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■復活の意思
クロバット、ゲンガー、ラプラス。3体のポケモンが博士を囲む。 「博士。あなたに戦う力はない。我々に協力するなら生かしておこう。どうする?」 博士はポケモンすら繰り出さない。出したところで勝ち目はない。 「・・・決まっているよ、ハザマ」 博士はニヤリと笑った。 「ワタシは警察に勤めていた頃から何も変わっていない。ワタシが憎むのは常に悪のみ。ちょうど、お前のようなね」 「・・・それは、宣戦布告と思って構わないという事ですね?」 「それは少し違うよ、ハザマ。ワタシは戦わないからね。ワタシにできる事は研究と実験。戦いは分野じゃない。だからワタシから君への宣戦布告で はないよ」 ザッ! 博士にばかり注意のいっていたハザマたちは気付いていなかった。この戦場に、もうひとりトレーナーがいる事を。そしてそのトレーナーは、いかな る状況でも絶対に諦めないという事を。 「キメ・・・!」 「カイ!『ドリルくちばし』!!」 カイの回転が加わった一撃がキメラを弾き飛ばす。 ほとんど同時に、ハザマの体も弾かれた。 「俺たちを、舐めるなよッ!」 火傷だらけの傷だらけ。満身創痍で、すでに戦える状態ではないかもしれない。 しかしそれでも立ち向かう。諦めないと約束した。その約束は、死んでも守る。 「・・・また会ったな。ショウ君」 「会いたかったよ、ハザマ」 ハザマは立ち上がる。カンナとキクコも、ショウに向けて戦闘体制を整えた。 「まさか君がまだ戦えるとはね。意外だよ」 「俺たちは諦めない。どんな状況だって全力で戦う。追い詰められるほど、俺たちは強くなれる!」 「ふん・・・たいしたものだ」 ハザマはバサリとコートを投げ捨てた。 「いいだろう。君が実力以上の力が出せるトレーナーだとわかっている。我々も慢心せず、全力で戦わせて貰おうか!」 「・・・構わないけどね。他のふたりは、もう終わりさ」 「何・・・?」 ボボボンッ! ハザマたちの背後でボールの開閉音が響く。気付き、振り返った時にはもう遅い。 「全力で撃ち込めッ!」 ランの『かみなりパンチ』が、ハイロンの『れいとうビーム』が、ヒノの『かえんほうしゃ』が、キクコとカンナのポケモンたちを襲う。完全に無防備の状 態。通常を超えた威力の一撃が、四天王のポケモンを打ち倒した。 「ぬッ・・・!?」 「ラン!『でんじは』!」 ポケモンを倒されたキクコとカンナに攻撃を防ぐ方法はない。ランの『でんじは』がふたりを麻痺させ、その身体の自由を奪い、ふたりは無言のまま 気絶した。 「さあ、これで一騎打ちだぞ。ハザマ!」 「だから、何だと言うんだ?」 部下を倒され、キメラ以外の手持ちもいない。そんな状況でも、ハザマは余裕があった。 「確かに君は他のいかなるトレーナーよりも強い。それは認めよう。だが、それだけだ。君自身もポケモンたちもすでに満身創痍。戦えるだけでも奇 跡と呼んで差し支えない次元だ。そんなボロボロの状態で、どうやって私を倒すつもりだ?この、無敵のキメラを!」 ハザマの横に、キメラ・ポケモンが降り立つ。最後にして最強の敵。そしてそれを操るのは、最強クラスのトレーナー。しかも、ダメージをほとんど受 けていない。 一方、ショウは4体の手持ちを持ちつつも体力が残っていない。勝ち目はほとんどないままなのだ。 「確かにそいつは凄く強い。だけど・・・ひどく、脆いんだ」 「どういう、事だ」 ショウの近くにポケモンたちが集まる。信頼しあえる仲間。嫌々の主従ではない、心から信じる力を持った友人たち。 「そいつの目を見るだけでわかるよ。そいつは寂しがっている。そして、心の底で疑問を持っている。お前が父と呼ぶにふさわしいかどうかを」 「馬鹿を言うな。個体データにしっかりと私を父と覚えこませてある。DNAの記憶に逆らえる生き物が存在するものか」 「・・・わかってないな」 ショウはそっとポケモンに触れた。優しく、温かく。 「お前はポケモンを道具としか見ていない。いかに父とわかっていても、それが父としてふさわしいかどうかは別だ。そいつはお前のやり方に僅かな がら疑問を感じているんだ。そして、そのせいで迷いが生じている」 「ふん!ハッタリだな」 ハザマはショウの言葉を鼻で笑う。彼には気付けない。ポケモンを生き物として扱わない彼には、絶対に。 「・・・ハザマ。その少年の言う事は本当かもしれないぞ」 博士の言葉に、ハザマは眉をひそめた。 「確かにワタシの研究成果はDNAレベルで記憶を刻み込む。だが、血の繋がりがある父を子が殺す事もあるように、父だからといって絶対の絆に はなりえないのかもしれない」 「こいつがそこまで考えていると?所詮、こいつは道具。道具は何も考えない!こんな程度のポケモンがそこまで考えられるはずがないでしょう!」 「忘れたのか?ワタシは言ったはずだ。そいつの知能レベルは“人間並み”だとな」 「ふん!だからといって、ポケモンがトレーナーに逆らうはずがない!」 ハザマはショウに向き直った。この場で唯一、戦える男に。 「問答はもう止めだ。倒して、それで終いだッ!」 ショウとハザマは、同時に動いた。 「『かえんほうしゃ』!」 「同じ技はくらわないよッ!ハイロン!」 ハイロンの放つ冷気が氷壁を作り出す。同時にショウたちは左右に散開した。 ジュオッ! 氷壁が一瞬にして解け、周囲に水蒸気が満ちる。その白い煙の中を、ショウたちは駆け抜けた。 「無駄だ!いかに弱体化しようと、雑魚が数匹ばかり揃ったところでダメージにはならん!」 「だったら至近距離ならどうだい!?ハイロン、ヒノ!ゼロ距離で全力全開!」 視界が悪いのに乗じて、ハイロンたちはキメラに密着する。そしてそのまま、ハイロンの『凍竜牙』とヒノの『ブラストバーン』が炸裂した! 爆音が轟き、キメラを吹き飛ばす。吹き飛んだキメラは岩壁に叩きつけられた。 「甘いわ!『はかいこうせん』!」 全てを破壊する威力を持つ必殺の熱線がキメラから放たれる。無理な体勢から放っただけに照準が甘く、その破壊力はハイロンたちの手前で炸裂 した。 ズン! 重い爆音が響き、爆風が吹き荒れる。 「ハイロン!ヒノ!」 爆風を切り裂き、ハイロンとヒノが飛び出す。直接、着弾しなくても・・・これだけの威力! 「これが格の違いだ」 キメラの隣に立ち、ハザマはショウを見下ろした。 |