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《なんだと……?》
 決戦用の大型兵器”ガルドゼリア”。
 通常ユニットの5倍もの大きさを誇り、それに比したパワーを備える。強大な斥力装置により、飛翔速度も同様に早い。
 それだけ強大なユニットであるがゆえに、エネルギーの消費も並ではない。そのため、供給が限られる状況では運用できなかった。
 エネルギー量がある程度、復活したからこその起動。裏を返せば、ガルドゼリアが動き出した時点で、負けるはずはなかった。
 なのに。
《なんだ、この機体は……!!》
 他の機体と変わらないように見える、ブルーメタリックの汎用機体。だのに、なんというパワーか。
《こんなことがありうるのか……?》
 ガルドゼリアの操縦席で、画面に映る衝撃の数値を見つめる。
 そんなことはありえない。ありえるはずがない。
《機械が、こんな力を発揮することなど……。ありえるものかッ!!》
 総長は、現実を認められぬまま、操縦桿を握る。

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 体に活力が満ちている。
 全身がほのかに輝いているようだ。
「熱い」
 紅は、ぽつりとつぶやく。
「でも、全然足りない!!」
 右手に握る【ストライクブレイカー】。左手に握る自動小銃。
 それらを強く握りしめ、紅は巨大な兵器をにらむ。
 東京から兵庫まで、たったの20分で飛びきった後だというに、紅は疲れすら感じていない。
 感じることもない。空気を吸うのに疲れる人などいないように、当たり前、、、、のことを成すだけなら、疲れるはずもない。
「コウ、早すぎ」
「気持ちが違うな」
 遅れて、ミドリとハナダが追いつく。
 紅はそんな二人を背に、
「あいつは、あたし一人で大丈夫」
「邪魔なやつらは私たちが落としておく」
 ぱらぱらと出てくる無人ユニットをにらみながら、ハナダが言う。
 紅は小さく頷き、
「ふっ」
 息を吐きながら滑るように空を飛ぶ。
 ”ガルドゼリア”は銃口を向けて来るが、今の紅にとって、そんなものが当たるはずはない。
 設計限界を超えた圧倒的高速で飛翔し、ガルドゼリアに肉薄する。
 その刹那にストライクブレイカーと小銃をマウント。両手を開ける。
《このお!!》
 敵機はナイフを振りかぶるが、それより早く紅は飛びつき、その腕をつかむ。
「りゃあああああああああああああ!!」
 強引にぶんまわす。
 ありえない慣性に機体がひしぎ、メシメシとうなる。
「せえのッ!!」
 力任せの一本背負い。
 斥力装置同士が反発し、捻り、とうとうガルドゼリアの片腕がもげる。
 へし折った左腕を捨てると、腕が握っていた巨大なコンバットナイフが滑り落ちた。
 紅は急降下してナイフを奪うと反転、再びガルドゼリアに襲いかかる。
「銃やストライクブレイカーじゃ、この大きさは壊せない……」
 巨体を誇るガルドゼリア。小銃では豆鉄砲でしかない。
 だが! このナイフならば!
「ちぎれろッ!!」
 胴体にナイフが刺さる。そのままフルスイングすると、胴体が切り裂かれた。
 ギシリと鳴る機械の体。自ら切り開いたその隙間に、
「ふっ」
 ナイフを突っ込み、全力で降下する。
「せええええええええええええ!!」
 半身を卸すような斬撃。
 耐え切れず、ガルドゼリアの体がかしぐ。
「逃げないと危ないよ!!」
 紅はナイフをほうり投げると、ガルドゼリアの足をつかんだ。
「消し飛べッ!!」
《!!》
 ガルドゼリアの胸元が開き、脱出ポッドが飛び出す。紅はそのまま巨大兵器を、さながら警棒のようにぶんまわす。
 その巨体は、敵戦艦に激突する。だが、紅はまだ止まらない。
 巨大戦艦。クイーンエリザベスが目の前にいるような、動く建物がいるような感覚。
「でも」
 大きさなんて、関係はない。
 意思には形がない。大きさもない。
 ただ、強いか弱いか。それだけだ。
「……ここは、あなたたちのものじゃない」
 餓えていることは理解できる。
 だが、奪えばいいというものではない。
 誰かが何かを奪えば、誰かが悲しむ。そんなのは、もう嫌だから。
「そんなこと、もうさせない!!!」
 無理やり機体を振り抜くと、巨大な人形はバラバラに砕けた。同時、戦艦の底に穴が開く。
 だが、それだけだ。破壊はできない。
「くっ……!」
「さすがに船はきついか」
 遅れて、ハナダがやって来る。そのまま、手に握る剣をそっと差し出した。
「たぶん、乗員全員の意思エネルギーを変換しているんだろう。だから無駄に固い」
「なるほど。じゃ、あたしたち二人ならどう?」
「それなら無敵だ」
 二人で剣を握り、
「せえのぉ!!!」
 全力でぶっ叩く。
「飛んでけぇぇぇぇぇぇ!!!」
 そのまま、全力で振り抜いた。
 ミシミシと悲鳴をあげた戦艦はそのまま加速し、飛ばされていく。
 ありえない挙動に、船は慣性をキャンセルできず、全体の装甲がたわむ。装甲に隙間が生まれ、船全体を覆っていた意思エネルギーに綻びが生まれる。
「あ」
 音は響かない。
 けれど、紅の耳にはーー割れた意思に船が飲み込まれる音が聞こえるような気がしていた。