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二週間後に交代することが正式に決まった。 わたしとセロンは徐々に出て行く準備とかしつつ、日々の仕事をこなす。 思えば、随分と帝都に馴染んでしまった。これが昔の影響なのか、それとも今のわたしが帝都に近いからか、それはわからないけど。 事務所に戻れば、帝都に来る機会はぐんと減る。リュートたちとも簡単には会えなくなるだろう。 実際、わたしとリュートはどういう関係でもない。会えなくなったからといって、じゃあどうだ、というものでもない。たまに会うくらいはできるはず、だし。 けど……、そうなると、リュートたちが動き出した時にも、わたしは何もできないということになる。 いや、何かしようってのはおこがましいよね、ううむ。 つれづれない思考。空回りするばかりで、ちっとも前には進まない脳みそ。 当然のことだ。わたしが帰ることはすでに決定している。それについて、わたし個人の感情をうだうだ言ったところで仕方ない。 やれることがあるなら、その前に。そういうわけで、わたしは帝都の門外に出た。 出れば会える、なんていう見込みはなかった。それでも、リュートみたいな侵入者がいるんだから、見張りくらいはいるんじゃないかな、なんていう考え。 そして、それはみごとにハマった。 人影もなく、門番からも見えないくらいのところまで来ると、バサバサバサ、と空からミントが降りてきた。 「どうしたのですか、エリア・ダルクハルト」 「あなたたちに会いたかったのよ、ちょうど」 「……?」 街道沿いから森まで移動しつつ、わたしはミントに事情を話した。もう帝都を離れなければいけないこと、その前にやりたいこと。 ミントはわたしの話を聞き、 「わかりました。ちょうどいいところです」 「ちょーどいい?」 「こちら側の都合です。でしたら、仲間を呼びましょう」 森に入ってちょっと行ったところで、ミントはそこらの木の根を掴むと、大きく息を吸い込んだ。 ――――ッッッ!!! それを、わたしはなんと表現すればいいかわからなかった。声ではない、純粋な音。それも、かなりの高音。耳から直接に頭に響いてくるような、甲高い音波が森の奥の奥まで響き渡る。 それからほんのわずか、たいして待つまでもなく、森の木々がガサガサと揺れ始めた。音は遠くから、徐々に近づく。 「おーう、なんだ?」 声をかけながら、誰かが樹上から飛び降りてきた。初めて見るウェアだ。犬のように尖った口、白銀の毛並み。人間のように服を着こなし、軽薄な表情をしているけど、目だけはやけに鋭い。腰には一振りの剣を下げていた。 「ん? 人間か?」 ウェアはわたしを見て、ちょっと眉を寄せる。ミントはこくりと頷き、 「エリア。彼はヴィンセント。ウェアの中でも古い者です。ヴィン、彼女が、エリア・ダルクハルト」 「――ああ、なるほどねぇ」 犬人は左手を差し出し、 「ヴィンセント・クロムウェルだ。よろしく」 「エリア・ダルクハルトよ」 その手を握る。ごつごつとした感触だった。 「で? そのエリアお嬢様が、オレに何の用だってんだ?」 「別にヴィンセントに用事があったわけではありません」 「そうかい。お前がボケてんのはよぉくわかってっから、もうお前はしゃべんな」 そして、ヴィンセントは説明を求めるようにわたしを見た。わたしは、ミントにした話を彼にもしてみた。 話を聞いたヴィンセントは、 「ふーん。なるほど、つまりお披露目をちょうどよく誕生会ってのに合わせようってわけだな?」 「そういうことです」 「ん、ちょうどいいじゃん? こっちの準備はだいたい整ってる。いつでもオーケーだぜ」 「……何の話?」 わたしはふたりを見る。と、顔を見合わせたふたりは、 「ま、リュートにもそろそろ自覚を持って欲しいって思ってたんだよ。オレらも」 「本来、彼は帝都になど行ってはいけない人物の筆頭です。けれど、彼は自分の目で仲間のルートを確かめたい、の一点張りで。彼を慕って参画している者も多い以上、彼の発言に抵抗できる者はいませんでした」 「へえ。リュートってそんな偉いの?」 「――なんだ。知らないのか」 「何を?」 「まあいいよ。行けばわかっから」 ヴィンセントはちょいちょい、と森の奥を指した。 「行くか? オレたちの秘密基地に。誕生会をやるには絶好の場所だろ?」 「もちろん!」 そのために、わざわざ来たんだもの。 |