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そんなこんなでパーティー当日。 パーティー会場はロードクロイツが拠点としているお屋敷の中庭だ。すでにテーブルが並び、ロードクロイツの面々がホストとして給仕をしている。 そんな中で、若干浮いている二人。 「……」 自分の服装に超絶落ち着いていないアディーとサフィである。 アディーが選ばされた(本人に決定権はなかった)ドレスは、体にぴったりとしたシルエットで、両サイドに深い切れ込みが入っていた。太ももまで露になるようなデザインだが、普通に恥ずかしい。 一方でサフィのドレスはブルーのノースリーブで、さすがに子供用ということもなかったが、サイズの関係でやはり選択肢がなかった。腹が立ったので黒のボレロを羽織り、何がなんでも子供っぽさを消そうとしている。 「こんな格好、露出狂じゃないですか……」 「じゃあボクと交換しますか?」 「入りません……」 「じゃあ文句言うな。というか、ボクだって嫌なんですよ」 以上。ドレスを着こなせない二人の意見である。 「文句言わない。あ、ディーちゃん、キックしちゃダメだよ。見えるから」 そう言うルベルは、赤を基調としたパーティードレス。開いた胸元に白い宝石をあしらったネックレスをしており、非常にあでやかだ。 「まあ見えてもわたしは嬉しいだけなんだけど……」 楽しそうにしているエメルはグリーンのカクテルドレス。もともと豊満な体つきであるのに加え、シルエットを強調するドレスだけに妖艶さが際立つ。 ドレスを着こなす二人を見たアディーはため息しつつ、 「……絶対に蹴りませんとも」 そんなことを言うしかなかった。 諦めて周囲を見渡せば、すでに各キャラバンの主要人物が集まりつつある。 「メオカリアスに白薔薇兵団……。本当に有名どころは来ているんですね」 「すごいね〜。あ、あの人、ディーちゃんの知り合いじゃない?」 「えっ」 見れば、アディーが以前所属していたキャラバンーーブライトヘヴンのリーダー、ペリドの姿があった。 「ん? あ?」 向こうもこちらに気づいたらしい。ワイングラス片手に近づいてきたペリドは、 「お前、もしかしてアディーか!? いやあ、えらい違う雰囲気で分からなかったぞ!」 「だ、団長……。お久しぶり、です」 「おう! 元気でやってるか?」 「まあ、ぼちぼち……」 ペリドはアディー的に、多少はマシな相手だ。年上の男性ではあるものの、変な目で見てくることもないし、普通に社交性もある。あのキャラバンがそれなりに大手なのも、彼の人徳によるところが大きい。 「そうか、それはよかった。それと、ルベルちゃんも久しぶり。もしかしてルベルちゃんがアディーのコーディネートしてやったのか?」 「お久しぶりです。ディーちゃんはアタシ渾身のコーディネートですよ! 超かわいいでしょ」 「ああ、そうだな。見違えたぞ」 「あの、団長。恥ずかしいので……」 「はっは! お前はいつだって人前から引っ込んじまうな」 それにしても、とペリドは改めて二人を見やる。 「アディーたちがこのパーティーに呼ばれるなんてな。何かあったのか?」 「あっ、わ、わかりません。魔女が呼んでいる、とか」 「リーダーの呼び出しか。ふうん……」 ペリドはワインをあおり、 「それなら行った方がいいな。だが、少し用心しておいた方がいいかもしれん」 「用心、ですか?」 「魔女ベリークは、確かに凄腕だが、少々強引な手法でも有名だ。彼女が呼び出すということは、そういうことかもしれんからな」 「じゃあ、もしかして良くない話かも、ってことですか?」 「それはお前たち次第だろうが、一方的に良い話ばかりってことはないだろう。彼女の話は鵜呑みにしないことだ」 じゃあまたな、とペリドは立ち去って行く。 アディーの胸には、不安だけが去来していた。 一方その頃。 雑多なパーティー会場で、エメルはシャンパンを手にぶらぶらしていた。 アディーは知り合いと話しているようだし、かといって他に知り合いがいるわけでもなく。鼻の下を伸ばしたような男はいるが、男にもともと興味がないエメルにとって、ただ不快なだけだ。 「んー……」 暇潰しの相手を探していると、見知った顔を見つけた。 「あら、ソフィア」 「……エメル!? なんでここに!?」 やはりと言うべきか。規模的にはそれなりのエレメンタルバースも呼ばれていたようだ。 今日のソフィアはライムグリーンのドレスにゴールドカラーのネックレスをしている。鮮やかな色合いが、彼女の雰囲気によく似合っていた。 「なんだか、魔女にお呼ばれ? らしいわよ」 「ベリーク・テスターに……。変ね、彼女があなたたちに興味を持つなんて」 「そういうもの?」 「ええ。彼女が求めているのは強い人間のはずよ。うちにも引き抜きに来ていたもの」 「それは彼を?」 「ええ」 ソフィアは頷き、 「もっとも、ジンはうちに残ったようだけど」 「へえ? あの高慢ちきが、よく残ったものね」 「もう、エメル。意地悪ね」 「ふふっ。でも、なんでジンが? 彼なら規模の大きいところを好みそうだけど」 「それはね。ふふっ。たぶん、あなたが辞めたからじゃないかしら」 「は?」 ソフィアはくすくすと笑い、 「あなたは戦力的に中堅だったから、正直に言えばあなたが抜けたところでうちに穴と言うほどの穴はない。けど、士気には関わるところだものね。彼、あれでエレメンタルバースを大事に思っているようよ」 「ならオカリナなんて壊さなきゃいいのに……」 「そういう雑な男なのよ」 ふう、と息を吐き、ソフィアはエメルの耳元でささやく。 「とにかく。彼女には気を付けて。食われないようにね」 「ええ」 すれ違った時に、ソフィアの香りがほんの少し残る。 その香りが、エメルの脳裏を刺激していた。 せっかくなので、サフィは美味しい食事を頂くことにしていた。 アウトローの彼女にとって、こんな立派な食事を食べる機会はない。立食形式で、なにやらよくわからない料理名のものが並んでいる。まあ、美味しければなんでもいい。 頂くものだけ頂いていると、仲間たちも戻ってきた。 「どうしたんですか、アディーもエメルも。顔色がよくないですよ」 「そ、そんなことないですよ」 「少し酔ったかしら。サフィちゃん、介抱してくれる?」 「嫌ですが?」 「つれないわねぇ」 「ほらほら! そろそろベリークさんところに行こうよ」 ルベルに促され、みんなで屋敷に足を向ける。 入り口にはロードクロイツのメンバーが立っていた。 「すみません。アタシ、ルベル・カーライトです。ベリーク・テスターさんに呼ばれて来ました」 「ああ、聞いているよ。中へどうぞ」 団員の先導で扉が開く。中は豪奢なエントランスだ。赤い絨毯が敷かれ、天井にはきらきらとシャンデリアが輝いていた。各所には一目で高価とわかる調度品が並んでいる。 「ひゃあ……」 「骨董品も良い品ですね。これ全部売ったら、それだけで家が建ちますよ」 「こちらへどうぞ。ベリークさんは2階だから」 エントランスの螺旋階段をのぼり、少し進むと樫の扉があった。 「ベリークさーん。お客さん、来ましたよー」 樫の扉が開く。 応接間なのだろう、中にはソファとテーブルが置かれている。ソファのかたわらに三人の女性が立っていた。 「っ!?」 うちの一人、それは見知った顔だ。 「よく来たね。アディー、ルベル、サフィ、エメル」 四人に笑いかけたのは、最強の冒険者ーーアレッサ・マウルだ。 |