格納庫には、フライトユニットと強化ユニットを装着したモルスが、動き出す時を待つように立ち尽くしていた。翼と鎧を身にした巨大兵器は、戦う準備を万端に整えていた。 フレーゼはその姿を見上げ、感慨深げに呟く。 「――お待たせ、モルス」 何も語らぬ巨人は、けれど、少しだけ嬉しそうに見えた。 ずいぶんと、遠回りをした。迷って、迷って、ようやく得た答え。 誰かに任せても結末は迎えられない。自分がやらないのであれば、自分の世界は変えられない。 兵器は、主がその時を迎えるまで、ずっと待っていたようにも思える。何も考えず、何も思わないはずの兵器が、誰かを待っているわけはない。けれど、そう見える何かが、そこにあった。 思えば、その答えは最初から知っていたのかもしれない。説得しようとしていたのも、消極的かもしれない、だが、努力だった。望む結末を手にするための、小さな努力だった。 結局、それでは変えられなかった。言葉だけでは変えられない。なら、力で示すしかない。彼が進む道を。退かない逃げないという、強い意志を。 フレーゼはモルスに乗り込み、ヘルメットに頭を押し込んだ。 「ハッチ閉鎖」 慣れた手つきでハッチを閉じると、刹那、暗闇に包まれる。それも、青い人工的な光に切り裂かれた。 「出撃準備完了。モルス、カトレアに通信連絡」 『了解、ホームに通信連絡』 一瞬の間、そして、サブモニターにカトレアが映った。 「カトレア、四番カタパルト射出準備。一気に最大速度まで加速して欲しい」 『いけませんわ、ディオート4。今回の作戦はあなた抜きと、ディオート1に命じられていますわ』 「頼む。みんなを、死なせたくないんだ」 カトレアは、悲壮なフレーゼの表情に何を思ったろうか。 小さく首を振り、カトレアは言った。 『……、了解。四番カタパルト射出準備完了。フライトモルス、発艦を許可します』 「了解。ありがとう」 モルスの体が、微細に振動した。正面のメインモニターには、縦に動く景色が映っている。 それが止まると、眼前には真っ直ぐに続く道が、そして、少しだけ遠くには光が見えた。 その光は、まるで彼の先に待つ何かを示すように思えた。 後は、その光に向かって、全力で手を伸ばすだけ。 「モルス。マインドアクションシステム、起動。目標はガーディアム。僕らの全力で、叩き潰すよ!」 『了解、MAS起動。ターゲットロック、認識名称・ガーディアム。作戦内容、敵機動兵器の無力化』 フレーゼは小さく笑った。まだ笑えた。 迷いは、もうない。 「ディオート4! フレーゼ・ハイブリーダ! フライトモルスで射出発艦します!」 勢いよく、躊躇など忘れ、フレーゼは思いきってペダルを踏み込んだ。 連動して、物凄い重力がフレーゼの全身に襲いかかる。けれど、今のフレーゼには、それさえも心地よかった。 戦うために必要なものを、フレーゼは手に入れた。もう彼に迷う理由はない。 今。青き戦士は、戦いの場に赴く。 |