建物の上では、ユーバをはじめとするデュアリストたちが待ち構えていた。
 高さは10メートほど。ちょうど、あの怪物と近しい高さだ。
「いいか。ハルト・キッスがあいつを足止めする。その一瞬に全員で魔法をぶち込む。んで、その瞬間にクソガキが化物に接近戦をかまして終わりだ」
「多層の防護魔方陣を一度に壊さないといけないのよ」
「普通なら無理だろうな。けど、人形遣い、お前のスキルがあれば、全員の攻撃を一人の意思として・・・・・・・・ぴったり合わせられんだろ」
「まあね」
 人形遣いの操作スキルは特別だ。
 操作する相手の意思など関係なく、タイミングを綺麗に合わせることができる。全員で呼吸を合わせる必要さえなく、一点に全力をぶちかますことができる。
 ユーバ、オリーヴ、リン・シャン。魔法使いとしても優秀すぎる三人の大魔法を、完璧に合わせて打ち込むのだ。
 それなら軍用ガトリングに匹敵する破壊力が生み出せるはず。
「レム、頼む」
「お任せください」
 ただ、あの防護魔方陣は耐魔障壁だけでなく、耐物障壁も混じっている。耐物障壁は殴らないと壊せない。
 突入することに全力を尽くす必要があるアルスに、物理障壁を破壊する余裕はない。そこでレムだ。
 もともとレムは竜亜人。多少の魔法攻撃は頑丈な皮膚のおかげで耐えられる。
 全員が大魔法をぶち込む一瞬に合わせて突撃し、アルスが突破するだけの道を蹴り抜く。言うなれば火山の中でダンスを踊るようなものだが、レムならば耐えられる。
 あとは、ハルト・キッス次第だ。
「あいつが1セクでもいいから足止めできねえと、ぴったり合わせることなんざ無理だ」
「ハルトはやってくれますわ」
 その点、パートナーであるリン・シャンは彼女に全幅の信頼を置いていた。
「ハルトはいつだって守ってくれますのよ」
「へえへえ。お嬢様のノロケなんざ聞いてらんねえよ」
 1セク。ほんの一瞬だ。
 誰かが息を合わせられなくても失敗する。
「クソガキ。最後の一瞬はお前の出番だ、あいつをなんとしてでも叩き起こせ。それができんのは、ずっとパートナーやったお前だけだ」
「ああ」
 アルスもまた、キラーマシンを見据える。
 その中央、胸元で眠るパートナーを。
「助け出す」
 願いを口にする。
 それが、勝利条件。
「行くぜッ!! 腹ぁくくれよ!!!」
 勇者の鼓舞が、全員の魔力を高めていく。

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 ハルトは一人、大通りに展開していた。
 彼女にとって、前衛で一人なのはいつものことだ。後ろを信じているからこそ、今は前しか見ない。
「タンク冥利に尽きる、ってね」
 ここで耐えきること。それこそが彼女の役目。
 大きく息を吸い、吐き出す。
「【地平の巨人ジオギガント】!!!」
 展開した魔法が全身を覆った。
 巨大なゴーレムとなったハルトは、すぐにキラーマシンから目をつけられる。
「来なよ化物!! ガチンコ勝負といこうじゃないか!!」
 男にも負けないという信念を持つハルトにとって、力勝負は望むところ。
 突撃してくるキラーマシン。圧倒的なスピードは逃げられない。
 逃げるつもりも、必要もない!!

「らっしゃあああああああああああああああああああ!!!」

 ドガン、とキラーマシンがぶつかってくる。踏ん張り、全力で受け止める。
 足元の石畳が砕け、ゴーレムの体が悲鳴をあげる。
 それでも!!
「やらせる、もんかああああああああああああああああ!!」
 何がなんでも崩されはしない。それがタンクの誇り。
 ハルト・キッスは、キラーマシンの足を止めてみせた。

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 ハルトとキラーマシンが激突する、その少し前。
 ルーシェの十本指からそれぞれに魔力糸が伸びている。今回の操作は”魔力供給”と”起動タイミングの操作”のみ。
 使用する魔法はそれぞれに任せている。あとは各自が全力で撃ち込めばいい。
「構えろおおおおおおおおおおおおおお!!」
 すでに全員が大魔法の詠唱を終えている。集めた魔力は暴れ、今にも手綱を離しそうでーーそれでも絶対に手放さない。
 激突。その一瞬に、全てを込めて!

「撃てぇえええええええええええええええええ!!」

 ルーシェは魔力糸を操作し、全員に魔法を発動させる。
「【雷帝の突進サンダーチャージ】!!」
「【炎王の豪腕カタストロフィ】!!」
「【純白の閃光シャイニーレイン】!!」
 三人の魔法が同時に放たれ、寸分の違いもなく障壁に激突する一瞬。
 その一瞬に、魔法の嵐を切り裂いてレム・ラパルは突撃する。
「【無垢なる突槍ディバインスピア】!!!」
 魔力障壁が破壊される刹那。全力を込めたキックが耐物障壁さえも蹴り抜き、粉砕する。
 ガシャンと、全ての防護魔方陣が破壊される音が聞こえた気がした。
 だが、破壊されている時間は1セクにも満たない。無尽蔵の魔力を持つキラーマシンは、すぐに魔方陣を復活させる。
 だから、アルスが飛び込む余地もコンマ数セクほどしかない。仲間が・・・壊してくれると信じ、躊躇していてはいけないほどの時間。
 その時間を、アルスは走り抜けた。風を操って空を踏みしめ、全力で。

「セリルッ!!!」

 キラーマシンのコアユニット。そこに、アルスは全力を込める。
「四の太刀!! 光輝燦然!!!」
 水晶とヒヒイロカネの剣が激突し、互いに悲鳴をあげる。
 仲間が作ってくれたこの時間。アルスは想いを、すべて一刀に込めて伝える。

『勝つまでやる。そうだろ、セリル』

 まだ勝っていない。全国一位になってないし、オリーヴにだって勝っていないし、キラーマシンを一人で止めることもできない。
 誰にも負けない、そこに至るまでーー。

「お前が必要なんだよ、セリルッ!!!」

 アルフォンスの呼び掛けがあったからなのか、あるいは衝撃による偶然か。
 ずっと眠っていたはずのセリルは、目を開いた。
 同時に、コアとなっていた水晶が破裂し、きらきらと輝いていた。