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■己との戦い
「穿て雷鳴! 現に剣を具現せよ!!」 聡の放つ雷が、剣を模した形になって聡モドキに襲いかかる。だが、聡モドキもまた同じ魔法を唱えていた。互いの雷剣が混じり合い、弾け飛ぶ。 「ちッ! ヤバいな。」 少しずつだが、押されている。聡の魔法はかすりもしないが、相手の魔法は当たるようになってきた。このままでは、待つのは……死。 「(どう考えたって勝ち目はねーな。諦めちまった方が楽、だろうな。)」 体力なし。魔力なし。勝ち目は皆無。 「ざけんな、バーカ。」 しかし、それでも。聡は立ち向かう。自分自身に勝つために。辿り着きたい境地へ向かうために。立ち止まっている暇はない。 「世の中には俺より強い奴がすっげーいるんだろ? こんなところで……こんなところで! テメェにすら勝てないで! どうすんだよッ!?」 訓練室の床が、ビシリとひび割れる。暴れてもいいように作られた部屋にも関わらず。 それが、聡の力。マジック・マスターから受け継いだ、聡だけの力。聡の内に宿った魔力の底が、ゆっくりと目を覚ます――! 「舐めるのも大概にしやがれッ!」 アーティファクトに魔法を封印し、全開で、解き放つ。 放たれた稲妻は閃光となって訓練室を埋め尽くした――。 「……聡か。馬鹿でかい声出しちゃって。相変わらずだなぁ。」 聡の雄叫びは、隣の訓練室にいた行人にまで届いていた。 ボロボロになりながら、行人は再び構え直した。先刻までは指先を動かす事すら億劫だったが、今は全身に力がみなぎっている。今なら、なんでも出来そうだ。 「聡、すごいよな。聡の言葉を聞くと、どんどん力が沸いてくる。」 ――いつも聡に頼ってばかりだ。でも、だからこそ力が欲しい。聡を頼ってしまうからこそ、聡を護りたい。もちろん、聡だけじゃない。宮野さんも神無月さんも柊さんも。自分という存在を認めてくれた皆を、護り抜きたい。半獣の呪われた血を受け入れてくれた皆を、助けたい。助けてもらった、その礼をしたい。そして、そのためには力が要る。 行人の眼光に鋭さが増す。信念は強い想いを生み、想いは力の原動力となる。 行人は床を蹴り、一気に間合いを詰めていく。行人モドキは獣歩で回避しようとして、しかし追いつかれた。 そのまま行人は炎を拳に宿らせ、自身と同じ顔へと叩き込む――。 「化物が私の格好しないでよね。気色悪い。」 強気で悪態を吐いたが、茜はピンチだった。 茜は左手から血を流している。そのため右手だけで構えているが、威力は半減してしまうだろう。少なくても、決定打にはならない。 「あんたなんかに負けらんないわよ。」 それでも茜は、闘志を絶やさない。この程度で絶えるようなら、初めから臨んだりはしない。 「戦うだけじゃ駄目。参加する事に意義なんかない。勝たなきゃ、駄目なのよッ!」 絶対に勝ちたいという想いが、今まで体得出来なかった技をその身に刻む。頭で理解していても、体がついてこなかった技術。 茜モドキが剣を構え直す、その間に茜は間合いを詰めた。茜モドキは相手が近付いているという事実に気付かない。相手に悟られず近付く歩行術『縮地』。 「らあああああああ!!」 雄々しい叫びと共に、雷鳴を宿した剣が振り下ろされた――。 数百もの魔法矢が互いにぶつかりあい、虹色に光り輝く。 「攻撃が同じじゃどーしようもないわね。」 神楽は明らかに押されているにもかかわらず、あくまで諦めないでいた。自分のために。茜や行人、由佳のために。そして、聡のために。 「魔法を同時に複数唱えるくらいでないと話になんないわね?」 自分の言葉で、神楽は閃いた。 「……出来るじゃないの。」 神楽はアーティファクトに書かれた文字列を指先でなぞった。そのまま、無詠唱魔法に集中する。 相手が放つ魔法は全て無詠唱の魔法矢をぶつけ、或いは相殺し、或いは誘爆する。その間に勝手に口が唱えた呪を解き放つ! 「思い付き戦法! 勝手に唱えた呪文攻撃!」 神楽のアーティファクトは、指先でなぞると勝手に呪文を唱えてしまう。 本来、無詠唱魔法も詠唱魔法も同格の集中力が必要だ。それ故に、常にどちらか一方しか使えない場合が多い。だが、神楽のアーティファクトを使えば詠唱魔法を唱えながら無詠唱魔法を放てるのだ。 今まで神楽自身が自覚していなかった戦法だけに、神楽モドキはこの戦法を使えない。コピーした時の能力をそのまま使用するだけの魔砲生物であるが故に、成長は出来ない。 神楽の唱えた魔法を正面から受け、神楽モドキは消滅した――。 |