山のてっぺんからは首都を見下ろすことができる。
 見下ろすとは言っても、列車で半日ほども離れているので、遠目に円形の城壁を眺められるくらいだが、とにかく視界に入れるくらいは可能だ。
 そんな、山のてっぺん。大きな一本木、その枝にヒューマンの少年が立っていた。その隣には初老の男が座っている。
 少年は、鞘に収めた独特な剣を佩いていた。
「……」
 遠く、武装列車が走っている。羽ペンが紙の上に線を描くように、列車の軌跡が続いていく。
 やがて、高い城壁の中に列車が飲み込まれていった。
「あれが首都か……」
 ぽつりとつぶやいた。生まれてこのかた、都市の中で過ごしたことは一度もない。首都に来たのは初めてだ。
「そうだ。来年、お前はあそこでデュアルをやれ」
「デュアルね」
「そうそう。俺の頃にはなかったってか、俺が作ったんだけどな」
「ジジイの頃はそれどころじゃねーんだろ」
「まあな。そこらに魔物がいたし、魔王も健在だったからな」
「魔物は今もいるじゃねーか」
「比べもんにならねえよ。城壁の外に出たら一歩ごとにバトルだったんだぜ」
 デュアル。
 二人で一組となり、お互いに力を競うバトル競技。
「お前はそこで一番になれよ。そうすりゃ、俺に追いつけるんじゃねえか」
「冗談よせよ。ジジイは一人で戦ったんだろ」
「そうでもねえけど、まあ最後の最後は一人だったな。でも、そういうこっちゃねえ」
「はぁ? どういうことさ」
「俺だって一人きりで戦い抜いたわけじゃねえってことさ。それに、守るもんがあるってのは戦いにあっては大事だ。なんにも守るものがねえ奴は、最後の最後で逃げるからな」
「逃げる?」
「もちろん誰だって死にたくねえさ。だから戦う。でも、自分一人が死なないための戦いと、誰かを守り抜いてでも生き残る戦いってのは違うんだ。お前は、守り抜く戦いを覚えろ。俺を越えるのはその時だ」
「……なんかうまくはぐらかされてる気がするんだけど」
「気のせい気のせい。ま、いいじゃねえか、ガキ。未来ってのはそういう楽しみがねえとな」
「ふん。今に見とけよ、糞ジジイ」