その周囲は、四機の人型兵器に囲まれていた。と、中心でひざまずく、白い鎧のような人型兵器のハッチが開く。 中から現われたのは、胸当てとヘッドガードに身を包んだ女性だった。女性は憎悪すら混じった瞳で、自分の前に居並ぶ男たちに言った。 「殺せ。ペリキュラムを殺せなかった私に道などない」 対する男たちは顔を見合わせ、苦笑すら浮かべて答えた。 「オレはパス。テメエの都合なんざ知るか、死にたきゃ勝手に死ね。ま、そん時は勝手に邪魔させてもらうけどな」 「あなたを殺す理由は、わたしたちにはありません。仮にあなたが死を望むなら、それは正式なルートによる依頼としてお願いします。もっとも、依頼を受けるとは限りませんが」 「私たちは殺させないために戦ったんだ。それでお前を殺したら、そもそもの意味がないだろうが」 ディルが、ラナスが、イリスが、それぞれに独自の理論を言い放つ。経路は異なれど、結論は同じだった。 そして。並ぶ四人の中から、気弱そうな少年が前に出た。 「ユールフォビアさん。生きて下さい。あなたは、まだ生きているんだから」 「だからどうした。戦艦を失った我々に、この星で生きていけとでも言うつもりか? こんな、死に行く星で」 「でも、まだ死んじゃいない。死んでいなければ、不可能じゃないんです。可能性がある。なら、それがどれだけ低かろうと、賭けてみるべきだと思いませんか?」 「思わないな。ペリキュラムは存在そのものが悪。足掻いたところで無駄だ」 「その点なんですが」 言い合うふたりを止めるように、ラナスは口を挟んだ。 「少し調べたいことがあるのですが、ガーディアムの調査に協力して下さいませんか? もしかすると、ペリキュラムを犠牲にしない方法が見つかるかもしれません」 言われ、ユールフォビアは戸惑ったように視線を下げた。 「……、私はリチャーター軍の部隊長だぞ?」 「はい、そうですね。それが何か」 ユールフォビアの目が救いを求めるように泳ぎ、フレーゼを見て、止まった。 だから、フレーゼも頷いた。 「ほら。希望は、まだ死んでない」 それは、ユールフォビアが待ち望んで、ついに得られなかった言葉だった。 彼女とて、戦いたくはなかった。誰かを殺して笑えるわけがないと、そんなことは言われなくてもわかっていた。 だが、駄目だった。どれほど待っても。どれほど期待しても。世界は、彼女に光を与えてくれなかった。 それが、彼女を戦いへと導いた。 そして、負けた。全力で戦い、剣を振るい、敵を否定しようとした。それすらも、フレーゼとイリスの想いには敵わなかった。 その瞬間に、全てを、生きることさえも諦めたと言うのに。何もかもを捨てて、何もかもを失ったはずなのに。 なのに、どうして目の前には、まだ希望があるのだろうか。 どうして、光り輝いているのだろうか。 「――できる、のか?」 「確証はありません。だからこそ、試すんです」 ラナスを見つめていたユールフォビアは、突如、笑い出した。 高らかな、快活な笑い声が朝の砂漠に響いた。 「お前たちは、強いな」 「何を今さらってとこだな、オイ」 「いや。そういう意味じゃない」 軽口を叩くディルに、ユールフォビアは手を振ってみせた。 「私は可能性を信じようともしなかった。その心が精神波抽出システムに影響したんだな。なんだ、同じものを使って、私に勝ち目なんかあるわけがない」 心を力に換える機械。兵器としては二流で、使い勝手の悪い兵器。 けれどそれは、他のどの兵器よりも、強く想いを届ける力になる。強い想いを、強く届けてくれる。 ユールフォビアには、想いが足りなかった。可能性が欲しいと言って、けれど諦めて。信じることをしなかった彼女には、MASは使いこなせなかった。 彼女の前に立つ少年たち。彼らは、それを使いこなした。仲間を、味方を、信じることによって。 信じられないほど純粋な、しかし本物の強い輝きが、奇跡を起こした。 その、奇跡。誰だって、信じてみたくなる。なんでもできると思えてくる。できないと、不可能だと諦めきった壁なんか、容易にぶち壊してくれると、そう思えてくる。 笑いを納めたユールフォビアは、軽く頭を下げた。 「頼む。殺さずに活かす道を、見出だしてくれ」 「任務、了解だ」 言い、イリスは一同を見渡した。 「総員! MASの穴を探すぞ!」 『了解!』 砂漠に、希望に満ちた声が響いた。 |