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■ダウト
「どこに資料があるんだい?」 警官の片割れがショウに訪ねた。研究所の裏にある庭。結構広いスペースで、昼間はポケモン達をここで遊ばせている。中にはボールを嫌がる奴 もいるので、この庭のどこかで寝ているポケモンもいるだろうが。 「・・・・」 ショウは黙って振り向いた。 ――警官は2人・・・。少しキツイが、やるしかないか。 ショウは腰のボールからランとカイを繰り出した。頭の上にはいまだにヒノが乗ったままである。 「すみません、どうして狙われているものが資料だなんてわかるんですか?」 「え・・・?」 警官は間抜けな声を出したが、ショウは警戒を怠らない。 「博士はロケット団に狙われているものがあるとしかおっしゃっていません。俺も資料が狙われているなんて言わなかった。なのに、どうして・・・わか ったんでしょうね?」 夜風が少し寒いくらいである。風をさえぎるものが少ないこの庭では、風が通り抜けるために余計に寒い。 「何を言ってるんだい?研究所で盗まれそうなものって言ったらそれくらいなものだろう?」 間抜けな声を出す警官とは違う、もう片方の警官が弁明した。だが、もう遅い。 「そうですね。いつもなら研究所にお金とかはあまりありませんし、その通りかもしれません。 ですが。この間、博士はワカバタウンから表彰されましてね。その時に援助金として現金を頂いているんです。この町の警官でそれを知らない人は いませんし、普通はそっちを狙っていると思うんじゃないでしょうかねぇ? もし偶然、資料を狙ってると思ったとしても。R団が狙っているというのに、博士が庭に置いていると思います?」 警官達が顔を見合わせ、同時に腰のボールに手をやる・・・その瞬間を狙って! 「『かみなりパンチ』!『ドリルくちばし』!」 ランの電撃を帯びた拳とカイの回転を加えたクチバシが警官に襲いかかる。2人はボールからポケモンを出す前に、ラン達の攻撃で気絶した。 「どうせいるんでしょう!出てきたら!?」 ショウは声を張り上げると、暗闇の中から3人の男が姿を現した。昼間のR団の連中だ。 「よくわかったな!これが偽者だと・・・!」 「勘だけどね。ちょっと早すぎたんだよ。到着するのが」 警察署から研究所までは車でも30分くらいはかかる。だが、彼らは車にすら乗ってきてはいなかった。警察が飛行ポケモンに乗ってくる事はあまり なく、少なくてもワカバタウンではない。 「それは失敗だったな!まあいい。リョウ!中に資料が置いてあるはずだ。警官がくる前に回収してお け。博士に用はないから気絶でもさせておけ。ケン!お前は私と一緒にこの坊ちゃんのお相手だ」 マイトと名乗った男と、ケンと呼ばれた男がポケモンを繰り出し、リョウと呼ばれた男が研究所の建物へ向かった。 「・・・ちッ!」 R団の2人が出したのはごつごつした鎧のような体を持ったサイホーンと鋼の体を持った三位一体のポケモン・レアコイル。明らかな、時間稼ぎ。 ランやカイの覚えている技は、サイホーンやレアコイルにはあまりダメージを与えられない。粘れば勝てる可能性もあるが、それでは博士が・・・・・! 「ヒノ、『えんま・・・』」 「させるかッ!レアコイル、『でんじは』!」 レアコイルの持つ磁石型のユニットから微弱な電気が流れ、ヒノを麻痺させた。 「くッ・・・・!」 「どうした!?来ないのならばこちらから行くぞ!サイホーン、『とっしん』!」 サイホーンが短い一本角を前に突き出し、ランに向かって突撃してきた。 「カイ!『ドリルくちばし』でランをカバーしてくれ!」 カイは回転を加えた一撃でサイホーンの横っ腹に攻撃する。しかし、重い体を持つサイホーンはその程度では方向が変わらない。 サイホーンの突進攻撃がランの身体を突き飛ばした。本来なら自分もダメージを受けてしまう危険な技だが・・・。 「言っておくが、このサイホーンの特性は『いしあたま』。反動を受けるような技でも、こいつはその頑丈さから全くダメージを受けない」 ――やっぱり、か・・・。 ショウは歯噛みした。このままでは、勝つ事はおろか、負けない事すら難しい。 「イチかバチか・・・・。みんな!集合ッ!!」 ショウは庭内に響き渡る声で集合の合図をした。 「何を・・・!?」 草むらから、林から、池から。ポケモン達が飛び出してきた。ウツギ研究所で暮らし、ショウが世話をしていたポケモンである。皆、ショウの言う事だ けは聞いてくれる連中だ。 「みんな!こいつらに遊んでもらいな!」 各々返事の声を上げ、研究所のポケモン達が群がった。 「サ、サイホー・・・・!」 R団が指示する間もなく、サイホーンやレアコイルと共にポケモン達の中に埋もれた。 「・・・・よし!博士のところへ・・・!」 ショウはランとカイを連れ、研究所の建物へと向かう。博士が無事だといいんだが。不安な想いを胸に秘め。 どんがらがっしゃ〜ん! 研究所の建物に金属音が響き渡る。中にはウツギ博士とR団幹部候補見習い直属の部下・リョウがいた。リョウは研究資料を奪おうと暴れ、博士 は奪われまいと逃げ回る。おかげで研究所内はぐちゃぐちゃになってしまった。 「いい加減にしやがれッ!」 リョウの持つこうもりポケモン・ズバットが『ちょうおんぱ』を放つ。だが、博士は負けを認めない。 「くそッ・・・!」 「ラン!『でんじは』だ!」 間一髪、窓からショウとランが飛び込み、ランの放つ微弱な電気がズバットの体の自由を奪う。 「もう・・・好きにはさせない!」 「なッ・・・!?マイト様はどうした!?」 リョウが驚きの声を上げる。リョウよりもはるかに強いマイトが、こうもあっさりと倒されるはずがない。思いつつも、リョウの頬を焦りの汗が流れた。 「さあね。今頃はみんなと遊んでいるんじゃない?」 ショウは薄く笑いを浮かべながら、リョウと対峙した。 「ちッ・・・!戻れ、ズバット!いけ、ベトベトン!!」 リョウはズバットをボールに戻し、ヘドロの塊のようなポケモン・ベトベトンを繰り出した。 「ベトベトン!『くろいきり』!!」 ベトベトンの大きな口から、真っ黒な煙が吐き出された。この煙はポケモンの能力変化を打ち消し、普段の状態に戻す効力がある。だが、今この技 を使う目的はその効力を狙ったものではない。 「うあ!?み、見えない!」 そう。真っ黒で光をあまり通さない煙を室内で使ったのだ。当然、周囲は見えにくくなる。 「ぎゃあ!?ショ、ショウ君〜!?」 「博士!?」 煙がだんだんと薄れていくと、床に倒れている博士の姿が見えた。 「博士、大丈夫ですか?」 ショウが駆け寄ると、目に見える傷はない。多分、よく見えない中で何かにつまずいたのだろう。 「ショウ君、大変だ・・・。研究資料を・・・盗まれて・・・」 「なんですって!?」 ショウは慌てて立ち上がると、開け放たれていた扉から外に出た。すでに周囲に人の気配はない。 ――逃げられた、か・・・。 「くッ・・・!」 ショウには、悔しがる事しかできなかった。 |