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☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ どこかを泳いでいた。 そこがどこなのかーーよくわからない。暗く、どこまでも深い、海のような場所。 光が届かないのだろうか。自分の手さえ見えない世界を泳いでいく。 その中に、何かが見えた。 青い星だ。どこまでも真っ青な星。 その星は、活力が失われているようだった。からっぽの器のような、本来ならば入っていた何かが欠けているような。 そうだ、そこには何かがあったのだ。美味しい料理か、わくわくするデザートか、喉を潤すドリンクか。それは分からないけれど、何かがあったのだ。 それを、食べ尽くされたのだ。だから、からっぽ。 何もなければ、満たされない。だから、何かで満たさなければいけない。 そうしなければ、人は生きていけない。 だが、そこには何もない。ならば。だから。 ーー奪うしかないんだ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 紅は目を開く。 そこは、壊れた工廠だった。気を失っていたのはほんの数秒程度だったろう。ぱらぱらと降る埃や、ぎしぎしと鳴る設備がそれを物語っている。 目を開けた紅の周囲に、すぐさまハナダたちが降りてくる。 「大丈夫か、コウ!?」 「生きてる!?」 「……うん。大丈夫」 答えた紅は、自分の下で気絶している異星人を見つめる。 砕けたバイザーの下に覗くのは、自分たちとたいして変わらないように見える、人間の顔。 「あなたたちは、餓えているんだね」 だから奪う。奪うしか方法がない。 彼らが欲しているものが、紅には見えていた。顔をあげる。 ラーゼリアたちが破壊した工廠。その地下。 そこは、当然ながらただの地面があるだけだ。だが、紅の目には、それが映っていた。 現在の人間が開発した技術では、観測さえできないエネルギー。星の中心で生まれ、星の中からわき出す存在。 それが、日本にあった。だから、日本人には、適合者が多かった。 いまだ名前もないそれを、彼らは欲している。彼らは、このエネルギーを使って、コアユニットを稼動させているのだ。 「でも。エネルギーだけじゃ意味がない」 エネルギーは、適切に運用できる何かが必要になる。 電力だけで車は動かない。駆動させるエンジンがあり、タイヤがあり、それで初めて車は走る。 同じことだ。このエネルギーを咀嚼し、活力に換えられる存在が必要だ。 きっとそれは、人間の意思。 だから、エネルギーを搭載しただけの無人機は、たいして強くない。動きはするが、意思がないからエネルギーを効率的に使えない。 ストライカーユニットは、人間が着て、初めてその力を発揮できるんだ。 「コウ?」 ぼーっとしている紅が心配になり、ハナダは首をかしげる。 紅はそっと目元をぬぐい、 「大丈夫」 そう答え、力に手を伸ばす。 コアユニットはエネルギーを変換する装置だ。だが、本当ならば、そんなものは必要ない。 人間には意思がある。エネルギーをかき集め、活用するには、意思さえあればそれでいい。 強い意思があれば、当たるものは当たるし、ぶち抜くものはぶち抜ける。 それは、当然のこと。 「終わりにするんだ、ハナダ。地球、救っちゃうんだから」 そう言って、紅はにこりと笑った。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 《やったか……》 総長は戦艦のエネルギーゲージを見つめる。 今まで減りつづける一方だったそれは、急激に増加していた。ラーゼリアたちが採掘に成功したことで、大気中のエネルギー濃度が増しているのだ。 《ようやく起動できるな。私も出る。これで決めるぞ。艦の指揮はお前がとれ》 《了解しました》 副官が頷くのを確認し、総長は席を立った。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 戦艦の後部が開き、それが姿を現す。 全高は9メートルほど。形状は人型だが、顔に当たる部分は十字の切れ込みがあるのみだ。 全身は無人機と同じような機械の体つきで、右手にはマシンガンのような武器を、左手にはコンバットナイフのような形状の武器を持っている。 とはいえ、ASUから比べれば規格外の大きさを持つ敵だけに、持っている武器の大きさも規格外だ。銃弾ひとつで、きっと人間はミンチになるだろう。 「っ……て、撤退!!」 それまで持ちこたえていた組織のメンバーも、その機体を目にした瞬間、撤退行動に入った。 無理をしようとか、粘ろうなどという意識を根こそぎ持っていくような、見た瞬間に敵わないと思わせるバケモノ。 巨大なユニットは、他のユニットと同じように空を飛ぶと、銃をこちらに向ける。 「ッ!!」 轟音。それはただの発砲だったが、巨体が誇る爆音は、それだけで体がビリビリと震える。 射撃で、山肌の一部が消し飛んだ。その光景に、組織の少女はひやりとする。 あれが人間に当たったらーー。 「逃げ……」 言葉は最後まで聞こえなかった。 再びの発砲。必死で回避機動を取るが、完全にはかわせない。 「っぅ!?」 風圧で体が持ってかれる。バランスを崩し、そのままきりもみ落下した。森の中に落とされながらも、空を見上げる。 ゆうゆうと舞う巨体。敵うはずがないーー。 機体が動こうと、体を縮める。それはさながら、獲物を狙う前の肉食獣。 「あっ……」 直後。ガアンと鐘が響いた。 遠くから現れた、流星のような何か。それが、巨体を蹴り飛ばしたのだ。 「あ、あれ……。紅?」 そう。それはブルーメタリックの機体を輝かせる、人型ユニットだった。 |