|
■コガネジム
「ボーマンダ!『そらをとぶ』で空中へ!トドゼルガ!『なみのり』!」 ボーマンダが大きな翼で空へと飛び上がり、トドゼルガは圧倒的な水量でサイドン達を押し流していく。 「・・・シャワーズ!『シャドーボール』!」 トドゼルガの放つ水を切り、シャワーズの放った球状の影がトドゼルガに当たる。トドゼルガの巨体が弾かれ、吹き飛ぶ。 「トドゼルガ!くッ・・・ボーマンダッ!シャワーズめがけて攻撃よ!」 空高く舞い上がっていたボーマンダが、シャワーズに向かって急降下する。 「ふん!シャワーズ、『とける』!」 シャワーズは普段、水中で生活をする。その中でシャワーズが得た能力。自らの身体を構成する分子を限りなく水に近い状態に変える事で、水 に・・・溶け込む。 「くッ・・・!」 周囲はトドゼルガが放った『なみのり』の影響で、水たまりが出来ている。そこに溶け込まれたら、見つける事など出来るはずがない。 目標を見失ったボーマンダはクルリと回転し、ナミのもとへ戻ってきた。 「ふむ、そこそこの力量はあるようだ。だが、まだまだだな。・・・むッ!?」 「ゴラア!!お前らそこで何をしている!!」 見ればそこには警官の姿。 「ちッ。シャワーズ、『くろいきり』!総員退避!」 周囲に黒い煙が立ち込める。ポケモンの能力を本来の実力に戻す技なのだが、この場合はおそらく目くらましだ。 煙が消える頃には、サイドンもシャワーズも・・・そして、コートの男もいなくなっていた。 ――何者だったんだろう。あの男。ロケット団に関係している事ならわかる。だが、それ以上がわからない。ナミさんすら歯が立たないほどの力量。 たくさんのサイドンを連れて、何をするつもりだったんだ? 「ショ〜オ〜。考え事してないでさ、この堅物のおっさんを説得してよ〜」 「堅物とは何だ!だいたい、リーグ優勝だかなんだか知らないが、事情を説明しろと言ってるだけだろうが!」 黙ってコート男の正体を考えていたショウに、ナミが泣きついた。 「だからッ!何も知らないって言ってるでしょうが!」 「あれだけ地形を変えといて何も知らないで通ると思ってるのかー!!」 ここは警察署・取調室。警官に捕まって只今、事情聴取の真っ最中。ナミとコート男が派手にやったお陰で道路はめちゃくちゃ。ただで帰してもらえ そうにはない・・・。 「失礼します、警部。アカネさんがお見えですが・・・」 取調室の戸を開き、ヒラらしい警官が敬礼をしながら入ってきた。 「ナミちゃんおる〜?」 その後ろから顔を覗かせたのは女の子。独特な口調に動きやすい服装だ。 一見するとただの女の子なのだが、これでも彼女はここ・コガネにあるジムのリーダーである。名はアカネ。 「あ、アカネ。ちょうどよかったわ。このおっさん、私の言う事を信じてくれないのよ」 「ま、ウチに任せとき。なあ、おっちゃん。ウチが保障したるさかい、今日のとこは堪忍したってーな」 アカネは顔の前で手刀を切るようなマネをした。 「ぬぬぬぬぬ・・・。ジムリーダー殿の頼みとあれば、致し方ないですね。今日はもうお帰りいただいて構いません。ただ、もうあんなマネはしないで 下さいよ〜?修復が大変なんですからね!」 「はいはい、わかりました〜」 ナミのわかったは全然わかっていないのだが、何とか帰してくれたのであった。 「いや〜。大変やったろ?あのおっちゃん、しつこくってなぁ」 「ええ大変でしたとも。助かったわ、アカネ」 警察署からの帰り道。もう外は薄暗くなっており、かなりの時間を無駄にしたらしい。 「で、何しに来たん?ウチに連絡してくれれば・・・」 「そう、それなのよ。最近ロケット団が動いてるって話、聞いた事ない?」 「ロケット団?もう解散したんやなかった?て言うか、その残党を倒したのあんたやんか」 「それが・・・また動き出してるみたいなの。ゴキブリ以上にしつこい連中ね」 「う〜ん・・・。でも、ウチも噂すら聞いた事あらへんよ?」 「確かにいるわ。ウツギ博士の研究資料を盗み、コガネの南にサイドンの群れを連れていたもの」 アカネは腕を組み、う〜ん、とうなる。 「ま、ウチも調査は手伝ったるわ。最近は暇やさかい。せやけど、泊まるとことか決まってるん?」 「全く予定なし。そうよね、ショウ?」 「ええ。全く・・・」 ここに来たのはほとんどナミの気まぐれだ。予定なんかあるはずない。 「じゃ、今日はウチんとこ泊まってってーな。久しぶりに会うて話したい事もぎょうさんあるし」 「そーね。じゃ、そうさせてもらうわ。文句ないわね?」 振り返り、ナミは言う。ショウがナミに逆らえるはずもない。 「決まりやな」 こうしてショウとナミは、アカネの家に泊まる事になったのである。 家と言っても、半分はジムの施設だ。広い建物だが、居住区はそれほどでもない。ただ、普通の一軒家よりは遥かに大きいのだが。 ここはジムリーダーとその家族が住む事の出来る場所である。ポケモン協会が各リーダーにジムを護る代わりに貸し与えるのだ。したがって居住費 もかからない。おまけにリーダーには毎月、給料も与えられるので破格の待遇である。その分、厳しい試験や審査を通らないといけない。つまり、ポ ケモン界のエリートというわけだ。 アカネはここにジムトレーナー数人と一緒に住んでいる。ジムトレーナーは、ジムリーダーと共に戦闘技術を学ぶトレーナーの事である。一般のトレ ーナーと違ってバトルだけを学ぶので、戦闘技術だけは高い。 「どや。変わった事はあらへんかったか?」 「あ、アカネさん。特に何もです。挑戦者も来ませんでしたです・・・って、あれ?お客さんですかぁ?」 のんきな口調でジムトレーナーの一人が言った。 「せや。リーグチャンプの経験もあるナミと、ウツギ博士の助手のショウ君や。今日は泊まってってもらうで」 「あらあら。それじゃあ今日の夕飯はたくさん用意しないとですね。すぐに用意しますです〜」 ジムトレーナーはパタパタと奥に引っ込んだ。 ジムトレーナーは、ジムの管理やジム内の家事全般などをこなす場合も多い。そうする事でポケモンとの付き合い方を学ぶのだ。 「で、ロケット団やったな。ちょい、こっち来てな」 アカネはショウ達を奥の部屋へ連れて行くのであった。 |