ずしり、と竜が前に出る。
 見上げるほどの体高。緑色の鱗は強固で、並の刃物など通らない。
 口から吐き出されるブレスの強力さは、すでに嫌というほど味わっている。仲間はすでにーー2人が消し炭となった。もはや回収する遺体も残っていない。
「逃げて!! 早く!!」
 誰かの声が耳に届いているのに、その意味を理解することができない。
 目は岸壁に残された黒い影に吸い寄せられている。彼が生きていた証は、もはやこれしか残されていない。
「ダメッ……!!」
 また誰かが倒れる音が響く。なのに手足が動かなかった。
「あ、ぁぁ……」
 漏れ出た音が自分の口から出たものだということに、なかなか気づかなかった。手足は冷たく、感覚はない。

「あああああああああああああああああああああ!!」

 次の瞬間、血と暴風が洞窟の中に吹き荒れた。