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■無益なる戦い
「絵を具現化するアーティファクトですか。面白いですね。」 面白いとか言ってるくせにちっとも面白そうな表情ではない。迫り来る雷の斧を、新藤は冷静に結界で弾いた。無論、無詠唱である。 続いて今度は新藤が、魔法の矢を打ち出した。同時に爆動で間合いを詰める。 仮面野郎は慌てて新藤に向かってカードの絵を向けようとしたが、それを予想しない新藤ではない。 「……!?」 仮面野郎の後ろからも魔法矢が飛んできた。不意を突かれ、仮面野郎は後ろに向かってカードを使ってしまった。 炎が魔法の矢を埋め尽くし、打ち消したが――前から来る新藤に対しては、完全に無防備。 新藤は手に魔力を集めた。冷たく、凍りつきそうな冷気の球。それをそのまま、仮面野郎の腹に叩き込む! 「……!!」 僅かに後ろに飛んで多少は威力を殺したようだが、魔力を圧縮した球の威力は並ではない。仮面野郎の口元に、血が滲んだ。 「今日はこれで退く。」 劣勢を悟ったのか、あっさりと仮面野郎はそう言った。 「素直に逃がすとお思いですか?」 「追いたければ追え。追いつけるのならば、な。」 ざあ……と音を立てて、カードが仮面野郎の姿を覆い隠した。カードが途切れた時、仮面野郎の姿は、どこにもなかった。 新藤と戦った仮面野郎が退いた後は、もうデーモンやドラゴンが出現する事はなかった。どうやら、あいつが召喚していたらしい。 残ったデーモン連中は逃げた主に義理立てする事なく姿を消し、ドラゴン共は教師が協力して倒した。どちらかと言うと、新藤と学園長が倒した数の方が多いが。 結界も新しく張り、一応学園には平和が戻ったように見えた。 だが、学園の各所では戦いの爪痕が残り、教師・生徒を問わず怪我人は多い。不幸中の幸いは死者が0という事だろうか。 当然、学校は当分の間は休校となった。その間を利用し、聡と行人は新藤に会いに行く事にした。 女子寮に行くのは自由だが、やはり勇気がいる。だが、今はそれ以上に知りたい事がいくらでもあった。 「行人君に聡じゃない。どしたの?」 女子寮の玄関で、今は会いたくない奴に会ってしまった。神楽である。 「新藤先生に会いに来たんだけど?」 行人が神楽に説明した。すると、神楽はうんうんと頷く。 「ちょーど良いわ。私だけじゃ何も話してくれないんだもの。私も一緒に行くね。」 「……いいけどさ、邪魔はするなよ?」 「失礼ね。私を誰だと思ってるのよ?」 「さ、行こうぜ? 行人。」 堂々と神楽をシカトし、聡は行人を連れて中に入った。 「こらぁ! 無視すんなぁ!」 慌てて神楽もその後を追った。 「来ましたか。村野君、綾瀬君。」 珍しく新藤は部屋にいた。聡達が来る事を予期していたからかもしれない。 「神無月さんも一緒ですか……。まあ、いいでしょう。中へどうぞ。」 教師の部屋は、それなりに広い。応接セットや書棚など、なかなか豪勢な設備が揃っている。 部屋の中に入り、聡達は並んでソファーに座った。新藤はその向かい側に座る。 「まず、何から聞きたいですか?」 「あの仮面の連中は、何なんですか?」 「……いきなり難しい質問ですね。正確に答える事は出来ませんが、アーティファクトを持っていた事からしてかなり上級の魔法使いの部下だと思われます。目的は不明です。」 「アーティファクトってのは?」 「アーティファクトは、契約を交わした者に与えられる力の結晶です。相応のリスクを負う代償として、かなりの力を持っています。」 「……契約?」 「契約とは、古来より魔法を使えない者、いわゆる非魔法族が戦えるように開発された技術です。現代では廃れてしまいましたが、これを使えば魔法を使えぬ者も魔法を使える者と同等、あるいはそれ以上に強くなります。」 そんな連中を相手にしていたという事実に、聡は今更ながら、寒気を感じた。 |