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全身の魔力を足に溜める。 一撃に猛烈なパワーが必要だ。そうなれば、使い物になる技はひとつだけーー。花の塔で岩石生命体を破砕した、あの技しかない。 全力を足先に込めて叩きつける必殺技《高脚腿》。 ただ、その技をアレッサがまともに受けてくれるとは到底思えない。足先で蹴り抜く技だけに、タイミングが限られる。相手が逃げるつもりになってしまえば、かわせてしまうのだ。 相手の動きを止めたいところだが、剣を持つアレッサを束縛するなんて道具も魔法もない。となれば、打てる瞬間はひとつだけ。 相手が放つ最大最強の一撃に合わせたカウンターだ。 問題は、こちらの攻撃が相手の攻撃を貫く瞬間、自分もダメージを止められないということ。鋭い攻撃力を持つ高脚腿ならアレッサの魔力を貫くだろうが、余波は必ずアディーを襲う。 耐久力がない武闘家では、その余波だけで燃え尽きるだろう。 だが、他に作戦が思いつかない。やるしかない。 覚悟を決めて突撃しようとした、その直後。 「今です!!」 「《ボルケーノ》!!」 横合いから火炎流が吹き荒れる。 「ッ!!」 エメルの援護射撃。だが、アレッサに通じるはずもない。 「邪魔、だぁ!!」 剣を振るう。魔力の籠った剣圧で炎が払われ、術者であるエメルが弾かれる。 その陰から。 「アレッサ!! 覚悟!!!」 流星のごとき突進攻撃。エメルが使っているのと同じ爆進を、サフィの魔力刃で再現する! 全力突撃だ。剣を振るったアレッサは、武器で受けられない。 猛進する刃がアレッサに触れるーーその直前。 「ふざけろ」 アレッサは素手で刃をつかんでいた。左手に血をにじませながら、そのまま握り締める。 「いッ!?」 「邪魔をするなァ!!」 トリアイナごと振り回された。紙切れのように飛んだサフィは遠くの石柱に激突し、握られたトリアイナはバラバラに砕け散る。 「雑魚どもがワタシの邪魔をーー」 そう、アレッサに比べればサフィもエメルも雑魚同然だ。敵う要素なんてひとつもない。 だが、コンマ何秒か、意識を集中させることくらいはできるーー。 右手に剣を、左手に砕いたトリアイナを握るアレッサ。その胸元に輝くペンダントが、引きちぎられた。 「えっ」 「アディィィ!!」 ペンダントが高く投げられる。打ち合わせなんてしていなくても、何をすべきかは体が知っていた。 空中を舞うペンダントを奪い取る。中に込められた賢者の石が強く強く輝き出した。 「っ!! これ、幻惑魔法ーー!!」 気づいた時にはすでに遅い。無意識に”見えない”敵を殴り飛ばしつつ、アレッサの目は賢者の石を追いかけている。 そう、それはすでにアディーの手の中。ロードクロイツの面々が集めた石は全てペンダントの中に入れていた。 そして、最後のひとつを持っていたのはーーアディーだ。 「揃った」 6つに分かれていた賢者の石。その欠片が集まり、ひとつの石となる。 それは持ち主のあらゆる願いを叶えるという、世界でひとつだけしかない伝説の秘宝。 「賢者の石。あなたに、その力があるというのなら……。私に、力を貸して!!」 直後、虹色の光が生まれ、アディーを包み込む。 それらの光はアディーの腕へと収束し、斬り飛ばされたはずの左腕を再生させた。 「あはっ。それが秘宝の力……。いいよ、これで!! 対等だ!!」 「対等? ご冗談を」 そう、確かにアレッサは化物だ。だが、賢者の石とはそんな次元のものではない。 仲間たちが命がけで渡してくれたこの石はーーそんなものじゃない!! 「お前に!! 勝ち目なんてあるかッ!!」 「そうでなくっちゃ面白くないんだよぉぉぉ!!」 狂喜に満ちた笑顔。その顔こそが、彼女が狂っている証なのだと感じる。 アレッサは剣を掲げた。剣に雷が落ち、そのまま帯電する。魔法と剣術を組み合わせた、魔法剣とでも呼ぶべき斬撃。 本来ならば必殺の一撃であろうそれを前にしても、アディーは緊張しなかった。 「ルベル、サフィ、エメル。ありがとう」 再生した左腕をぐっと握る。三人の気持ちは、この拳に込められている。 「行くよ!! アディー!!」 アレッサがアディーに迫る。尋常ではない殺意と魔力を乗せて、全力の一撃を叩きつける。 「その力!! ワタシが貰う!!」 「誰がさせるかッ!!」 剣に合わせ、高く蹴り抜く。 剣と具足が激突し、火花を散らす。拮抗している力ーーここまでしてもなお、アレッサとは同等でしかない。 まだ足りない!! 「貫け!!!」 全力の蹴り、その爪先がーー飛び抜けた。 「ッ!?」 足先に仕込まれたフンババの鱗。杭状に加工されたそれが飛び出す、一種の杭射出装置。キャット婆に頼んだ最後の切り札だ。 拮抗していたはずの力と力。そこに炸裂した一撃に、伝説級の剣も耐えられなかった。 「なっ」 砕ける剣。その破片がぱらぱらと舞い散る中、アディーは握った拳を叩きつける。 「崩拳!!!!」 弓のように引き絞られた拳。その一撃がアレッサの顔面を打ち抜く。 地面をバウンドしながら吹き飛ばされたアレッサは、祭壇に激突し、そのまま粉砕した。 ぱらぱらと石片が舞い散る中。気絶したアレッサ・マウルは、もう動かなかった。 |