「なぁぁぁんか、私って警察に行くことがやったらめったら多くない?」
「そういう生活をしているからいけないんじゃないですか」
 フロンティアで起きた事件についての事情聴取を受けた帰り。すでに暗くなってしまった町をナミとショウの二人は歩く。
「……そういえばショウ、カトレアに訓練つけてあげるんだって?」
「ええ、まあ。この力を持っている人、そんなに多くないですから」
 確かに、カトレアに稽古をつけてやれる人間はショウくらいなものだろう。力を使いこなせるという点も含め。
 そんなショウを見上げながら、
「ふうん。ショウってロリコン?」
「なんでそうなるんですか」
「だってー、あれじゃない。カトレアって本当に子供じゃない」
「子供ってわかっているなら恋愛対象にもならないってこともわかってくれると嬉しいんですけど」
「いやいや、ロリコンってそういうもんじゃないんでしょ?」
「知りませんよ」
 ふう、とショウは息を吐いた。
「それにしても、バトルフロンティアが営業停止にならなくてよかったですね」
「どっかから圧力かかったっぽいけどねー」
 それがどこなのかは考えたくない、とばかりにナミは首を振る。
「圧力もあるかもしれませんけど、それ以上に、トレーナーの声が大きかったんだと、俺は思っていますよ」
 バトルフロンティア。自分の力量を、ポケモンとの絆を試せる施設。そのために趣向をこらされた様々な仕掛けは、訪れる者を楽しませてくれることだろう。
「ポケモンと協力すれば、何かあったって、どうにかできる。そういう投書を警察署にした人がかなりいたそうです」
「へえ。そりゃ初耳だわ」
 だけどそれは当然、とナミは口の中で呟いた。彼女にとって、ポケモントレーナーというのはそういうものだ。
 自分のパートナーたちと、あらゆる困難に挑戦し、それに打ち勝つ。それはポケモンそのものが持つ不思議であり、同時に、その力を引き出せるトレーナーの力量だ。
 ポケモンはまだまだわからないことだらけ。それらは少しずつ解明されていくだろうが、全てを解明し尽くすことはできないだろう。それでいいのだと思う。解明などされなくとも、ポケモンの力を引き出すトレーナーはいるのだし、それを、人は絆と呼ぶのだろうから。
「……」
 会話が途切れ、沈黙が落ちた。
 ナミは、ショウを見上げる。
 ふと、アカネの言葉を思い出した。
『男の子と行けばググッと急接近するんとちゃう?』
 ググッと急接近どころか、余計な事件に巻き込まれたのだが。
「でも、ま」
 悪くはなかったかもしれない。事件も、ショウと過ごした時間も。
「……? どうかしたんですか、ナミさん?」
「んー、なんでも」
 くふっと笑う。そんなナミを、何か得体のしれないものでも眺めるかのような目で見つめるショウ。
「よっし! 今日はお姉さんがおごってあげよう!」
「は? 本当にどうしたんですかナミさん」
「うっさいわねー。ほら行くわよ、ショウ!」
「ちょ、ちょっと待ってください! ちょ、ナミさん!?」
 今はこのままでいい。
 いつかは違う関係になるのだとしても。
 チャンピオンの背中は、そう語っているようにも見えた。