その朝はとても平和に始まった。
「退屈だなぁ……」
 その日。多くの人にとっては祝日で、つまるところ仕事は休みだった。青年も例に漏れず仕事は休業日で、かといって、普段から趣味を持たない青年にとって、やることがなかった。
 とはいえ、家にいても仕方ない。そう思い、ふらりと外に出た。
 年明けして半月ほど。ニューイヤーのお祭り騒ぎが記憶に新しいニューヨークの町並みは、されどいつもと変わりなく。休暇を楽しむカップルや、こんな日でも忙しそうなスーツ姿の男などが歩き回っている。
 青年はそんな町並みを、特に目的もなくブラついていた。
 そんな青年が、ふと足を止める。足元が日陰になったのだ。
「……なんだあれ」
 見上げた先。それは、大きな船に見えた。飛行船だろうか? それにしては、なんとなく形状が普通の船っぽい。
 なにより、そのスケールは半端じゃなかった。クイーンエリザベスもかくやというサイズ感。そんな巨大な船が、空を飛べるのか?
 それは、ただの予感だった。だが、良くない予感がした。
 眺めていると、船からバラバラと黒い影が飛び出した。それは、人間の形をしていたがーー全身が鋼鉄で覆われていた。
「な、に……ッ!?」
 次の瞬間。鋼鉄の人間たちは、銃撃を開始した。
 空からの、まったく覚悟していないところからの銃撃。聞き覚えのある発砲音と共に、ばたばたと人が倒れ、血のにおいが充満する。
「あ、ぁぁぁ……」
 青年は、その中にいて動けなかった。目の前で起きていることが、現実のそれと一致しない。
 さっきまで元気に走り回っていた子供も、どこかに急いでいた車も、男も女も、若い者も老人もーー。
 なにもかもが、銃弾に引き裂かれていく。
「ああああああああ!?」
 それが、青年の遺言になった。
 直後。ニューヨークの町は、炎に包まれた。