決勝戦当日。
『聞こえるでしょうか、この大歓声!! 今日!! この場所で!! 全国一位が決定します!!』
 わあああ! と割れんばかりの歓声が響く。
『世界最強! 敗北などどこ吹く風、まさに頂点となるべくして生まれた男! ユーバ・ガリアァァァァス!!』
 闘技場の中に、一人の男が足を踏み入れた。
 たちのぼる魔力を収めもせず、ただ対戦相手が入る入場口だけをにらみ続けている。
『パートナーは無敵の美少女! オリーヴ・キュリィィィ!!』
 かたわらに立つハイエルフの少女は、今日も学生服のままだった。オリーヴはユーバを見上げ、
「どう? 楽しい?」
「ああ。ようやく、ちっとは楽しめそうだ」
「殺しては駄目よ」
「あいつが死ななきゃいいんだよ」
「……」
 まあ死にそうになったら回復すればいいか、というのがオリーヴの発想。
 殺してしまっては試合にならないが、死ぬ直前で治癒すれば間に合う。オリーヴにはそれだけの実力もある。
『対するは、なんと一年生!! 奇跡のスピードで数々の強敵を打ち破ってきた天才少年!! アルフォンス・スタァァァァ!!』
 反対サイドの入り口から入ってきた少年は、いつもの刀を手に、真剣な表情で勇者をにらんでいる。
 その顔を見たユーバは、嬉しそうに邪悪な笑みを浮かべた。
『パートナーは質実剛健! セリル・ブラッキィィィ!!』
 マシンガンを抱えて入ってきた少女に、アルスは何かを耳打ちした。歓声のせいで、何を言ったのかは分からない。
『なるかジャイアントキリング!? それとも勇者の力を見せつけるか!? 事前投票ではユーバ選手勝利が倍率1.1倍というとんでもない格差! ところが何が起きるか分からない、それがデュアル大会です!!』
 両者がフィールド中央で向かい合う。アルスはユーバを見上げ、
「ユーバ。タイマンでやろう」
「あ?」
「お前もオリーヴと一緒に戦うなんてタマじゃないだろ? おれもセリルには手を出させない。二人だけでやろうぜ」
「はっ! いい度胸だクソガキ。そうこなくっちゃな!!」
 フィールドの中央でユーバとアルスが向かい合い、オリーヴとセリルはフィールドの端で邪魔にならないよう隠れる。
『おおっと!? これは!! なんと!! 勇者相手に、アルフォンス選手、まさかのタイマンだぁぁ!! 何を考えているのか!? まったく読めません!!』
「ちげえだろ、解説」
 セリル・ブラッキーの戦闘力では、アルスのサポートには届かない。
 最初から全力で、敵と戦うつもりなのだ。この少年は。
「行くぜ!! クソガキ!!」
「来いよ、化物!!」
 そして。試合開始の笛が鳴った。

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 大歓声の響く観客席。
 そこに、顧問のメイドが座っていた。
「……ユーバ・ガリアスの反射神経は異常です」
 ぽつりと呟く。
「伝説の勇者。けれど、アルフォンスはその攻略法を見つけるかもしれない……」
 確かに賢者の魔法は、才能の証ではない。むしろ才能なき者・・・・・の術式だ。
 だが、何の力もない者では、そもそもあの生体兵器とは組み合うこともできない。
 セト・シアンの弟子にして、賢者の魔法を身につけた少年。
「楽しみにしていますよ、アルフォンス」

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 開始と同時。両者は敵を殲滅せんと突っ込む。
「オラァ!!」
 ユーバの放つ神速の手刀。それをアルスは刀で受ける。

 バチン!!

 素手と刀が衝突したとは思えない、爆音にも似た衝撃が飛び散る。
「はっはァ!! ちっとは反射神経鍛えたようだな!!」
「舐めんな化物!!」
 ユーバの放つチョップは、それそのものが名剣の一撃に等しい。それをアルスは刀だけでなんとか受ける。
「ガードだけで俺様に勝てると思ってんのかぁ!? ええ!?」
「思っちゃいないよ!! お前が攻撃に移らせてくれないんだろうが!!」
「そうかい、そんじゃあ」
 その瞬間、連撃を放っていたユーバが止まった。
 とん、と大きく後ろに跳び、距離を開く。
「来いよ。お前の編み出したとかいう一撃、見てやる」
「……上からモノ言ってんじゃねえ!!」
 切っ先を下げ、正面から。
 突進したアルスは、ユーバに激突する瞬間、大きく右にステップする。
「三の太刀!!」
 普通の選手なら追い付けないような、超速フェイント。攻撃をすかされて当然のタイミング。
 だが、そのタイミングであっても、雷速の反射神経を持つユーバ相手では遅すぎる。
「なんだ。そんな程度か?」
 三属性の魔力を込めた太刀の一撃。それをユーバは素手で受け止める。
 刀が、手を切ることさえできない。
「いッ!?」
「期待外れだな」
 魔力で覆われた手。刀身を握り、あろうことかアルスを引っ張りあげる。
「うッ!?」
「結局テメエも雑魚か!!」

 バン!!

 地面に思いきり叩きつける。破裂にも近い音が響き、フィールドの地面が軽くひび割れた。
「ぐッ……!!」
 馬車と正面衝突したってこれほどの衝撃にはならない。それを堪えられたのは、ひとえにアルスの魔法発動速度が早かっただけ。
 普通の人間なら、潰れた果実になっていた。
「頑丈だなオイ!! それならまだまだ楽しめるかぁ!?」
 文字通り桁が違う。それが、ユーバ・ガリアスという男だ。