ?何故、この人間は自分を治療した?倒した相手を? 今まで出会った人間の中に、こんな奴はいなかった。一体、何の目的で助ける? わけが分からぬまま、その夜は更けていった・・・・。 このエアームドは、昔は人間と暮らしていた。だが、捨てられたのだ。理由は彼には分からない。ただ、「捨てられた」という事実だけがあった。それ 以来、野生のポケモンとして彼は辛い日々を送った。 この地に辿り着き、いじめられているポケモン達を救って彼はここのボスとなった。そして、ポケモンの捕獲に来たトレーナーを片っ端から倒してきた のである。 人間は信じられなかった。憎かった。あんなに信頼していたのに。頼ってくれていたと思っていたのに。なのに、なのに――! 翌朝、エアームドが目覚めると目の前に朝食らしいポケモンフーズが置いてあった。顔を上げると、ショウ(エアームドは名を知らないが)が出発の 準備を整えていた。 「ん?目が覚めたか」 ショウはこちらに近づくと、そっと頭をなでた。 「悪いけどさ、俺は忙しいんだ。これからマサラタウンまで行かなきゃいけない。お前の面倒看てやれないんだけど・・・。多分、今日くらいじっとして いれば明日からは普通にしても大丈夫だからさ。それじゃ・・・・」 ショウはエアームドに軽く手を振り、旅立とうとした。それを見て、エアームドは反射的に声を出していた。 「ん?どうかしたか?」 ショウが振り向く。その瞳に、エアームドは自分の想いを伝えようとした。今一度、人間を信じてみたいという想いを・・・。 ショウは近付き、エアームドの額に手をかざした。 「・・・・そう、か。わかった。一緒に行こうか?エアームド」 その言葉に、エアームドは強く頷くのであった。 「そろそろ山道も終わりかな」 エアームドを捕獲し、ショウは山道を抜けかけていた。山道を抜けたところにはポケモンセンターがある。そこで回復できるし、もしかするとこの持ち 主の分からないオニスズメのトレーナーもいるかもしれない。 「お。ポケモンセンターだ」 ちょうど山道を抜けたところにポケモンセンターを見つけた。 ショウが中に入ると、ジョーイがトレーナーらしい少年と話をしていた。センターの管理やポケモンの回復・治療を行なうのがジョーイの仕事である。 何故か、各地のセンターにいる彼女達は同じ顔をしている。(ファンによると、異なる点があるらしいが・・・) 「すみません」 ショウが声をかけると、ジョーイと少年がこちらを向いた。 「あ!僕のオニスズメ!」 いきなり少年はそう叫んだ。どうやら、ショウが抱えているオニスズメのトレーナーだったらしい。 「山道で怪我をしていたんで・・・」 微妙に現実とは異なるセリフを吐きながら、ショウは少年にオニスズメを手渡した。 「ありがとう!エアームドに襲われて、オニスズメとはぐれちゃったんだ」 「見つかって良かったね」 ショウは微笑みながら言うのであった。 「メ〜?」 ポケモンセンターを出て少し。ランはショウを問いかけるように見上げた。 「どうしてエアームドの事を話さなかったのかって言うんだろ?」 ショウはランの横を歩きながら、その意思を汲み取る。付き合いが長いからこそ、ポケモンが何を言いたいのかが分かる。もっとも、ショウは初めて 会ったポケモンとも意思疎通ができるのだが。 「エアームドは悪気があったわけじゃない。ただ、仲間を護ろうとしただけだろ?でも、あの少年にしたらエアームドは悪者だ。無駄に争いをしたって しょうがないからな」 ランは、そんなものかな・・・という表情をした。 「さ。もう少しでマサラタウンだから、頑張ってくれよ」 ショウはランの頭を優しくなでると、その歩調に合わせて歩き続けた。 「もうすぐオーキド研究所が見えるはずだけど・・・と。あれかな?」 高台の上に豪邸と呼んでも差し支えなさそうな建物があった。丘を登る入口となる場所に門があり、インターホンが取り付けられている。 ショウは表札で名前を確認し、インターホンのボタンを押した。遠すぎて鳴っているのか判断しかねる。 少しの間を置いて、意外に若々しい声が聞こえた。 「はい、オーキド研究所ですが。」 「ウツギ研究所で助手をしているショウという者です。オーキド博士にお会いしたいのですが。」 「あ、はい。では申し訳ないのですが、門を開けて中に入って頂けませんか?そこからも見える建物が研究所の本館ですから。」 「わかりました。」 そう返事をすると、それでは、という言葉を残して切れる音がした。 ショウは言われた通りに門を通り、丘を登り始めた。 |