■突入

「ホンマにここなんやな?」

「僅かでしたが、間違いないです」

ショウとアカネが立つこの場所。ここは自然公園のゴミ箱の前だ。

翌朝、ショウはポケギアを取り出した。

ポケギアが発する電波は、それぞれ固有のものだ。当然ナミのものはナミだけしか使っていない波長である。ショウのギアに登録されているその波

長を探し出そうというのが作戦だ。

だが、この作戦には不確定要素がいくつかあった。まず、電波の届かないとこにいたら何の意味もない。もし電波が届く場所にいても、ギアを破壊さ

れていたり、捨てられていたら意味がない。あるいは気取られた事に向こうが気付けば逃げ出すだろう。そうすれば、絶対に見つけられない。

それらの要素を乗り越えたのかどうかは分からないが、結果的にからっぽのゴミ箱に行き着いたわけだ。

「何の変哲もないただのゴミ箱にしか見えへんけど・・・?」

アカネがゴミ箱をずらそうとしてみるが、固定されているのか、動かない。

「・・・ちょっと手荒いけどしゃあないわ」

アカネがボールを放ると、中からミルタンクが飛び出した。まさに二足の乳牛と呼ぶのが一番、わかりやすいだろう。

「ミルたん、『ばくれつパンチ』や!」

ミルタンクの剛腕がゴミ箱を力任せにぶっ飛ばす。すると、ゴミ箱の下に地下へ続くハシゴが現れた。

「・・・行くで、ショウはん。と、その前に・・・ププたん」

アカネが出したのはププリンだ。プリンの進化前で、小さなゴム毬に手足が生えたようなポケモンである。

「ププたん、ここの場所をウチのジムと警察に伝えといて。頼んだで」

それだけ指示すると、アカネはショウと顔を見合わせ・・・穴に飛び込んだ。



地下はジメジメとしていた。全体的に薄暗く、長く幅広の廊下が続く。左右には部屋が並んでいるが、人の気配は皆無だ。

「・・・ショウはん。ウチから離れんといてな」

「ええ」

廊下を慎重に進む。それぞれの部屋には中を覗ける小さな小窓があり、そこを覗いて確認していく。ナミの姿どころか、黒服の影すら見当たらない。

とうとう廊下の突き当たりまで来てしまった。他の扉と変わらぬ扉がある。ただ、小窓は部屋の中から板か何かで塞いであって、覗き見る事はでき

ない。

ドアノブに手をかける。ゆっくりとノブが回った。僅かな隙間を開けて、中を見てみる。

「・・・・・小細工は要らん。入って来い」

中からした声。忘れるはずもない、あの・・・声だ。

ショウが扉を開き、中に入った。中にはコートの男と幹部候補見習いのマイト。そして、ナミがいた。

部屋には何もない。広い部屋で、ウツギ研究所の研究室より広いかもしれない。

奥の壁際にコート男とマイト、そして壁に・・・ナミが吊るされていた。両手・両足を拘束具で縛られており、気絶しているのか、身動きすらしない。

「よく来た。一応、名乗っておこう。私の名はハザマ。ロケット団・幹部だ」

現存のロケット団はリーダー・サカキの逃亡により壊滅。残党も旧幹部と共に逮捕されたり、散り散りに逃げたはずだ。彼もナミが潰した旧幹部では

ない。

「名乗られたら名乗り返さんとあかんな。コガネジムリーダーのアカネや。で、そっちの女の子は返してもらえへん?ウチらの知り合いなんやけど?」

「・・・そうだな、用は済んだし構わない。だが、その前にひとつバトルをしよう。君達が勝てば無条件で返す。君達も無事に帰そう。ただし君達が負

ければ、君達を無事に帰す保障はしない。その場合も彼女の身柄は君達に渡そう。どうだ?どちらにしろ、彼女は返すぞ?」

「うまい話やな。そういうのは裏があるもんやけど、今のウチらには受ける受けないの選択肢はないんとちゃう?」

ハザマはニヤリと笑った。

「・・・・よく分かっているじゃないか」

ハザマがバサリとコートをひるがえし、モンスターボールを手に握る。

「ルールはタッグバトル!全員が1体ずつポケモンを出してのバトルだ。自チームのポケモンが両方とも倒れた時点で負けとする。いくぞ!エアーム

ド!」

ハザマが繰り出したのはエアームドだ。ショウのカイと違ってすさんだ目つきをしている。傷だらけの身体。鋭い目。それら全てがこのポケモンの生

活を示している。

「サイホーン!」

マイトが出したのは以前も戦ったサイホーンだ。

「ミルたん!」

「ラン、頼む」

アカネのミルタンクとショウのモココペアVSハザマのエアームドとマイトのサイホーンペア。

エアームドは電気に弱いが、サイホーンに電撃は効かない。一方、ミルタンクの技はどちらにも有効なものを備えている。対して向こうはこちらの弱

点を狙う可能性があるのはサイホーンのみ。

相性だけならショウとアカネが僅かに有利だろう。だが、それだけでは勝敗など分かるはずもない。

「先手必勝!サイホーン、『とっしん』だあ!!」

「甘いで!ミルたん、真っ向勝負や!『ばくれつパンチ』!!」

サイホーンの角とミルタンクの前足が激突する。パワーで競り勝ったのは・・・ミルタンク。

弾かれたサイホーンにミルタンクは追いすがった。

「攻めるで!連続で『ばくれつパンチ』や!」

「サ、サイホーン!逃げろ!」

指示を受けつつも、サイホーンは機敏に動けない。そこにミルタンクの第二撃がヒットした。

「な・・・に!?」

「ミルたんの拳は殴った相手を混乱させるほどの威力があるで!一発でも受ければそない簡単に動けへん!」

サイホーンは混乱し、敵がどこにいるのかも判断できていない。ヨロヨロと足元がふらつき、今にも倒れそうだ。

「強いのは口だけかいな!まだまだ甘いで、おっちゃん!」

「・・・・ふん、強気だな」

ハザマが片手を上げると、エアームドが翼を硬質化させてミルタンクに突っ込む。『はがねのつばさ』。鋼鉄の翼を叩きつける大技だ。

「ミルたん、危ないで!」

ミルタンクは紙一重で鋼鉄の翼を回避する。しかしその翼に集まったエネルギーは消えない。エアームドの先にいるのは・・・ラン!

「ラン、危・・・!」

ショウが指示する間もなく、ランは鋼の翼を喰らって壁に叩きつけられた―――。



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