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ロードクロイツは、頭となるベリーク・テスターを中心に、四人の幹部がいる。彼らがそれぞれ、40人ほどの班を統率する構造だ。 そんな四人の幹部と、頭であるベリークを含めた計5人のメンバーが、拠点となる屋敷の一室に集まっていた。今日はロードクロイツの定期報告会の日である。 ベリークはお茶を口に含み、カップを皿に戻す。 「バレウス、ファスト。報告を」 「はい」 メガネをかけた男性が立ち上がり、手元の資料に視線を落とす。 「現在までの探索で、深層で”メダル”を5枚まで発見しました。想定されるメダルは、”門”の切り欠けからして、残り1枚です」 「深層の地図作りも順調っすよ。”壁”まで到達できたのは大きかったっすね。端が確定したことで、全体の容量もおおむね計算できてるっす。今のところ、地図は8割がた埋まったところっすね」 「残りの探索における障害はあるかしら?」 「現在のところは特にありません。次の探索は明後日に出発予定です」 「結構。では、レギアル。資料の方は?」 「はい」 細面の青年が立ち上がり、 「深層で発見された古文書を中心に解析してますが、言語の解読に時間がかかっています。ただ、発見された資料の数がそれなりにありますので、解読そのものは不可能じゃないというのが見解ですね」 「メダルや、秘宝に関する情報は?」 「秘宝については今のところ、目新しい情報はありません。いえ、冒険者同士の噂話程度ならいくらでもありますが」 「不正確な情報は結構。古文書の中身を聞いているのよ」 「失礼しました。メダルについては、すでに発見された5枚の情報で全てです。失われているページもありますから、もしかすると情報そのものが逸失している可能性は否めません」 「そう。では、足で探索するしかないかしらね。じゃあ、アレッサ。意見は?」 「ワタシに意見求めてどうするのさ、親分」 アレッサ・マウルは退屈そうに欠伸をしながら、 「情報を探すのはレギアル、現場の探索はバレウスとファストの仕事。ワタシは他のみんなが殺せないやつを殺すのが仕事。強そうな相手を見つけた時だけ呼んでくれればいいの」 「……まったくもう。それでも幹部なの?」 「肩書きはいらないっていつも言ってるでしょ」 「あなたほどの強さがあって、肩書きがないことも問題なの。組織としてはね」 ベリークは嘆息し、 「では、引き続きそれぞれの仕事をこなすこと。それとファストはインビジブルの情報も調べておいて」 「いいっすけど。強い戦力ってだけなら今のままでも十分じゃないっすか? アレッサさんがいて勝てない相手なんか、今まで一人もいなかったっすよ」 「それはわかっているわ。でも、”門番”はわからないでしょう。ねえ、レギアル?」 「そうですね」 資料担当の青年は頷き、 「現在までに発見されている古文書で、秘宝らしきものに触れているのは一冊だけ。それにも伝説の秘宝という一文はありませんが、門番の守る宝があり、手に入れた者は願いが叶うとありました」 「問題なのは、その門番とやら。キングトロールやリヴァイアサン程度で済めばアレッサで問題ないけれど、今までの探索を考慮すると、さらに強い魔物が出てもおかしくはないわ」 「ワタシはその方が嬉しいけどねえ」 「バトルマニアのあなたと違って、こっちは成果が欲しいのよ」 「そうは言ってもね。”門”の高さからして、中の魔物はせいぜいこの屋敷くらいの大きさでしょ? どれほどの魔力があるか知らないけど、倒せないサイズじゃない」 「戦いは大きさだけじゃないでしょう」 「そりゃそうだけど。親分は慎重すぎるんじゃない?」 「慎重に越したことはないわ。お宝が見つかっても、持ち帰れないのであれば何の意味もないもの」 「まあ、古今東西、お宝は見つけた後の方が大変って決まっているからね」 「そうね」 ロードクロイツは今まで深層を何度も探索している。その結果、様々なダンジョンで多くの宝を手に入れてきた。ここにいる幹部たちは、そんな冒険から生還してきたメンバーだ。 「あー。3枚目のメダルを見つけたダンジョンはきつかったっすね。メダルを手に入れたとたん、ゾンビパニックっすもん」 「死霊だけならまだよかったですがね……。ドラゴンゾンビが大量に出てくるのは参りました。あいつら、剣で斬っても落ちませんからね」 「それを言うなら、5枚目のメダルも酷かったですよ。手に取った人間は発狂する呪いなんて、知らなければ防ぎようがない」 「あはは。あれはよかったよねぇ。でなきゃ、オプリアと戦える機会なんて絶対になかっただろうし」 「戦える機会? 殺す機会の間違いじゃないですか」 レギアルが言うと、アレッサはくすりと笑った。 「レギアルは本当にワタシが嫌いだね。いいじゃない、殺して。だいたい事前に情報を見つけてくるのは君の仕事だ。オプリアが死んだのは君のせいとも言える」 「仕方ないでしょう。深層の情報は難読なうえ、そもそもの情報量に限りがあるんです」 「じゃあ、ワタシが狂った味方を処分しても仕方ないよね?」 「はいはい、やめなさい、あなたたち」 頭のベリークがパンパンと手を叩くと、二人とも押し黙る。 「オプリアの件はアレッサの判断が正しかったとして、その一件は終わっているわ。実際、アレッサがオプリアに対処できていなければ、隊員が皆殺しにされていてもおかしくはなかった。今さら蒸し返すのはやめなさい」 「……申し訳ありません」 「結構。ただ、実際にオプリアが抜けた穴を埋められるだけの戦力がいないことも事実。そのあたりは多くを探索するファストに頼むわ。インビジブルでなくとも、強い冒険者はどんどんスカウトなさい。金銭面はいくらかけても構わない」 「了解っす〜」 「それは他のみんなもよ。戦闘力だけでなく、知力、魔力、知識でも。深層探索に役立つメンバーはどんどん増やしましょう」 「はい」 「了解しました」 「いい返事ね。とにかく異界の探索では何が起きるか分からない。とりあえず、明後日の遠征に備えましょう」 「了解!!」 「はいはい、行ってらっしゃーい」 ひらひらと手を振るアレッサ。そんな自由すぎる彼女の様子に、他の四人は嘆息するしかなかった。 |