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闇の中にいてもわかる、剣の輝き。 「強さを隠しているとは思ったけど……。その魔力。そうか、君がインビジブルだったんだ」 ゆうらりと現れたのは、やはりと言うべきか。最強の冒険者。 アレッサ・マウル。 「アレッサさん……。なぜここに?」 深層の魔物が、中層で溢れ出た理由。それは、この女のせいだ。 アディーの直感が告げる。そんな方法があるのか分からないが、この女は深層の魔物を呼んでいるのだと。 「いやあ、ワタシは常に強い冒険者を探しているだけだよ」 そう言って、自分で笑う。 「ふふふ。ごめん、嘘だ。君が強さを隠しているのは分かっていたんだけどね。ちょっと気になったから、デッドアーマーをけしかけてみたの。全部一撃なんて、予想以上だったよ」 「それで死んだらどうするつもりだったんですか」 「君はあの程度じゃ死なないと思ったからね。仲間は知らないけど、弱い奴に興味も価値もないから」 「……あなたって人は」 アディーはそっと拳を握る。そんなアディーの後ろで、サフィやエメルも武器を握った。 けれどアレッサはニヤニヤ笑いながら、 「まあまあ、そう身構えないでよ。誰も傷ついてないんだからさ」 「結果論でしょう」 「許して貰えそうにないみたいだね。じゃあ、撤退しようかな?」 「……」 「それとも、ここでやるかい?」 ふっ、と剣を振った。その剣圧で、壁が吹き飛ぶ。 彼女にとって、特別に力を使ったわけではない。”最強”の名前は伊達ではないのだ。 アディーは内心で舌打ちしながら、 「無闇に喧嘩するつもりはありませんよ」 「それは残念だ……。おや?」 アレッサは崩れた壁に視線を送る。つられ、アディーも壁の向こう側を見た。 暗闇が広がっている。ただ壁が崩れただけなら、あんなに闇が広がることはない。 「壁の向こう側に……。空間が、ある?」 「どうやら未発見エリアみたいね。探索する?」 にやつくアレッサ。つい反発しそうになるが、冒険者としては未発見エリアなら探索しておきたい。 「……余計なことはしないでくださいね」 「大丈夫だよ、インビジブル。そこらは弁えるさ」 そう言うアレッサが先陣を切り、闇の中に足を踏み入れた。 空間の中は広く、見上げても天井がどこにあるのか分からない。周囲の壁からは水晶らしき宝石が屹立している。 照らした光が乱反射する中、中央に社らしきものを見つける。石造りで、高さは腰ほど。銘も何もない簡素な作りだ。 「開けてみようか」 アレッサは無造作に社の扉を開いた。鍵も何もなく、すんなりと扉が開く。社の中には、拳大のコインが飾られていた。 不思議なコインだ。いつからそこにあるのか分からないが、まるでたった今ここに置いたかのように綺麗な銀色だ。表面には骸骨のような紋様が刻まれている。 「コイン? いえ、メダルでしょうか。サフィさん、これ、何か分かりますか?」 「……見たことはないけど、なんとなく噂は聞いたことがありますね。でも、それはボクよりアレッサの方が詳しいんじゃないですか」 サフィは隻眼でアレッサをにらみ、 「あれ、噂に聞く封印のメダルに見えるんですが」 「ワタシにもそう見えるね。まさか中層にあったなんて、見つからないはずだよ」 「……封印のメダルってなんですか?」 単純に知らないルベルは首をかしげる。答えたのはアレッサだ。 「今、深層の奥地で見つかった扉には、6つの丸い穴が開いているんだ。ワタシの力でも壊せない扉でね。想像でしかないけれど、その穴に適合する何かを嵌め込めば扉が開くんじゃないかって話」 「それを通称として封印のメダルと呼んでいるようですね。確かに、異界ではそういうアイテムを要求されるギミックは珍しくありません。とはいっても、深層の最奥です。そもそも辿り着けるキャラバンが限られる。その捜索を本気でやれるキャラバンとなるとさらに少ない」 「そういうこと。ロードクロイツは本気でメダル捜索をしているキャラバンでね。でも、深層じゃ今のところ5枚しかメダルが見つかっていないんだ。なるほど、たしかに全部深層にある、なんて誰も言っていなかったね」 メダルを手に取る。特に何か罠が仕掛けられているような様子もなかった。 手に取ればよくわかる。これは本物だ。それだけ強い魔力を放ち続けている。 「道理でここは中層の割に闇が強いと思った。たぶんこのメダルが力を発揮していたんだね。でも、これで深層最奥の扉が開く。……伝説の秘宝が手に入るかもしれないね」 指先でメダルをくるくると回しながら遊ぶアレッサは、 「せっかくの縁だし、インビジブルたちも見に行くかい? もしかしたら秘宝の取り合いに参加できるかもしれない」 「そんなことをしたら、キャラバンの人に怒られるんじゃないですか?」 「いいのいいの。ワタシは強い人を見たいだけだから。それに、こんなチャンスはもうないよ?」 「……」 伝説の秘宝。あらゆる願いが叶うという存在。 もしも、そんなものが本当にあるのなら、誰だって願いたいことはあるだろう。そうでなくとも、冒険者であるのなら、伝説の秘宝は一目だけでも拝みたい。 取り合いとは言うが、アディーたちが行ったところで、ロードクロイツを出し抜くことはできないだろう。人数も力量も桁が違う。 色々な可能性を考え、アディーは頷いた。 「……わかりました。皆さんはどうですか」 後ろで、ルベルたちも首を縦に振る。 「伝説の秘宝……。本当にあるなら見てみたいな」 「あわよくば、願いだけでも叶えられるかもしれませんしね」 「まあ、行って損はなさそうね。ロードクロイツに帯同するなら危険も少ないでしょうし」 「決まりだ」 嬉しそうにパチンと指を鳴らすアレッサ。そんな彼女を見上げながら、アディーは言う。 「同行しますけど、ひとつお願いが」 「何かな?」 「私の名前はアディー・ヒーリです。インビジブルとは呼ばないでください」 にやりと笑い、アレッサは頷いた。 「了解だよ。じゃあ、よろしくね。アディー」 |