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「……早い」 超高速の連撃。 かろうじて目は追いつくが、一瞬の加速はあのヴァンすら上回るかもしれない。 線で追いかけ、なんとか相手の突撃する先に剣を置いても、ナイフで防がれてしまう。しかも相手は二刀流だ。片手のナイフを抑え込んだところで、もう片方のナイフが自分を狙ってくる。 「ほらほらほらほら!! どうしたどうしたァ!!」 とにかく早い。自分の剣では全く追いつかない。 ならば、どうすれば。 「もう死ぬ!? それとも頑張ってから死ぬ!? どの道、あんたに勝利の目なんてありゃしないッ!!」 吼えるエクレアは、そのままナイフの連撃でこちらの魔力をそぎ取っていく。 「くッ……!」 こうなると、障壁によるガードは裏目になる。致命傷にはならないが、相手が消耗するよりも早く、こちらの魔力が削られてしまう。 ガリガリと、やすりに乗せられているような気分。 「なら、ばッ!」 シルビナは下腹に力を込め、一気に跳躍した。 「逃がすかッ!」 追いかけてくるエクレア。その姿を視界に捉えつつ、シルビナは剣を握り直す。 跳びあがれば……、追いかけるには、下から来るしかない道理! 「せぇい!!」 剣を手に、全力回転。真下を狙った斬撃はエクレアのナイフと激突し、 「ばぁか」 直後、腕を大きくひねられていた。空中での格闘技。 「なっ」 驚く間もなく、 「おしまいだよ」 ナイフを逆手に握ったエクレアは、大きく振りかぶっていた。 そのまま上下が入れ替わり、落下する。地面に激突する寸前、振り下ろされるナイフ。 落下の衝撃すら利用した刺突は、シルビナのガードも障壁も貫き、その胸をえぐっていた。 「ふっふーん。あたしの勝ちー!」 現世に戻り、拳を振り上げて快哉をあげるエクレア。その前で、シルビナは何も言えない。 「じゃあヴァン、デートしよっ」 「……おい。なんでそうなんだよ」 心底から嫌そうに顔をゆがめるヴァンだが、エクレアはもちろんそんなことを気にしない。 「いいじゃんいいじゃん、決闘に勝ったゴホウビってことでー!」 「あ、おい!」 エクレアはヴァンの腕をつかむと、そのまま引きずって行ってしまう。もちろん反論など通じない。 「なんていうか……、嵐みてえな女だな」 あきれたゼルは肩をすくめる。 「だが、実際、彼女は強いよ。もし師匠がついて、奨励会に入ったら、きっともっと伸びる」 「あれよりか? 考えたくねえな……」 話す男子勢を尻目に、プリムはシルビナの腕をつかむ。 「ほら、シルビナ」 「……何?」 「あたしにあれだけ言ったシルビナが何もしないなんて、そんなのありえないでしょ?」 「私は、別に……」 「そういうのはいいの! ほら、行こ!」 プリムはシルビナを強引に立ち上がらせると、 「ほら、何してるの? アリスもよ!」 「なんで私まで!?」 「当然でしょ? こんなの放置するなんて女がすたる!」 「すたって結構……、ちょっとぉぉぉ!?」 シルビナとアリス、二人の少女を引きずり、意外とパワフルなプリムは駆け去っていく。 残されたゼルとライゼルは、 「……どうしよっか、先輩」 「心配ではあるけど、僕らができそうなこともないしね」 「じゃあ、決闘でもやる?」 「やろうか……」 気持ちが乗らないまま、アストラルサイドへと転移した。 奨励会館から少し離れたところに、大きな河川が流れている。 河原は広く、ジョギングしている人や、ペットの散歩がてら歩く人なども見かける。 そんな河原に連れてこられたヴァン・レクサスは、深く嘆息した。 「ったく、なんなんだよ、エクレア。いきなりやってきて」 「いきなりって何よ。いきなりはヴァンの方でしょ? 何も言わずに出て行っちゃって」 「おっさんには言ったよ」 「えー!? だってゴドウィン、知らないって言ってたよ?」 「知るかよ……。てか、そうか、ゴドウィンか。やっと思い出した」 「……ヴァン、またゴドウィンの名前、忘れたの?」 「う、うるせえな。覚えにくいんだよ」 「どこがよ」 ふふ、と笑ったエクレアは、ぎゅっとヴァンに抱きつく。 「でもま、いいんだ〜。ヴァンと会えたし! ねえ、これから一緒に、たくさん遊ぼうね」 「嫌だっての」 「またまたぁ。ヴァンは決闘、とっても好きでしょ」 「……」 「あたしがたくさん決闘してあげる。朝も晩も、いつでもいいよ。たくさんたくさん決闘しよう。いっぱい遊んでね。いっぱいだよ? ふふふ……」 薄く笑うエクレア。その視線の先にいるヴァンは、何の表情も浮かべていなかった。 一方。少し離れた草むら。 「ちょっとアリス、狭い」 「あなたが連れてきたんでしょう!?」 「しっ、見つかるよ」 「ぐぬぬ……。てか、てかてか! なんでミーナさんまでいるの!?」 「え? だ、ダメでした?」 「ダメじゃないけど〜。意外っていうか」 「だって! あのヴァン君に婚約者よ!? こんな面白……、もとい、重要な案件、放置できるわけないじゃない!」 「そうよね、やっぱりそう思うよね!!」 「二人ともうるさいですわ!」 「ごめんなさい」 「ごめんね」 がさがさと草を揺らす少女たち。その中で一人、沈黙を貫いているのは――シルビナだった。 「あの、シルビナ? 大丈夫?」 「大丈夫よ。私はとても冷静」 「その割に手、真っ白になってるけど大丈夫?」 握りしめた拳を指して言うが、シルビナは首を横に振る。 「もちろん大丈夫よ。私は大丈夫」 「さっきから大丈夫しか言ってないけど?」 「大丈夫よ」 「……危ない」 「あ、見て、ヴァンが……」 エクレアの方を見たヴァンに、一同ヒートアップ。一部寒冷化。 「……!!」 四人がどきどきしながら見守る中で、ヴァン・レクサスの声が届く。 |