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☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 《なんだと……?》 決戦用の大型兵器”ガルドゼリア”。 通常ユニットの5倍もの大きさを誇り、それに比したパワーを備える。強大な斥力装置により、飛翔速度も同様に早い。 それだけ強大なユニットであるがゆえに、エネルギーの消費も並ではない。そのため、供給が限られる状況では運用できなかった。 エネルギー量がある程度、復活したからこその起動。裏を返せば、ガルドゼリアが動き出した時点で、負けるはずはなかった。 なのに。 《なんだ、この機体は……!!》 他の機体と変わらないように見える、ブルーメタリックの汎用機体。だのに、なんというパワーか。 《こんなことがありうるのか……?》 ガルドゼリアの操縦席で、画面に映る衝撃の数値を見つめる。 そんなことはありえない。ありえるはずがない。 《機械が、こんな力を発揮することなど……。ありえるものかッ!!》 総長は、現実を認められぬまま、操縦桿を握る。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 体に活力が満ちている。 全身がほのかに輝いているようだ。 「熱い」 紅は、ぽつりとつぶやく。 「でも、全然足りない!!」 右手に握る【ストライクブレイカー】。左手に握る自動小銃。 それらを強く握りしめ、紅は巨大な兵器をにらむ。 東京から兵庫まで、たったの20分で飛びきった後だというに、紅は疲れすら感じていない。 感じることもない。空気を吸うのに疲れる人などいないように、当たり前のことを成すだけなら、疲れるはずもない。 「コウ、早すぎ」 「気持ちが違うな」 遅れて、ミドリとハナダが追いつく。 紅はそんな二人を背に、 「あいつは、あたし一人で大丈夫」 「邪魔なやつらは私たちが落としておく」 ぱらぱらと出てくる無人ユニットをにらみながら、ハナダが言う。 紅は小さく頷き、 「ふっ」 息を吐きながら滑るように空を飛ぶ。 ”ガルドゼリア”は銃口を向けて来るが、今の紅にとって、そんなものが当たるはずはない。 設計限界を超えた圧倒的高速で飛翔し、ガルドゼリアに肉薄する。 その刹那にストライクブレイカーと小銃をマウント。両手を開ける。 《このお!!》 敵機はナイフを振りかぶるが、それより早く紅は飛びつき、その腕をつかむ。 「りゃあああああああああああああ!!」 強引にぶんまわす。 ありえない慣性に機体がひしぎ、メシメシとうなる。 「せえのッ!!」 力任せの一本背負い。 斥力装置同士が反発し、捻り、とうとうガルドゼリアの片腕がもげる。 へし折った左腕を捨てると、腕が握っていた巨大なコンバットナイフが滑り落ちた。 紅は急降下してナイフを奪うと反転、再びガルドゼリアに襲いかかる。 「銃やストライクブレイカーじゃ、この大きさは壊せない……」 巨体を誇るガルドゼリア。小銃では豆鉄砲でしかない。 だが! このナイフならば! 「ちぎれろッ!!」 胴体にナイフが刺さる。そのままフルスイングすると、胴体が切り裂かれた。 ギシリと鳴る機械の体。自ら切り開いたその隙間に、 「ふっ」 ナイフを突っ込み、全力で降下する。 「せええええええええええええ!!」 半身を卸すような斬撃。 耐え切れず、ガルドゼリアの体がかしぐ。 「逃げないと危ないよ!!」 紅はナイフをほうり投げると、ガルドゼリアの足をつかんだ。 「消し飛べッ!!」 《!!》 ガルドゼリアの胸元が開き、脱出ポッドが飛び出す。紅はそのまま巨大兵器を、さながら警棒のようにぶんまわす。 その巨体は、敵戦艦に激突する。だが、紅はまだ止まらない。 巨大戦艦。クイーンエリザベスが目の前にいるような、動く建物がいるような感覚。 「でも」 大きさなんて、関係はない。 意思には形がない。大きさもない。 ただ、強いか弱いか。それだけだ。 「……ここは、あなたたちのものじゃない」 餓えていることは理解できる。 だが、奪えばいいというものではない。 誰かが何かを奪えば、誰かが悲しむ。そんなのは、もう嫌だから。 「そんなこと、もうさせない!!!」 無理やり機体を振り抜くと、巨大な人形はバラバラに砕けた。同時、戦艦の底に穴が開く。 だが、それだけだ。破壊はできない。 「くっ……!」 「さすがに船はきついか」 遅れて、ハナダがやって来る。そのまま、手に握る剣をそっと差し出した。 「たぶん、乗員全員の意思エネルギーを変換しているんだろう。だから無駄に固い」 「なるほど。じゃ、あたしたち二人ならどう?」 「それなら無敵だ」 二人で剣を握り、 「せえのぉ!!!」 全力でぶっ叩く。 「飛んでけぇぇぇぇぇぇ!!!」 そのまま、全力で振り抜いた。 ミシミシと悲鳴をあげた戦艦はそのまま加速し、飛ばされていく。 ありえない挙動に、船は慣性をキャンセルできず、全体の装甲がたわむ。装甲に隙間が生まれ、船全体を覆っていた意思エネルギーに綻びが生まれる。 「あ」 音は響かない。 けれど、紅の耳にはーー割れた意思に船が飲み込まれる音が聞こえるような気がしていた。 |